2018/8/20

正式に認められて「陰謀」や「疑惑」は初めて真実になる・・・「真実は一つ」では無い世界  時事/金融危機
 

■ 「真実とは何か」 ■

「真実は一つである」   ・・・これは正しい。
「真実は人の数だけある」 ・・・これも正しい。

ある「物」が存在したとする。物理的には色も形も一つである。要は「真実は一つ」。しかし、この物の全容が隠されて、部分的にしか見えない状態で、何人かの人が覗き穴から一部を観たとしよう。

ある人は「赤い球体」だと言い、ある人は「黒い立方体」だと言い、ある人は「白い平面」だと言った。実は物体は様々な曲面と色を持った複雑な形をした巨大な物体だった。

この物体を部分的に見た人は、全体像を想像して「赤い球体」だとか「黒い立方体」だとか「白い平面」と言っているに過ぎませんが、それぞれが、それぞれの人には「真実」と思えています。

しかし、このままではこの物体の形や色は確定しませんから、全体のコンセンサスとして色と形が決められます。政府が「これは赤い球体である」と発表して、マスコミもこれに異論を唱えなかった場合、複雑な形と色をしたある物体は「赤い球体」と正式に決定されます。国民の多くは、をれを「赤い球体」だと認識して疑問を持ちません。

■ 真実の作り方 ■

私が大学1年生の時の夏、バイトから帰ってきたらTVで重大な事故の報道をしていました。初動報道では様々な情報が錯そうし、「赤い球体」や「黒い立方体」や「白い平面」の断片的な情報が各報道機関から発せられましたが、翌朝に「赤い球体」が発見されます。

それ以降は「赤い球体」を裏付ける情報が積み重ねられ、いつしか人々はそれは「赤い球体」だと思い疑いを持たなくなります。いえ、最初から「赤い球体」以外を考える人はほとんど居ませんでした。

しかし、初期の断片情報の「黒い立方体」や「白い平面」が気になった人がごく少数居ます。或いは、立場上それが「赤い立体」で無い事を知っている人も少なからず居ました。後者の多くは立場上、それを公に口にする事は有りませんでしたが、会話の中でそれを匂わせて人も居るでしょう。「これだけは真相は話せないんだよ」という言い方で心の苦悩を誤魔化す人も居たでしょう。

そうして、いつしかネットでは「赤い球体」は実は「複雑な形と色をした物体」だったという説が蔓延して行きます。

しかし、正式には「赤い球体」とされ、常識的にも「黒い立方体」や「白い平面」であってはならないその物体は、未だに「赤い球体」として人々に認識されています。

■ 善良な社会は「常識」に支えられている ■


この物体が「赤い球体」である事は社会に混乱を招きません。人々の常識で納得し得る色と形だからです。しかし、この物体が「複雑な色を形をしている」事は、世の中を混乱させます。常識が覆ってしまうからです。

実は善良な社会は「常識」に支えられています。相手を信じるという行為は、相手の常識を信じるという判断に等しい。「人々が同じ常識を共有している」という信じ込みが社会を支えています。

真実は大切ですが絶対ではありません。社会を維持する為には、場合によっては真実を隠しても「常識」を守る必要もあります。社会を治める人達はこう考えています。政治家が、官僚が、マスコミが、「常識」を守る為に団結します。そして、人々は無意識に「常識」を求めます。

こうして、オボロゲに真の形が見えている物でも「赤い球体」であり続ける事が出来るのです。そして、実はそれ程悪い事ではありません・・・。「常識」が崩れるリスクに比べれば・・・。



■ 陰謀論とは「常識」の外から世の中を見る行為 ■

陰謀論者は「常識」に重きを置きません。「真実」に重きを置きます。尤も多くの場合が「真実」とは「自分だけの真実」です。全体像を見る立場に無い多くの陰謀論者は、「断片」を繋ぎ合わせて「自分だけの真実」を作り出します。

「赤い球体」は実は「白い平面の上の在る黒い立方体」なのだと主張したりします。

陰謀脳は「常識」を嫌うので、常識を外した世界で物を組み立て様とするのです。そして欠けたピースは妄想力で補います。この妄想がエンタテーメントに過ぎると、「地球は爬虫類型宇宙人に支配されている」とか「月の裏側には巨大な都市がある」という「トンデモ陰謀論」に発展します。

■ 「真実」は強請りの材料として最適 ■

冒頭の「赤い球体」ですが、メディアに登場する著名な方も最近「複雑な色と形をしている可能性がある」と言い出しています。ネットでも、その見方が定着しています。

実はこれは「常識」の危機です。そしてこの「危機」には利用価値が在ります。「本当の事をバラされたく無かったら言う事を聞け」というのが昔から悪党の常套手段です。

最近、「赤い球体」の本当に形に関する書籍などが発刊される様になりました。それでも多くの日本人は本能的に「赤い球体」を信じています。これは「常識」を守る為の自己防衛です。しかし、この自己防衛が自分達の利益を奪う事には注意が必要です。

「実はね・・・」と真実を認める事で悪党の強請りのネタを奪う事が出来るのです。

■ モリカケ事件も同じ構造 ■


モリカケ事件も同じ構造をしています。人々はおおよその真実の形に気付いていますが、今の生活を壊したくない為にそれに目を背けています。或いは「真実」に重きを置きません。

一方、メディアは周期的にこの問題を取り上げ真実に迫るかに見えて、肝心な所で手を抜きます。あたかも「脅し」の様に。

私達は、目先のチンケな悪党を晒しものにして溜飲を下げますが、いつの世も本当の悪党は裏に居て表には出て来ない。

その本当の悪党を妄想するのが陰謀論の醍醐味なのです。



先日の陰謀論記事に応援コメントが幾つか寄せられたので、私なりの陰謀論の矜持を書いてみました。
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2018/8/17

トルコ危機と世界同時株安・・・石油と金融  時事/金融危機
 

■ トルコ危機で何故、世界同時株安となるのか? ■

トランプが突然トルコを敵視し始めて、トルコ・リラが下落。これを切っ掛けに世界同時株安が発生していますが、イマイチ全体像が掴めません。多くの方にとって、トルコの危機が何故世界中で株安を引き起こすのか理解できないハズ。

アナリスト達は例によって様々な理由を挙げていますが、尤もらしい説明は「トルコの国債をスペインやイタリアなど南欧諸国の銀行が多く保有している」というものです。

しかし、私はトルコの問題は「切っ掛け」に過ぎず、株式市場がリスクに過敏になって来ているのではないかと妄想しています。

トランプの牽制に反してFRBは年内4回の利上げを実施するでしょうし、ECBも緩和制作の縮小に着手します。日銀は口では「安定したインフレ率を達成するまで緩和を続ける」と言いながらも、国債購入額を裏では縮小し続け「ステルス・テーパリング」を絶賛継続中です。

世界の金融市場は今年前半まではリスクに鈍感になっていましたが、そろそろ緩和資金の縮小という事実から目を背ける事が出来なくなっています。当然、リスクの大きな市場から資金は逃げ出し始めます。トルコもその一つに過ぎません。

■ 高金利のトルコリラやブラジルレアル ■

銀行の窓口で「トルコリラ建ての債権ファンド」や「ブラジルレアル建ての債権ファンド」を薦められた方もいらっしゃるかと思います。或いはトルコリラやブラジルレアルの外貨預金を薦められた方も・・・。

トルコリラやブラジルレアル建ての投資の魅力は金利の高さです。トルコの政策金利は最近はでは17.5%程度でした。リラで銀行預金をするだけで、相当な金利が得られます。

一般的に金利の高さはその国の景気を反映します。景気が良く物価が上昇している国ではインフレ率を抑制する為に金利は高くなります。ではトルコの経済が17%もの成長をしているのか・・・答えはNOです。

トルコやブラジルの金利が高い理由は、外国から資金を呼び込む為に金利を上げているのです。逆に金利を下げてしまうと資金が国外に流出し、リラやレアルは為替市場で暴落する可能性が有ります。トルコやブラジルの金利が高いのは、リスクの裏返しなのです。

2013年のバーナンキショックの頃にも新興国通貨が売り込まれましたが、この頃、一般庶民外貨預金に手を出していた方もいらしたので、痛い思いをした方も多かったでしょう。外貨預金は為替変動リスクがあると庶民も学習したのです。

一方、トルコリラ建て債券や、ブラジルリラ建て債券などという怪しい商品も沢山売られています。例えば「欧州投資銀行のトルコリラ建て債券」などというものが有り、17.4%もの金利着いたりします。「債権の発行元が欧州投資銀行ですから安心です」なんて説明されてウ販売されているのでしょうが、高い金利が着くという事は高いリスクが有るという事。これらの商品の抱えるリスクはトルコリラ建て、ブラジルレアル建ての商品であるという事です。要は、リスクの大半は為替リスクなので、これは外貨預金と何ら変わらないリスクを持った商品と言えます。信用度の高い債権でリスクをカモフラージュした実にエゲツナイ商品なのです。

こんなエゲツナイ金融商品が世界で売買されていますが、金利に飢えた投資家達は短期的な利益求めてトルコリラ建ての債券や、トルコ国債に手を出します。南欧諸国の銀行の多くも、金利に吊られてトルコ国債を大量に保有している様です。

これらのハイリスク通貨への投資は、リスクが意識されると最初に売り込まれます。今回はトランプの発言が引き金を引いただけで、トルコ以外にもリスクはそこら中に転がっている事に注意必要です。

■ シリアと共通するトルコの地政学的リスク ■


一方、トルコにはもう一つ重大なリスクが在ります。それは、シリアと同様の地政学的リスクを負っているという事。

中東からのガスや石油のパイプラインはトルコ国内を経由してヨーロッパ諸国に到達します。さらにはロシアからのガスのパイプラインもトルコ国内を経由してヨーロッパに至ります。

例えば、イランからのパイプラインがシリア-トルコ経由でヨーロッパに繋がる事をアメリカは敬遠します。同様にロシアからのパイプラインがトルコ経由でヨーロッパに繋がる事を嫌がります。これはウクライナに似た状況です。ですから、アメリカはトルコをNATOに加盟させ、親米政権を維持したかった。

トルコのエルドアン政権はイスラム回帰的な政策を打ち出し、民主的な政権とは言えませんが親米政権だったのでアメリカとの関係は良好でした。シリア内戦でも、反政府勢力を資金面で後押しし、さらには反政府勢力が油田地帯で手に入れた原油はトルコに持ち込まれ国際市場に流されていました。

ところが、トルコがロシアの戦闘機を撃墜した事件から空気が一変します。プーチンに呼びつけられたエルドアンはビビリまくり、手の平を返した様にロシア寄りの姿勢を示す様になります。これに怒ったアメリカはトルコでクーデターを仕掛けますが、ロシアがクーデター派の通信を傍受してエルドアンは九死に一生を得ます。これでトルコとアメリカの関係は決定的に悪化します。

アメリカはシリア内戦でシリア国内のクルド人勢力に肩入れし始めます。しかし、国内でクルド人のテロに悩まされるエルドアン政権にとっては、これも面白くありません。シリアのクルド人勢力はトルコ国内の勢力と緊密な関係にあるからです。そこでトルコはシリア国内に越境してアメリカ軍の支援するクルド人勢力を攻撃し、これをほぼ制圧します。

実はシリアのアサド政権とクルド人勢力は浅からぬ関係を持っており、アサドはトルコの越境攻撃に政府軍をシリア北部に派遣しますが、トルコとの戦闘は避けています。クルド人勢力がアメリカの手先になっているからです。

この様にトランプのトルコ敵視の背景には、昨今のトルコとの関係悪化が有りますが、もっと根本的な所で、中東の石油支配においてトルコはシリアと同様に地政学的には重要ポイントでアメリカとしては手放したくない場所なのです。

アメリカは自分の意に沿わない中東諸国の政権を戦争やアラブの春を使って倒して来ました。イラクのフセインが、リビアのカダフィーが、エジプトのムバラクが排除されましたが、シリアのアサドの排除には失敗した様です。

結果的にシリアとトルコ、そしてカタールがロシアやイランとの関係を緊密にするなど、中東の政治地図が2分される結果となりました。

■ 金融危機の落としどころとしての中東戦争 ■


ここまでは様々なメディアでも伝わる事実です。でも、このブログは陰謀論ブログなので、その先を妄想します。

これまでの中東の混乱や、トルコとアメリカの対立は来るべき中東戦争の「準備」に過ぎません。仮に、シリアやトルコやイランが巻き込まれる中東紛争が起きた場合、ロシアと中国はこれらの国を支援します。既にシリア国内ではロシアの特殊部隊とアメリカ軍の直接戦闘の様な事も起きていています。

戦闘が拡大し、米軍がシリアやイランに直接大規模な攻撃を加えた場合、ロシア軍は米軍と直接交戦する事態に発展する可能性は低くありません。中国も後方支援するでしょう。これで、アメリカと中露の関係は完全に悪化し、アメリカは中露に経済制裁を課します。

事、ここに至れば原油価格は高騰し、中国からの安い輸入品が立たれればアメリカ国内のインフレは加速します。アメリカに同調せざるを得ない日本も対中貿易制裁に踏み切らざるを得ません。当然、日本国内でもインフレが加速します。

さて、先進国でインフレが加速した場合どうなるか・・・。国債金利が急上昇してパンパンに膨らんだ先進各国の財政は一気に危機的状況に陥ります。特に日本とアメリカはヤバイ。当然、中央銀行が国債の直接買い入れに入りますが、ドルも円もその他の通貨も信用が失われます。こうして、高いインフレ(ハイパーで無くとも)の発生によって、政府債務は目減りし、国民資産も目減りします。そう、国民の資産が国家に吸収されるのです。

問題は、中東戦争の前に現在の金融緩和バブルが弾けるのか、それとも中東戦争が切っ掛けになるのかですが、戦争が不況時の公共事業だとするならば、金融危機の方が先にやって来ると思われます。その責任を誤魔化す為に戦争を利用するのは第二次世界大戦の時と同様では・・・。


こうして、世界は戦争と金融危機によって新し体制に変化して行く・・・これが世界の経営者の常套手段だと私は妄想します。


テスラのイーロン・マスク氏が株式の非公開化をツイートして物議を醸していますが、非公開化を焦る理由が存在するとするならば、米株市場の大暴落を予測している・・・そんな妄想も膨らむ今日この頃です。


毎度、同じ様な事を書いていますが、陰謀ネタが最近少ないので、陰謀好きに皆さんにサービス記事です。


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2018/8/16

日本一の峠にMTBで挑む・・・大弛峠  自転車/マラソン
 
■ 息子が『あの花の名前を僕たちはまだ知らない』の聖地巡礼に行った ■

息子が旅行先から写メを送信して来た。

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センスの無いTシャツ、スーパーカブ、龍勢花火・・・。この組み合わせでピンと来るのは「よたろう」さんと「ハノイの塔」さんぐらいでしょうか?

どうやら息子は名作アニメ『あの花の名前を僕たちはまだ知らない』の聖地巡礼中の様だ。ウラヤマシイ。

私も何度も行こうと思いながら、「自転車で行くには遠いし、延々と国道を走って行くのはツマラナイなぁ。」と断念していました。

■ 夏休みのアドベンチャーライドで秩父に行ってみようか・・・ ■


お盆休みの早朝3時、今日は自転車でどこに行こうかなどと思案しながらネットサーフィンをしていたら、「日本一の標高の峠 大弛峠ヒルクライム」などというページに行き当たった。日本一の峠って一昨年、シングルギアーで「東京-直江津」を企画して挫折した渋峠じゃなかったのか??

調べてみたら次の結果が分かった。

1) 乗鞍スカイライン 2702m  一般車は通行禁止だけれどバスなどで行ける日本最高点
2) 富士スバルライン 2380m  車で行ける日本最高点
3) 大弛峠      2365m  車で越えられる峠の最高点
4) 渋峠       2172m  国道最高点  

なんだ、3番目じゃないかと思うかも知れませんが、登り始めの標高が低いので、獲得標高が2000mに近く、7〜10%越えの斜度で延々に30km以上も登り続ける、かなり上級者向けのコースらしい。一説には「ツールドフランスの超級山岳に匹敵するキツサ」だとか・・・。

でも、山梨県って遠いよな・・・なんてエキスパートで調べたら、浦安を始発に乗れば8時30分過ぎには「塩山」という駅に到着するらしい。料金も2220円・・・これって鴨川とあまり変わらないじゃん・・・。

さらに調べると、どうやら大弛峠を越えて長野側にダウンヒルし、さらに三国峠を越えて、中津川林道を下ると100kmちょっとの距離で秩父に行けるらしい。オオオー!!これだ、これこそが私が求めていた聖地巡礼コースだ!!

■ 大弛峠の長野側と三国峠の埼玉側はダート林道だ ■

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しかし、長野側に抜けている人達の自転車はランドナーやMTBばかり・・・そして記事を良く読むと、大弛峠の長野側と三国峠の埼玉側はダート林道だという。さらに、大弛峠の下りは拳大の石がゴロゴロしているかなり荒れたコースで、MTBでもパンクしている人が居ます。

そんなアドベンチャーな記事を読んでいたら居ても立っても居られなくなりました。速攻でMTBのラレー君に普段は付けていないツールバックを取り付けて、輪行バックを持って始発に乗るべく浦安駅にダッシュです。ギリギリ、間に合いました。お盆休みとは言え、始発は仕事に行く人で結構混んでいます。少々、ヒンシュクを買いながらも、吉祥寺で中央線に乗り換えて、高尾で甲府方面の普通電車に乗り換えます。

「塩山」という甲府の手前の聞きなれない駅で降りるのですが、スマホで塩山の天気を調べると10時から18時が雨となっています。1m程度の小雨なのでMTBならどうにかなるでしょう。一応、首と腕が通る様に穴を空けた浦安市指定のゴミ袋をリュックに入れています。大雨になったら、ゴミ人間となれば良い・・・。

■ 塩山は信玄公ゆかりの地だった ■

塩山の駅を降りるとロータリーに武田信玄の銅像が鎮座しています。どうやら塩山は武田家所縁の地の様です。

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途中で恵林寺という立派な寺が有りました。ここ、信玄公の菩提寺なんだそうです。時間があれば寄りたい所ですが、本日は先を急ぎます。

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大弛峠ヒルクライムで注意が必要なのは途中で補給が出来ない事の様です。途中のダムの近と、峠の上に山小屋が有る様ですが、峠の山小屋は営業していない時も有るとか・・。

コンビニでしっかり朝食を食べ、水を二つのボトルに詰めます。梅干しのお握り3個と、エナジー系のゼリー2つ、ミネラル系のゼリー2つ、それと塩タブレットキャンディーをバックパックとポケットに詰め込みます。これだけあれば大丈夫でしょう。

■ いきなり10%に近い、延々と続く直線ってマジですか・・・ ■

大弛峠への登り口は、市街地のちょっとゴチャゴチャした通りを何回か道に迷った後に表れました。「クリスタルライン」という黄色の標識を目印に進むみ、いきなり8%越えの急坂が始まりました。

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中学校の前の坂道も9%越え・・・。学校に通うだけで足腰が鍛えられそうです。

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小学校を過ぎると、ブドウ畑が現れます。ここは甲府分地の北端の扇状地です。そこを道は斜度7%を切る事無く直登して行きます。真夏の炎天下で、太陽を遮るものは全く有りません。そこをフロント44tシングルのクロモリフルリジットMTBで登る行為は無謀です。

ヒルクライムを開始してからリアは32tに釘付け。時速は7〜9kmを行ったり来たり・・・。ここで足を付いたら心が折れて登れなくなります。本日はMTBで写真を撮りながらノンビリ登るつもりでしたが、心のギアがいきなりトップに叩き込まれます。「ダムまで絶対に足を付くまい!!」と心に誓います。

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直線の道で斜度が分かり難いのですが、カメラを横に振ると・・・スピードが出ない事が分かります。「見ちゃダメだ!見たら負ける・・・」そう心の中で呟いて、ひたすら前方を見据え、シッティングでジワリジワリと登って行きます。

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実は出発前にビンディングペダルに交換しようとしたら、固着していて、街乗りのフラットペダルにトレイルランシューズという、いつもの組み合わせ。しかし、しばらく登ると斜度の感覚がマヒして来ます。キツさはあまり感じなくなります。ただ、淡々とペダリングを踏むだけ。

ただ暑い・・・ひたすら暑い。先程から道の脇を勢い良く流れる用水路に飛び込みたい欲求を抑えるのに必死です。実際に電車の中で見たブログでは、この用水で水浴びした人も・・・。

浄水場に到着するまで、ほぼ7〜10%の直登で、ここまで本格的な登りが始まってから4.4km。平均斜度は7.8%、およそ400mを登りました。斜度の感覚がマヒしてただ脚を付かない事だけを考えていましたが、浄水場下の登りはルートラボで調べたら、15%の激坂でした。

実は登りながらボーと考えていたのは「以外に楽じゃん」って事。キツイのは暑さで、斜度程の事は無いな・・・これなら麻綿原の登りの方がキツイな。その理由は舗装がキレイな事。路面が荒れていないので、ブロックタイヤが良く転がるのです。重たいタイヤとホイールの組み合わせですが、慣性が失われない様にキレイにペダリングすれば、タイヤは転がり続けようとします。フレームはクロモリの極太フレームなのでペダリングの力は無駄なくホイールに伝わります。これがラレー君でのヒルクライムが楽しい理由。

しかし、麻綿原の老川十字路からの登りの様に路面が荒れているとブロックタイヤは転がりません。路面の凹凸で一回一回ブレーキを掛けられる状態になるのでかなりトルクを必要とします。ところがコケや落ち葉でスリップし易い路面なので、ダンシングでトルクを掛けると後輪がスリップし易い。こういう路面ばかり走っているので、舗装のキレイなこの道は斜度に比して登り易く感じるのでしょう。ムラ無く、無駄無くトルクを掛け続ければ時速7km程度で延々と登って行けます。

■ ようやく木陰になった ■

浄水場を過ぎると扇状地も終わり、山間部に入って行きます。道もカーブの連続となり、直登よりも精神的に楽になります。斜度も6%を切る場所も出て来て、足を休めながら登れます。標高も800mを越えているので、木陰では空気がヒンヤリしています。これで熱中症リタイアの危険性は去りました。

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ここまで自転車乗りに誰も会わなかったので、流石に猛暑のお盆にチャレンジする人は居ないよなと思っていたら、後方から二人組のロードバイクが追い抜いて行かれました。

すれ違う時に会話しましたが「今日雨大丈夫ですかね」と天気が心配なご様子。確かにカーボンホイールで雨のダウンヒルは怖そうです。こちらはMTBのブロックタイヤでVブレーキなので「雨でも大丈夫な様にMTBです!!余力があったら裏のダートを降りてみようかと思って」と返します。「頂上まで行かれるんですか?」と私のフロントシングル+ドロップハンドルの魔改造MTBを心配気に眺めながら、お二人はダンシングで一気に加速して行かれました。雨が降らない事を祈ります。
「足付無し」の縛りを掛けたので、写真は走行しながら撮っています。速度の出ない登りでは片手運転が楽なので、カメラをポケットから出したり、入れたりの動作が楽です。ただ、樹林の下は暗く、手振れ写真を量産しています。時速はあいかわらず6kmから8kmを行ったり来たり。

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樹林の下を抜け、ようやく青空が見える所まで登って来ました。

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■ 日本で最高標高の多目的ダム「琴川ダム」 ■

登り坂が一旦ピークになり、眼下に琴川ダムが見えて来ます。日本で一番高い場所にある多目的ダムだそうです。標高は1464m。一旦登りが終わったので足を付いて写真を撮ります。ここから先、このコースで唯一の下り坂に。

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ダムの先に「金峰山荘」という山小屋が在ります。ここが唯一で最後の補給ポイント。ここでボトルの水を捨て、スポーツドリンク2本を満たします。もう「掛け水」は必要無いでしょう。オニギリ2個を食べ、エナジージェルとミネラルジェルで補給します。

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先程までは「楽勝」な感じでしたが、一度止まると脚に疲労が溜まっている事が分かります。ダムに車を停車して、ここからヒルクライムされた方達は、走り終わって撤収の準備をしています。空模様はだいぶ怪しい感じで、上から降りて来た車の方達は、雷が鳴っていたと話しています。

標高は1500mを越えるので、ここからは「亜高山帯」です。天候の急激な変化と落雷には注意が必要でしょう。


■ 自然を満喫するコース ■

金峰山荘から、林道の冬期ゲートまでの直登のコンクリ―ト舗装が、これまたエグイ10%越え。脚を休めた後なので、キツク感じます。冬期ゲートを越えると、道幅が狭くなり、琴川沿いのワインディングロードになります。

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登り始めて直ぐに「牧岡の千貫岩」が現れます。花崗岩を垂直に貫いたマグマが固まった岩の塊ですが、天然記念物に指定されている様です。ここはしっかり写真に収めたかったので、天気が崩れる前に撮影しておきます。再スタートして直後なので、足着きはノーカウントとします。岩の形状からして玄武岩質の様に見えます。

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しばらく川沿いの上りをこなすと、斜度が緩やかになり、カラ松の中をゆるやかにカーブして進みます。ここは軽井沢の別荘地の中?って感じのリゾート感満載。斜度は2%程度ですが、登りに慣れた足には、緩い下り坂に感じられます。速度も20kmを越えるペースで快調に走ります。ここで数組のロード乗りの方にすれ違います。先般、私を抜いて行かれた二人組も下りて来ました。皆さん、雨具を着用されているので、上は雨の様です。浦安市指定のゴミ袋の出番かも知れません。

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緩やかな斜度も終わりに近づく頃、道路脇のコンクリート法面に何かがヒラヒラと大量に舞っています。アサギマダラの大群です。100頭(蝶は頭数で数えます)は居るでしょうか。脚を着きたくは無かったのですが、一生に一度、見れるかどうかの光景です。じっくりと動画と写真に収めようとしますが、停車した瞬間から蚊が脚に纏わり付いて来ます。撮影も早々にこの場を離れます。

実はアサギマダラは大群で渡りをする蝶としてマニアの間では有名です。夏に本州の標高の高い場所で繁殖したアサギマダラは、冬は九州や遠くは八重山諸島で越冬すべく集団で渡りをする蝶なのです。高地を離れるのは8月末から9月だと言う事なので、まさに渡りの途中なのかも知れません。


撮影の為に足着きをしましたが、キツくなっての足着きでは無いのでノーカウントとします。

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■ 雨の中の登攀 ■


残り8Km付近から、再び傾斜がキツクなります。8%程度が連続し、ヘアピンカーブの内側では10%を超えていそうです。標高は1750m程度ですから、あとヤビツ峠一本分登れは峠に到着します。

ここから雨が激しくなって来ました。カメラが濡れるのでリュックに仕舞う為に足を着きます。これも仕方ない足着きなのでノーカウントとします。

何人かの方が峠からダウンヒルして来ましたが、皆さん、慎重に下って来ます。路面は水たまりが浮いています。さらにグレーチングがカーブの度に道を横切ります。私もヘアピンのグレーチングで後輪がスリップして一瞬ヒヤリとします。

■ 意外にあっさりと大弛峠を制覇 ■

ここからは淡々と登るのみ。ラスト5kmになると、後〇kmという標識が現れますが、最早引き返す気は全然起こりません。雲とガスで眺望は全く効かないので、どの辺がゴールなのか分かりませんが、道端に巨岩が増えて来て、シラビソなど亜高山の針葉樹林帯が現れたので、標高が2000mに近い事が分かります。

雨粒でサングラスの視界も悪く、全身ずぶ濡れですが、運動でエネルギーを放出しているので、寒さは感じません。ゴールが近いとなると気分もウキウキして、ラスト5kmは意外にあっさりとクリアー出来ました。

大弛峠は駐車場があだで、眺望が良い場所では有りません。登山道の丁度鞍部になっていて、ここから朝日岳や国師ゲ岳に登山道が伸びています。駐車場脇の登山道を登ると直ぐに「夢の庭園」という眺望が素晴らしい所が有るらしいのですが、雨なので止めておきます。

ここまで本格的に登りは始まってから4時間半程掛かりました。ヒルクライムの大会でトップの方は1時間30分程だという事なので、かなりゆっくりペースです。フロントシングルの44t-32t(ギアー比1.375)、車重13kg超ですから、52歳の俺、良く頑張った。脚も十分の残しています。

重たいMTBでのヒルクライムはパワーを掛けると直ぐに脚が終わるので、イーブンペースが基本。結果的に脚が残し易い様です。

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■ 雨のダウンヒル ■

予定では、ここから長野側に未舗装林道を下り、三国峠を抜けて秩父に抜ける予定でしたが、この雨では落石や落雷が心配です。今回は諦めて、塩山へと来た道をダウンヒルします。と言っても、30kmの急坂のダウンヒルです・・・。雨も降っているので苦行になる事は確実・・・。

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ダウンヒルは安全第一で下ります。ちょっと気を抜くと40kmなんて速度が出てしまいますが、雨でスリップするのでブロックタイヤとVブレーキでも制動距離が長くなります。グレーチングも滑るので、30kmをMAXに設定して慎重に下ります。

雨が強いので、途中でカメラはバックパックに仕舞ました。写真は少な目です。一応、斜度が分かり易いショットだけ撮っておきます。

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途中、ロードバイクの登攀の方と一人すれ違いました。カーボンホイールでしたので、下りが心配になります・・・。

私は無理をせず、乗用車に道を譲りながら下ります。斜度が少し緩やかな区間は、軽自動車に着いて走ります。こうすればブラインドコーナーで対向車に突っ込む危険が減ります。

標高が高いので、雨の中のダウンヒルは寒くて耐えられないかと思いましたが、意外と体幹が冷える事は有りませんでした。ただ、手が寒さで痺れて感覚が鈍くなり、つま先もジンジンしています。

頂上からずっと下ハンを持って、サドルから腰を上げた競馬のジョッキ―スタイルをキープしているので、そろそろ腕と首が辛くなって来ました。長い下りって、登りよりもキツイですよね。集中力も必要とするので脳も疲れます。


■ 登りでチェックした山野草をカメラに収める ■

千貫岩の辺りまで下りて来て、雨も小降りになりました。実は登りでチェックした山野草をカメラに収めたかったのでラッキーです。

それでも小雨でカメラのレンズが濡れてしまい、さらに手がカジカンデいるので、なかなか上手く撮影出来ません。どうにかピントの合った写真を恥ずかしながら・・・。


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シモツケソウの仲間だと思うのですが・・・

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ピンボケですがツリフネソウ

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こちらはキバナツリフネソウ。初めて見ました。

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オダマキですね。

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シオンの仲間のキオンだと思うのですが・・・。

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キキョウ科ツリガネニンジン属の何か・・・フクシマシャジンに似ています

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クガイソウだと思うのですが・・・

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イカリソウだぁー!と思ってシャッターを切りましたが、どうも咲き終わりのシモツケソウっぽい

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ホタルブクロは色の濃さのバリエーションが豊富です。結構、濃色が多かったです。

■ 1500m以下になると暖かい ■


どうにか金峰山荘(きんぷさんそう)まで下りて来ました。ここで雨脚が強くなったので、コーヒーを飲みながら体を温めます。

珍しい立体の凧が飾られていました。強風でないと上がらないらしいですが、小学生なら引きずられるそうです。

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しばらくして雨が上がったので、ダウンヒルを続けます。不思議なもので1500m以下の標高になると気温が上昇して寒さが収まります。日が出ている事も関係しているのかも知れませんが、空気の塊の温度が違う感じです。

稜線を雲が這い上っています。

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これはトチ(栃)の大木。大人三人でも手が回らない巨木。

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雨上がりの景観は神秘的です。

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どうやら麓の方の雨量は多かったらしく、道路に小石や枝が、流れの跡を示して散乱しています。後でYahoo天気で調べたら1時間に33mmのバケツをひっくり返した様な強い雨が降った様です。甲府盆地は地形から午後に雷雨になる事が多いとか。

ヤマカガシが道に居ました。棒でつついても動きませんが、車に轢かれた形跡も無いので、大雨で体温を奪われて動けなくなったのかも知れません。

田圃に多く生息するありふれた蛇で、以前は毒が無いと考えられていました。しかし、実は奥歯に強い毒を持っていて噛まれて死亡するケースが起きています。実は毒はマムシよりも強い。ただ、毒牙が短く、毒を注入する筋肉も無い様なので、余程運が悪くなければ毒を注入される事は無い様です。実際に私は幼稚園の時に、子供のヤマカガシを瓶に入れて飼っていました。母と姉が気持ち悪がって、直ぐに近くの川に流してしまいましたが、岸に泳ぎ着いて安心した事を覚えています。今では毒ヘビ扱いなので、飼わないと思いますが・・・。

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浄水場まで下りて来ると、南アルプスが遠望出来ます。ここら辺の道に小石が転がっています。相当な雨だったのでしょう。

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■ 塩山温泉の歴史ある銭湯で汗を流す ■



雨と汗でベトベトなので、そのまま電車に乗ったら風邪を引きそうです。着替えを持っているので、来るときに目を付けておいた塩山温泉に立ち寄ります。ネットで調べたら、650年の歴史を誇る共同風呂が有るとか。

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「宏池荘」という旅館に銭湯が併設されていました。16時頃だったので私が一番風呂だった様です。その後、野球チームの少年達がワラワラと入って来ました。皆、コンニチワと元気に挨拶をします。地方の子供達は礼儀正しいですね。

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泉質は弱アルカリ性で、ちょっと肌が滑りますが、湯上りはお肌がツルツルです。着替えて帰ろうとしたら大雨になっていたので、10分程、銭湯のオバちゃんと立ち話をします。イントネーションは静岡弁とほぼ一緒。旅館に日大の自転車部が先日宿泊された様で、自転車乗りの方が汗を流して行くことも多いとか。「またいらして下さいね」の言葉を背に聴いて、駅に向かって小降りになった雨の中、温泉街を後にしました。

駅に着いたらささと自転車を輪行バックに仕舞い、土産を捜します。キオスクにはワンカップのワインがあったので買ってみます。日本最古のワイナリーのワインと書いてありました。お味は・・・酸っぱい・・・。これ、イタリアで紙パックのワイン飲んで気持ち悪くなった時に似た味がします。まあ、安かったから仕方無いのかな。地酒のワンカップも試してみますが・・・ワンカップの味。家内には栗饅頭を買いました。信玄餅なイラナイと言われているので。(信玄餅は美味しいですよね。梱包にビニールにきな粉と黒蜜を出して食べるのが正式な食べ方だと先日知りました。)

17時過ぎの鈍行に乗って、浦安には21時前に到着。

1日あれば、日帰りで日本最高標高の峠に行けるなんて、ちょっと意外でした。時間的には鴨川と大差ありません。海は見慣れているので、偶には、高い山も良いものですね。何より涼しい。

2000mのヒルクライムなんて大した事無いじゃん・・・と思いましたが、翌日の午前中は集中力を欠いていたので、結構疲れたのかも知れません。1日静養して、連休最後の15日に房総の海に向かいましたが、向かい風がキツクて途中で引き返して来ました。普通なら何という事の無い7m程度の向い風ですが、ペダルを踏み切れなかったという事は、筋肉にも疲労が残っているのでしょう。


はたして、天気が良ければ秩父まで走破出来たのか・・・これは再チャレンジしなれば。

ちなみに、大弛峠、二度と行きたく無いという人と、直ぐにでも又行きたくなるヒトに分かれる様です。私は後者。ただ、MTBだったから辛く無いという点は見逃せません。ロードバイクだったなら最初の坂道で踏み過ぎて撃沈していた可能性が高い・・・。


今年の連休は、鴨川にもMTBで出かけたので(台風の直後の麻綿原越え)、ラレー君が大活躍です。実際に乗っていて一番楽しい自転車です。


<追記>
お盆休みに間、自転車で遊び回っていたので、体重がさぞや減ったかと思いきや、全然でした。体脂肪率は3%程下がりましたが、こんなのは直ぐに元に戻るのはいつもの事・・・・。ちなみに肉体年齢は43歳と表示されます。精神年齢は永遠の20代ですが・・・。






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2018/8/8

18春アニメ・ベスト  アニメ
 

大変遅くなりましたが、リクエストがあったので2018年春アニメのベストの発表です!!


第一位  『ヒナまつり』

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『ヒナまつり』より


インテリヤクザの家に突然、超能力少女がやってきた・・・。たったそれだけのネタから、シュールな笑いと、熱い涙が溢れ出す作品です。文句なくのベスト1。

とある「組織」が超能力少女達を養成し、何か重大な任務を働かせているらしい・・・。ヒナは突出した能力を持ちながらもバカな為、空間移動できる不思議なカプセルの詰められて捨てられます。カプセルが出現した先は・・・インテリヤクザの新田の部屋。突然現れた14歳の超能力少女に驚く新田ですが、彼女を養い中学生に通わせるハメに。世間知らずで、おまけに人間的感情が希薄なヒナが、周囲の大人や同級生と関わる事で、徐々に人間性に目覚めてゆく、心温まるお話です。・・・・ウソです。

いわゆるコメディー作品ですが、その笑いが秀逸。「人の思い込み」のズレが生み出す笑いを最大限に増幅させて爆笑を生み出すテクニックは原作を褒めるべきですが、アニメでは絶妙なテンポのボケ&ツッコミで捧腹絶倒間違い無し。それなのに、なぜか心が温まる。79歳の母が大笑いしながら次回を楽しみにしていた作品です。これを見て笑えない人は・・・たぶん居ません。

監督は『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』の及川 啓監督。『やはり・・』でも「丁寧」な演出で良い仕事をされていましたが、今期は『ウマ娘 プリティーダービー』とに作品が放映され、そのどちらも丁寧な仕事ぶりは健在です。


第二位 『ウマ娘 プリティーダービー』

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『ウマ娘 プリティーダービー』 より

第二位も及川 啓監督作品。

女の子に擬人化された競走馬の育成ゲームの宣伝用アニメですが、『ラブライブ』と同様に、アニメの出来が非常に良い!!

ウマの耳と尻尾が生えた美少女が競馬場を駆け抜ける・・・そんなシュールな作品ですが、普段アニメなんか見ない競馬ファンも夢中にさせました。何故なら、「往年の名馬が勝負したらどの馬が勝つのか」と言う競馬ファンの夢のレースが見られるから。小ネタも含めて実際のレースや、競走馬のトリビアが詰まっています。これもファンにはたまらない。

JRAの名CM「夢の11レース」にウマ娘を重ねた動画がアップされていたので紹介します。



主人公は武豊をダービージョッキーに導いたスペシャルウィーク。北海道の田舎から上京して来た彼女には二人の母親が居ます。生みの親と、育ての親。育ての親との「日本一のウマ娘になる」という夢を実現するために、彼女はウマ娘が集うトレセン学園に入学します。そしてレースで見たサイレンススズカの走りに憧れ、彼女と走りたいと心に誓うのえです。

実は実際のスペシャルウィークも出産時に母馬が亡くなります。ばんえい競馬の牝馬に育てられますが、この馬が気性が荒かった為に人間に良く懐いた。そんなスペシャルウィークの人懐っこさがアニメのキャラクターとして見事に生きています。

一方、憧れのサイレンススズカは実際には「大逃げ」の俊足馬でした。武豊が騎乗してからは、スタートから先行し、そのままリードを広げて逃げ切りゴールするレース展開でファンを沸かせます。しかし、1998年秋の天皇賞で前脚を複雑骨折し、局予後不良と診断され安楽死となります。このレース、後続を大きく引き話す展開で、府中競馬場のカメラがワイド一杯まで画角を広げてようやく先頭から最後尾を画面に収められた。そんなスペシャルウィークの圧勝を誰もが疑わない状況で骨折。本来なら騎手もろとも転倒して後続を巻き込んでもおかしく無い状況で、サイレンススズカは馬場の外周に移動し、骨折した脚をかばいながら立ち続け騎手を守りました。武豊はその夜、初めて泥酔するまで飲んだと語っています。そして、その後もしばらくはサイレンススズカの事は一切インタビューで語らなかった・・。

アニメではサイレンススズカは骨折するものの、再起して再びレースに復帰します。「し、サイレンススズカがあの時死ななかったら・・・」という競馬ファンの夢が実現します。

JRAがスポンサーになってもおかしく無いゲーム&アニメですが、馬主の承諾無に企画が進んだ為に、一部の馬主が馬の使用を許可しないという事態に。その為に、ディープインパクトなど有力馬が一部抜けてしまうというオチが着いてしまいました。それでもレースシーンの細かな再現に競馬ファンを夢中にさせる作品です。

ところで私は競馬ファンではありません・・・。実家の近くには地方競馬場があって、同級生には厩舎の娘さんが居る様な環境で育ちました。西風の日には、街中に馬糞の匂いが漂う。だから「競馬=馬糞の匂い」。ただ、大学の親友達が競馬ファン(レースよりも競走馬ファン)で飲み会で良く馬の話をしていたので、有名競走馬の名前や、記憶に残るレースの話は耳に残っています。今回、この作品を観ながら、実際のレースの映像をYoutubeで探して、ニワカ競馬ファンを楽しみました。



第三位  『若おかみは小学生』

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『若おかみは小学生』  より


本当は1位でも良い作品です!

小学生の間で長年ベストセラーとなっている青い鳥文庫の『若おかみは小学生』。マンガ化もされていた様ですが、満を持してのアニメ化。日曜の朝の子供向けの作品ですが、これが大人が観ても十分に面白い。いや、下手なNHKの連ドラよりも、余程面白い。

交通事故で両親を亡くしたオッコ(関織子)は祖母が経営する旅館に引き取られます。悲しみを表に出さない健気なオッコの前に表れたのは男の子の幽霊。彼、ウリ坊はオッコのおばあちゃんの幼馴染。ふとした事故で死んでからは、ずっとおばあちゃんを見守っていたと言います。成り行きで若女将となる事を決意したオッコですが、色々と失敗ばかり。しかし、前向きな性格と、アイデアで、失敗を挽回し、お客さん達は満足して宿を後にします。

この作品、とにかく「話の筋」が良い。児童文学の特徴でもありますが、シンプル故に、ストーリーの推進力が非常に強い。だから、実質12分の時間の中で、しっかりと物語が進行します。これは昨今のアニメは是非参考にして欲しい。脚本の横手美智子の上手さでもあるのですが、絵作りも基本に忠実です。シーン展開のさらりとしたモンタージュの挿入などにも手慣れたものを感じます。

「この後は若おかみは小学生!始まるよ」というオープニングが聞こえると、家内も観に来るので、誰が観ても面白いハズ。

実は9月には映画も公開されます。こちらは脚本は『おじゃ魔女どれみちゃん』シリーズや『ガールズパンッアー』の吉田玲子、監督は『茄子アンダルシアの夏』の高橋希太郎。PVが公開されていますが、私、絶対に映画館に行きます。


『若おかみは小学生』映画版 PV



第4位 『ヲタクに恋は難しい』


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『ヲタクに恋は難しい』より

何かと「イケてない」「暗い」イメージを持たれがちな「オタク」。しかし、最近の若い世代の「オタク」は「勝組」の中にも多い。ガチオタの美男美女の二組のカップルのオタク生活をカジュアルに描く作品ですが、「あるある」ネタ満載で、私が観ても楽しめます。

オタクが「特別」な存在で無くなった現在に、出るべくして出て来た作品ですが、ただ・・・イケてないオタクが観たら・・・「弾けろ、リア充ども!!」と叫びたくなる事必至。

第5位 『ゴールデンカムイ』

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『ゴールデンカムイ』より


日露戦争後の北海道が舞台。日露戦争で数々の窮地を生き延びた「不死身の杉本」は戦士した親友の妻の治療費を稼ぐ為に北海道で砂金堀をしています。そんな時に耳にしたのがアイヌの黄金の在りかを示す入れ墨の噂。網走刑務所を脱獄した囚人達に彫られた入れ墨を合わせると、黄金の所在が分かるという・・・。囚人を追う杉本だた、ヒグマに襲われ絶対絶命のピンチ。それを救ったのはアイヌの少女のアシリパ。彼女の父は黄金強奪犯に殺され、黄金を奪われたと言う。二人は行動を共にし、囚人達の行方を追いますが、軍を始め、様々な輩が彼らのライバルとして立ちはだかります。

囚人達を含めキャラ立ちも良く、話の骨格もしかりしているので楽しめる作品ですが、とにかく、前半のアイヌの風習をアシリパさんが説明する下りが興味深い作品です。同和問題同様にアイヌ民族の問題はアンタッチャブルが空気が流れていますがから、アイヌ文化は日本の中ではだんだんと風化しつつあります。北海道ではかつてはアイヌ文化を観光の目玉にしていましたが、今でもリゾートを前面に押し出しているので、今の若い方はアイヌの存在すら知らない方も居るはず。そんな今だから、ある種のタブー感が薄れて、エンタテーメントとしてアイヌ文化を扱う事が出来る様になったのかも知れません。「オソマ」というアイヌ語が我が家で流行っています。


第6位 『デビルズライン』 

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『デビルズライン』より


鬼と呼ばれる吸血鬼が存在する世界。鬼は厚生労働省に管理され、世間から隠されていますが、人並み外れた身体能力を持っています。そんな鬼の犯罪を取り締まる為に、公安5課には鬼の捜査官が配置されています。

真面目な女子大生の平つかさは、鬼の事件に巻き込まれます。その捜査を担当した鬼の捜査官の安斎は、つかさの身を案じてつかさを個人的に警護しますが、二人の間にはいつしか好意が芽生えてゆきます。鬼と人との道ならざる恋に戸惑う二人ですが、つかさの一途な思いに・・・。そんな中、鬼を排斥しようとする組織が行動を起こし、安斎も公安5課も窮地に立たされて行きます。

『東京喰種』よりも、ストレートにラブストーリー色が強く、私は好感が持てました。障害が多い恋は見ていても萌えます。家内と一緒に毎週キュンキュンしながら観ていました。

第7位 『踏切時間』

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『踏切時間』より

踏切を待つ間の、ほんの短い間の会話劇ですが、「心の声」をモノローグとしてダ漏れされるというアニメや漫画の特徴を見事に生かした作品。微妙な関係の相手との会話では、人は心の中で様々な会話のシミュレーションや妄想を巡らせますが、それと実際の会話とのギャップが面白い。

第8位 『ひそねとまそたん』
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『ひそねとまそたん』より

岡田磨里が脚本、樋口真嗣が総監督という異例の組み合わせですが、実写映画の企画が流れた事から、二人で何かアニメを作ろうと始まった企画の様です。

細部は面白いのに、全体がボケている作品の典型で、「伝えたいメッセージ」の無い作品のが陥りがちなパターン。ただ、EDが秀逸だったのでランクイン。


『ひそねとまそたん』ED

第9位 『ピアノの森』
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『ピアノの森』より

かつての映画版よりもキャラクターもストーリーも原作に忠実で、原作ファンとしては大満足ですが、3話までが急ぎ過ぎたかな。演奏シーンの気持ち悪いCGさえ無ければ1位でも構わないのですが・・・CGが・・・・。アニメをあまりご覧になられない方に勧めるならば、今期はこの作品一択です。


以上、だいぶ遅くなってしまいましたが、18春アニメのランキングの発表でした。
3

2018/8/7

『未来のミライ』は名作だ・・・派手さは無いが、じんわりと効く  アニメ
 

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『未来のミライ』より

■ 世代によって評価が分かれる作品 ■

『バケモノの子』の出来が良く無かった細田守監督。ライバルとなった新海誠監督が『君の名は。』という特大のホームランを放った後だけに、新作『未来のミライ』には細田守監督の威信が掛かっています。さぞや肩に力の入った作品を作って来るかと思いきや、これが意外にサラリとした「名作」。

ネットの評価を眺めると、子育て経験のある方達からは好感されていますが、若い世代には受けが悪い様です。

主人公は4歳の幼児、くんちゃん。この子、リアルに居たら「このガキ、ウゼー」と思わず眉をひそめそうなワガママ。理由は妹が生まれて良心の関心が妹に向いてしまったから。・・・そう、いわゆる「赤ちゃん帰り」というヤツです。

2時間近く、ガキのワガママに付き合わされて、若者が抱く感情はネガティブなものになる事は容易に理解出来ます。しかし、そんな子供に振り回された経験をした事のある世代には、かなりリアルな体験として懐かしく感じますし、現在、まさに子育てに奮闘する世代にはリアルな日常として共感を呼ぶはずです。

■ 大きな事件も、スペクタクルも無いけれども「名作」 ■

『君の名は。』は、2年という時間の隔たりや、隕石の落下という物語の核心が大掛かりで、SF的娯楽作品として良く出来ていました。これは観客に分かり易く「感動」を与える事が出来る物語です。

しかし、新海作品は本来、「大きな物語」を排除して、日常の些細なリアルを積み上げる事で静かな感動を生み出す演出を得意としています。新海誠の演出は、ストイックさを突きつめた先に存在する、ある種のカタロシス到達する手法として、ミニマムアートにも近い。そして、ストイックな表現の中で風景だけが雄弁な事を特徴としていました。

その新海監督がポストジブリとして、万人受けする作品を期待されて作った作品が『君の名は。』でしたから、細田監督はさらにそれを上回る「万人受け」を狙って来るだろうと、私は幻滅にも似た諦めを抱いていました。

しかし、細田監督やスタッフは意外にも、「本当に小さなのホームドラマ」を丁寧に作っていて、これは意外でした。

「バケモノの子」で安易に観客の評価を得る為に分かり易い「ハリウッド型演出」を用いた細田監督ですが、「万人受け」する映画は細田監督の性に合わないと気づいたのかも知れません。あるいは「バケモノの子は要望通りに作ったから、今度は俺の好きな様に作らせてくれ」と言ったのかも知れません・・・。(妄想ですが)

かくして出来上がった『未来のミライ』は、スケッチの様な散文的な作品で、大きな感動がドドーと押し寄せる事はありませんが、観終わった後、様々なシーンや仕草が、ふとした切っ掛けで、ふっと思い浮かんで来る映画です。私はこういう映画は「名作」認定しています。

例えば原恵一監督の『カラフル』や『百日紅』が、これに近い感覚の映画。シーンが心に住み着く様な、強い浸透性を持つ作品です。『おおかみ子供の雨と雪』も、同じ部類の映画です。

■ 細田監督の父性感の変遷が面白い ■

『未来のミライ』の主人公は4歳の幼児だと表面的には見られてしまいますが、実は主人公は子育てに奮闘する若いお父さん。

会社から独立して個人で開業したばかりの若い建築家ですが、開業したてで仕事はそれ程忙しくありません。しかし、立派はマイホームを建ててしまったのでローン返済の為に、出版社に勤務する奥さんが、産休を早めに切り上げて職場復帰します。

4歳の男の子と、生まれたばかりの女の子の面倒を見る事は、父親にとっては苦痛でしかありません。さらに奥さんが結構気が強い。くんちゃん「鬼ばば」と言いますが、実はダンナにとっても「鬼ばば」に見える時が有る。(これ恐妻家の私はかなり共感しました)

これ、細田監督の実体験と反省を踏まえた表現では無いかと思います。フリーになった後、ジブリに乞われて『ハウルの動く城』の監督を任された細田守は、絵コンテまで切った段階で監督を宮崎駿と交代します。鈴木プロデューサーが「崎で無ければ客が呼べない」と判断したからです。ほぼ手弁当でスタッフを手配していた細田監督は、この時、もうアニメ業界には居られないと思う程の状況に置かれます。見かねた古巣の東映アニメーションが『おジャ魔女どれみ ドッカーン』の2話程の監督を依頼した為に『どれみと魔女をやめた魔女』という神作品が生まれ、結果的に今の細田監督に繋がります。

しかし、この頃、細田監督はきっと収入が少なく、奥さんが働きに出ていたのでは無いか。家で細々とアニメの請負仕事をこなしながら、家事と育児をしていたのでは無いか・・・。そんな妄想がムクムクと膨らんでしまう『未来のミライ』の描写の数々です。

実は細田作品の父親は、時代と共に変化しています。

1) 父親不在の時代

『おおかみ子供の雨と雪』では、父親は早々に死んでしまい、母親が二人の子供を育てます。これは、多分、監督がアニメ監督として多忙だった時代、奥さんが一人で子育てをしていた時の話だったのでは無いか・・・。

2)代理父の時代

『バケモノの子』ではバケモノが父親代わりをしています。これは子供にあまり関われなかった監督の贖罪なのかも知れません。最期に本当に父親が登場したと思いますが、実際の父親の印象は驚く程薄い。細田監督は自分が果たせなかった理想の父親を「バケモノ」として描いたのでないか・・・。

3)父性回復の時代

『未来のミライ』では、父親は育児に奮戦していますが、最初は子供は恐怖の対象です。育児も働く奥さんへの義務感から、やらされている感じが強い。それでも、徐々に子供の成長に歓喜する様になり、だんだんと父性に目覚めて行きます。これ、世のお父さんの殆どが似た経験をされている事でしょう。多分、細田監督のお子さんも成長されて、育児をしていた頃が懐かしくなったのかな・・・と。そして、子供から自分を阻害する必要もなくなったのかな・・・そう妄想しています。


■ 「子供の動き」でジブリのアニメーター達は震撼するだろう ■


妄想はさて置き、この作品の技術的な見どころを少し語ります。

多くの方が指摘されている様に、子供の仔細な動き、仕草、言動など、本当に良く観察されています。

一方で、動き一つ取ってもリアルな動きを再現しただけでは無く、アニメとしてのデフォルメが見事にされています。これは「子供の動き」を得意とするジブリ出身のアニメターは「ヤバイ」と震撼しているかもしれません。

比較すべき作品はトトロなどのファンタジー系の作品では無く、『アルプスの少女ハイジ』や『母を訪ねて三千里』といった日常系の作品。宮崎駿の作画は、子供のふっくらした肉付きと、ぎこちない動きが当時としては見事に再現されていますが、一方で着ぐるみの様なムクムクとした感じが付きまといます。

『未来のミライ』での作画は、指の一本一本にまできちんと骨が通り、その周りを幼児の柔らかな肉が包み込んだリアルさが有りながら、一方で動きのリズムや表情のデフォルメには、ジブリ東映動画が生み出して来た「アニメ的なリアル」がしっかりと下地として存在しています。思わず溜息が出てしまう程に。

■ 「グラナダの奇跡」の先にあるカメラワーク ■


カメラワークも秀逸です。

TVアニメ『明日のナージャ』の26話や、『バケモノの子』で見せた、画面を固定して左から掃けた人物が右から再登場して視聴者に軽いショックを与えます。これは予期せぬ所から人が現れてドッキリさせるのと同じ原理ですが、カメラを固定する事で成立します。(ファンはナージャの26話の一連の演出を「グラナダの奇跡」と呼ぶとか呼ばないとか・・・)

今回は似た効果を、カメラのパン(横方向の回転)で行っています。中庭でくんちゃんが振り向くと、視点の回転と共に中庭の景色が変わり、そこに見知らぬ男が立っている・・・。これは映画などで昔からある演出ですが、風景まで一遍するのでドキリとさせられます。

さらに『未来のミライ』では、ステップフロアーをカメラが右側にパンして行くと、その先々でくんちゃんが登場するという演出も印象的です。これ、古いアメリカのホームドラマでも見られる手法ですが、空間の移動と時間の移動を同時に行うテクニック。

この様に、細田監督のカメラワークは非情に凝っていて、様々な映像表現に精通しています。昨今の日本のアニメのカメラワークは、移動カメラが様々な角度から人物を追い続ける『進撃の巨人』も立体機動の戦闘シーンの様な派手なものに注目が集まりますが、地味なカメラワークも演出の意図に合致すれば、素晴らしい効果を生み出す事が出来るのです。

■ 細田監督の描く夏の映像は感動的 ■

前情報で、「街の俯瞰映像が凄い」という評価が見られましたが、これは、街を上空から俯瞰して、くんちゃんが住む家にズームアップする映像。CGで車などの動きも入力する手の込みようです。実はこれは『バケモノの子』の冒頭の渋谷のスクランブル交差点の人が行き交うシーン同様に「今の技術ならこんな事も出来ます」程度の話題作りの映像。

確かにオーーーとなるのですが、これはお金があれば誰が監督をしても出来る映像なので、私はあえて評価はしませんが、物語終盤でこの映像が再び使われた時に、全く違う感想を抱く事になります。ヒントは「帰還」。

これとは別に、風景で感動を誘うのは「夏」の光景。サマーウォーズの坂道のシーンといい、細田監督の描く夏のシーンは本当に素晴らしい。ムウッとした暑さと、そこにスーと吹く風が見事感じられ、それが物語のハイライトになったりします。今回は三浦半島をバイクで走るシーンが見事でした。


■ 大きな感動を期待せず、ちいさな感動を広い集めに劇場へGO! ■


私は『未来のミライ』は必見の映画だと思います。『君の名は。』や『この世界の片隅に』の様な大きな感動を期待すると肩透かしに合いますが、子育て経験のある方ならば、小さな感動が沢山拾えるはずです。


『サマーウォーズ』では「団結する親戚」を同じ時間の中で描いた細田監督ですが、今回は「時間を越えて繋がる家族」を見事に描いています。実は『未来のミライ』は、細田映画の集大成と言っても過言では有りません。

ポストジブリとして過大が期待が掛かる中、「大人から子供まで楽しめる映画」という課題を、見事な形で作品に昇華した細田監督に、私は最大の拍手を送りたい。



■ 最期に苦言を・・・ ■

「名作」ではあるけれど「傑作」では無い『未来のミライ』。

その多くの原因が、脚本の下手さにあります。ご本人の脚本ですが、アイデアが先行し過ぎていて、シームレスにエピソードを繋ぐ事に失敗しています。

ただ、キャラ立ちさえ良ければ、そういうアラは意外に気にならないのですが、何せ4歳の幼児ですから、観客が感情移入して幼児のファンタジーに没入するのは難しい。その点、『となりのトトロ』の宮崎駿は突出していたのだと、改めて痛感させられました。

初期細田作品の名作は、TVシリーズのキャラクターが「不穏な空気」の中に置かれる事の違和感によって支持を集めていた。要は「変な作品」だから目立った。

『ポケモンアドベンチャー』の「コロモン東京大激突」も、シリーズ中では奇異で浮いていますが、悪目立ちしています。「どれみと魔女をやめた魔女」も同様です。元々、ストーリーが自然に流れない事を特徴とする監督なので、家族向きの娯楽作品の脚本は無理なんです・・・。

だから私は、細田監督が再び、キャラクター物の作品を撮らないか密かに期待しています。そうすれば原恵一の『クレヨンしんちゃん 戦国大合戦』や『オトナ帝国の逆襲』の様な大傑作が観れるのでは無いか・・・。




最後に一言だけ・・・こんなに甘やかされて育ったガキは、ろくな大人にならない!!だいたい、あのオモチャの量は異常です。・・・実は私はくんちゃんの未来が心配でならない。多分、鉄道の運転手に憧れるのでしょうが、自動運転の時代ですから・・・。



さらに一言・・・・「ひいじいちゃん」が全てを持って行く作品です・・・。


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