2013/6/19

落下系男子との恋物語・・・有川浩 『植物図鑑』  
 

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■ ヘクソカズラ(屁糞蔓)とはあんまりだ・・・ ■

上の写真の花の名前をご存知でしょうか?

普通にそこら変のフェンスに絡まっている蔓草(つるくさ)ですが、
初夏にベル状の小さな白い花を咲かせます。
花弁の中心は、品の良い紅色。

この花の名前は「ヘクソカズラ」と言います。
漢字で書くと、「屁糞蔓」。

何故、こんなにカワイイ花が屁糞なのとお思いでしょう。
実はこの花、茎や葉を折ると、その汁が強烈に臭いのです。
手を石鹸で洗っても、ちょっとやそっとじゃ臭いが落ちない。
だから付いた名前が「ヘクソカズラ」

有川浩の『植物図鑑』はこの花のエピソードから始まります。

上司と外回りをしているOLの「さやか」は、駐車場のフェンスに咲くこの花を見つけます。
部長も可憐な花に目を留め、この雑草は綺麗だねと言います。
「雑草という名前の草はありません。この花はヘクソカズラと言います」と応じる彼女に、、
「うら若い女性の口からそんな言葉が・・・」と部長はビックリします。

「雑草という名の草はありません」と言ったのは、昭和天皇だとか・・・。
素晴しい言葉です。

■ 本が消えた・・・ ■

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娘の部活には、有川浩好きが居る様で、時々ハードカバーを借りて来ます。
『植物物語』も先日娘の机の上のあったので、ちょっと拝借して読み始めました。
これが、とても面白く、100ページくらい読み進んだのですが、
次の日、本は我が家から消えていました。
そう、娘た友達に返してしまったのです。

こうなると、どうあっても続きが読みたい・・・
かと言って、100ページ読んだ本を新品で買うのは勿体無い・・・。
そこでブックオフに行くと、文庫版が400円で売られていました。
これなら丁度100ぺージ分のディスカウントです。
早速、購入して読書再開。

■ 落下系男子との恋物語 ■

OLのさやかは、飲み会から帰宅した時、玄関先に落ちている男を発見します。
恐る恐る、男に話しかけると、彼は行き倒れだと告げます。

「お嬢さん、よろしかったら俺を拾ってくれませんか」
「噛みません、躾けのできた良い子です。」

そういう男に、酔いも手伝って、ついついさやかは男を拾ってしまいます。
翌朝、目が覚めると、部屋には味噌汁の良い香りが・・・
自炊なんて、めったにしない彼女の冷蔵庫には、
腐りかけの玉ねきと味噌と卵しか入っていません。
男は、それだけの材料で、美味しい味噌汁とオムレツを作ったのです。

さやかの胃袋は、鷲掴みにされてしまいます。

こうして、さやかと、行き倒れのイケメン樹(いつき)との奇妙な共同生活が始まります。
さやかが家と食費を提供し、樹が家事を担当する。
昼間はさやかが会社で働き、夜は樹がコンビにでバイトをする。

こうして粗筋を書くと、なんだか典型的な「落下系」のお話。
漫画やラノベでは、ヒロインは往々にして空から降ってくる。
主人公の男子は、最初はビックリするけれど、
天真爛漫な美女にすぐに心奪われて、同居する事に・・・。

この「落下系」のお話を、少し現実的にして、
落ちてくるのを美女から、イケメンに変えただけ・・・。

作者自身、後書きで「リアル落ち物女子バージョン」がコンセプトと書いており、
ラピュタみないな話を、イケメンでリアルにやりたかったみたいです。

■ 川原に生えている草を食べる?! ■

拾った男は優秀でした。

家事万能。
料理は上手い。
おまけに礼儀正しく、
そして、いつもさやかに優しい。
・・・さらに、さやかに手を出す事は絶対しない・・・。

もう、現代女子が理想とする男性像がこれでもかという程、てんこ盛り。

さらに樹には隠れた才能が・・・
それは、彼が植物に異常に詳しい事。まさに歩く植物図鑑。

休日になると二人は自転車で近くの川に出かけています。
都会を流れる川の川原や土手には様々な雑草が生えています。
その一つ一つに名前があり、中には食べられるものもある事を樹はさやかに教えます。
樹は季節季節の食べられる野草をさやかと採り、そして様々な料理でさやかを感激させます。

フキは天ぷら、炊き込みご飯、きゃらぶき、ぼっけ味噌に。
ノビルとセイヨウカラシナはパスタに。
イタドリは炒め物に・・・。

こうして、さやかは休日に樹と「狩」に出かける事を楽しみに日々をすごします。
野草たちは、日々の食卓を彩るだけで無く、さやかのお弁当にも入っています。

そんな日々を過ごすうちに、さやかのハートはもう樹に鷲掴みにされています。
でも、苗字も素性も言わない、行き倒れの男との距離は近くて遠い。

そんな、二人の恋の行方は・・・・・


■ ベタ甘な恋愛が読みたければ、有川浩に限る ■

粗筋を書いているだけで、こっちが赤面してしまいそうです。

でも、多分、いまどきの繊細な女子の理想の恋愛感って、こんな感じなのかも知れません。
もともと、携帯小説の形で発表された作品なので、若い女性がターゲットです。

作者が読者のニーズに応える事が良い事かどうかは意見の分かれる所です。
純粋に文学を志す人からすれば、こういった小説は好ましくないと判断されます。

一方、漫画やライトノベルは読者の反応が、作品の内容を変化させます。
ジャンプの人気投票システムではありませんが、
どうしたら、読者の人気が継続的に得られるかのマーケッティングは綿密です。
ライトノベルもシリーズを長続きさせる為には、読者の反応が重要です。

この様なジャンルを日常的に読んで育った現代の作家達は、
「どうしたら読者が喜ぶか」というツボを良く心得ています。
そして、読者が喜ぶ作品は、自分自身が読みたい作品である事が彼らのパワーの源泉です。

だから、読者の若い女性が「ベタ甘」な恋を望むなら、
さまざまなフレイバーのスイーツを提供します。
そして、それが作者自らも、読みたい作品なのです。

有川浩の作品の男女の恋は、いつも「ベタ甘」です。
好きなのに、なかなか言い出せずに、
ぶっきっちょうな優しさだけしか相手に示せない男女。
でも、意外と現実の世界でも、イケテない男女の恋なんてこんな感じかも知れません。

そんな少女マンガ的な「ベタ甘」の恋を書かせたら
有川浩は最高のパテシエかも知れません。

■ 全ての草には名前がある ■

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上の写真は私が中学2年の時、お年玉で買った植物図鑑です。

日本の植物学の大家、牧野富太郎博士の『牧野 新日本植物図鑑』。
初版は昭和36年です。
私が持っているのは第15版で、昭和42年発行。

1万円を超える本でしたので、新品は買えずに、
生まれて初めて神保町の古本屋に足を踏み入れました。
6千円という値段が、奥付きにスタンプされています。

植物好きの私は、この本にはずいぶんお世話になりました。
高校時代は野山に出かけては、植物採集をしていました。
新しい草花の名前を一つ覚えるのが楽しくて、
片道切符で、房総の方までも出かけていました・・・。

大学時代は下宿先が山に近かったので、
それこそ食べられそうな山菜を取っては、
図鑑で食べられると書いてあれば食べてみたりもしました。

「雑草という名の草は無い。全ての草に名前がある」とは昭和天皇の言葉だそうですが、
道端に生えていて、名前が分からないものがある事は私にとっては気持悪い事でした。

なんだか、樹君に、若かりし頃の自分が重なってしまって、
50歳も近いのに、電車の中でニヤニヤしながら「植物図鑑」を読んでしまいました。



そんな私ですが、マンションのフェンスに絡むヘクソカズラを天敵の如く引き抜いています。
花はカワイイのだけれど、やはり見た目は、雑草なんですよね・・・臭いし・・・。


6

2015/7/1  7:18

投稿者:人力
yoko さん

ご丁寧にありがとうございます。私も元々ネットで拾っ
て来た写真なので・・・ご自由にお使い下さい・・・っ
て私が言っていいのか・・・。

ブログ、拝読させて頂きました。ステキなブログです
ね。

私も一句・・・

ヘくそ蔓の 咲く垣根に 夏来たる

・・・・あれ、これでは季語が2重ですね、さらに
7,5.5だ・・。残念。

めげずにもう一句。尾崎 放哉風にチャレンジします。

ヘくそ蔓 臭い

・・・才能、有りませんね・・・。

2015/6/30  22:26

投稿者:yoko
はじめまして。わたしは俳句の季語の選び方と言うブロ
グを運営しているYOKOと申します。突然で失礼かとは思
ったのですが、こちらのサイトの写真がとても季語のイ
メージにあったものでしたので、ブログのの中で紹介さ
せて頂きました。もし差支えがなければこのまま紹介さ
せておいて頂ければと思うのですが、いかがでしょう
か?不都合でありましたら、即刻削除いたしますの
で、そのようにお申し付け下さい。できましたら、この
まま掲載をお許し頂けると幸いなのですが・・・・こち
らのページで紹介させて頂いております。⇒http://xn-
-evqz9go5h336c.com/?p=136

http://xn--evqz9go5h336c.com/?p=136

2013/6/21  2:26

投稿者:人力
鍛冶屋さん

自衛隊三部作の『海の底』や、『図書館戦争』シリーズは男性でも読みやすいですよ。

私は『レインツリーの国』みたいな「ベタ甘」な作品をニヤニヤしながら読むのが好きですが・・・。

2013/6/20  23:06

投稿者:鍛冶屋
有川浩はなんか読めないですよねぇ・・・
あまりに気恥ずかし過ぎて^^;)。


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