2017/4/14

『月がきれい』・・・・形にならないもの  アニメ
  

クリックすると元のサイズで表示します

■ 志村貴子かと思った ■

現在、マンガの世界で独特のポジションを築いているのは志村貴子だろう。

少年少女の「不安定な性」を描かせたら彼女の右に出るマンガ家は少ない。志村貴子の描く世界は『放浪息子』も『青い花』にしても、トランスジェンダーなどという重いテーマとは対象的に「ふんわり」とした印象を受ける。

志村貴子は『アルドノア・ゼロ』のキャラクターを担当した事でもファンの記憶に新しいが、今期アニメの『月がきれい』は、キャラクターといい、作品の雰囲気といい、志村貴子としか思えない物がある。だから、このオリジナル作品のスタッフ欄に彼女の名前が無いと気付いた時の私の驚愕は大きい。

■ 岸誠二の表現力の幅の広さに驚愕する ■

しかし、私はスタッフロールで再び驚愕する。何と監督が岸誠二なのだ。最近では『暗殺教室』や『ダンガンロンパ』といったエッジの立った作品が目立つ岸誠二であるが、私にとっては『瀬戸の花嫁』の名監督である。

いずれの作品も「アニメならではのエッジの強さが際立つが、私は彼の演出の「緩急」が好きだ。ドタバタの直後にホロリとさせられるアニメが得意とする演出の真骨頂を見る事が出来る。

ところが、『月がきれい』は対照的に志村貴子的な輪郭の細い作品である。話も淡々と進行する。これを岸作品だとは、言われなければ気付かない。本作で岸監督は、「新海誠なんて人いたっけ・・・」と思わず悪態を付きたくなる程のナイーブな演出を見せつける。

監督としての彼の表現の幅の広さは尋常では無い。そして、その両極においてパーフェクトである事に驚愕する。

■ 中学生の「「ありのままの時間」を映像化する手腕 ■

物語は川越の中学に通う、小説を書くオタクな男子と、陸上部で注目されるも、少し内気な女子の物語らしい・・・。

「らしい・・・」と歯切れの悪い表現をするのは、開始2話において彼らに主人公らしい事件は起こらない。同じクラスで、ファミレスで近くの席になり、ドリンクバーで鉢合わせになる・・。これだけで一話が完結する。

そう、「完結」してしまうのである。普通の作品なら5分で描く内容を、20分以上掛けながら話は全く進展しない。現代アニメとしては、或いはドラマも含めて現代の映像表現としては異例のテンポの悪さである。

しかし、そのテンポの悪い1話の20数分の何と「濃密」な事か・・・。岩井俊二の『花とアリス』や『リリイ・シュシュのすべて 』に似た、「単調ながら濃密な時間」を視聴者は味わう事が出来る。

しかし、これを「評価」するのは、様々な映像表現を観て来た私の様な重度な「オタク」であって、一般のライトユーザーでは無い・・・ハズである。しかし、アニメ嫌いの家内ですら、「アンタ、こんな中学生の観る様なアニメ観てキモイ」と言わずに一話目をチラ見していた。

この作品の中には、私達が「かつて経験した中学生という時間」が流れている。そして、現在進行形の中学生にとっては、「自分達のアリノママに時間」が濃密に流れているのだ。

これはテンプレ表現を得意とする現代アニメの「対局」に存在する唯一無二の作品である。

■ 空気に徹する ■

今後、どういう展開になるか予想も付かない作品であるが、岸監督は「空気を作る事」に徹している様に見える。

これは簡単な様で実に難しく、現代アニメの表現に慣れた若いスタッフにそれを理解させる労力を思うと気が遠くなる。

「空気は見えない」・・・故に「描く事が出来ない」。しかし、空気は現実的にも私達の周りを満たしていて、人にとって不可欠なものである。その重要でありながら、普段は意識もされない「空気」を、どうやってアニメという二次元に閉じ込めるかの実験を岸監督はしているのが本作で試みる。

ジブリや新海作品では背景が空気を生み出す。しかし、今作では登場人物の呼吸を通じて視聴者に空気を感じさせる。

ゼーゼーとか、ハーハーとか、或いはクンカ、クンカでは無く、ちょっとした息遣いを巧みに描いている。フッ・・とか、ハァ・・とかそんな微妙な息遣い。それを声優が声で演じるのでは無く、何となく絵から感じ取らせる。


未だ始まったばかりで、これからどういう展開になるか全く分からないが、私はこの作品から目が離せない。



<追記>


今期アニメも始まったばかりですが、とりあえず1話を観れた作品は・・・

『有頂天家族』は突出して素晴しい。

『サクラクエスト』はPA worksの「働く女の子」シリーズの最新作ですが、実写ドラマにしてゴールデンタイムで放映したら結構な視聴率を稼ぐであろう内容。大人が楽しめる作品。

『恋愛暴君』は3話までこのテンションが持つのか不安ではあるが、とにかく1話は捧腹絶倒。OPの田中秀和の曲はエンディングで驚愕。

『俺のいもおとがこんなに・・・』と同じ原作の『エロマンガ先生』は仕掛けとしては面白いが、原作者が脚本も担当する事で、『おれいも』における倉田脚本が如何に素晴らしいかを再認識させる。(思わず『おれいも』全話見直してしまい寝不足)

『Id-0』は『ガッチャマンクラウズ』を思わせる演出だた、久しぶりの谷口悟朗監督。期待。SFとして面白くなるかがカギかと。

『正解するカド』は『シンゴジラ』で面白さが再認識された官僚の世界を描く0話目は面白かったが、SF設定の本編で・・・その面白さが継続出来るか興味津々。

後は『進撃』2期、『弱ぺダ』など・・・かな。

今期は「切る」作品に困りそうな予感。
3

2017/4/19  5:17

投稿者:人力
ハノイの塔 さん

柿原優子、『坂道のアポロン』や『昭和元禄落語心中』で名前を見かけた方ですよね。大人向けの脚本を書ける人が、中学生をどう描くのか興味深々ですが、ファミレスでの親の描写など秀逸かと。

『サクラダリセット』、川面監督だとは気づかず1話3分で切っていましたが、観たら面白い。川面演出は「妙に長い間」以外は控えめですが・・・「ワザとらしいセリフ回し」など、ちょっと川面監督らしく無いなと思いながらも、内容の面白さでグイグイと魅せられていまいます。

>今期のヒロインは、恋暴のヤンデレ茜嬢しかいない。

イヤー『恋愛暴君』は2話目も面白かった。『神のみぞ知る世界』のバリエーションではあるのですが、あそこまで振り切れていると気持ちが良いですね。

『クリエイターズ』息子のおすすめでもあるので観てみます。

2017/4/19  5:09

投稿者:人力
よたろう さん


>今年2クール目で「『君の名は。』超え」と
は…ちょっと手のひらクルクルし過ぎじゃないですか
w?

『君の名は』はあまり好きでは無いので・・・良く出来てはいますが・・・「歪んていない」のが欠点。『月がきれい』は商業作品であの内容をやろうという時点で相当「歪んで」いる。私は「売りたい」より「創りたい」という作り手の気持ちに惹かれます。ただ、これで13話って無理じゃないか?とも心配していますが・・・。

>は妙な「生々しさ」

照明器具のヒモでシャドーボクシング・・・私もやってまいした。男子のDNAがそうさせるのかと・・・。

『Id-0』はSFとして「落とし前が着くか」という点に集約されます。演出が突出している訳では無いので・・・。スタッフを見る限り、中盤から面白くなるのではないかと期待。

『進撃』2期・・・私も観ていません。だってよたろうさん同様に原作全巻読んじゃってますから・・・。

今期アニメ、ちょっと消化のが難しい程、面白い作品が多いですね。嬉しい悲鳴を上げています。「アニメがつまらなく感じる歳になってしまった」のでは無く、前期アニメに良作が少なかっただけ・・・少しホットしています。

2017/4/19  4:59

投稿者:人力
よたろう さん

>「武装少女マキャヴェリズム」「アリスと蔵六」「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?」「神撃のバハムート VIRGIN SOUL」も一切お勧め出来ません!

『アリスと蔵六』は『極黒のブリュンヒルデ』、『サクラダリセット』は『シャーロット』を彷彿させます。「異能もの」は『バビル2世』からずいぶん遠くまで来たものですが、『アリスと六蔵』は六蔵を始めとする「大人」の魅力で観てしまいます。『アルプスの少女ハイジ』における「おじいさん萌え」みたいな・・。

『バハムート』・・・2期は1話が最後まで観れませんでした。1期目も後半は辛かったので。CGと作画は凄いのですが、内容がテンプレ的だった。出オチだったかな。その他は未見。

2017/4/19  4:50

投稿者:人力
よたろう さん

>私は最近になって人力様とはアニメの好みや求めるものがまったく根本的に180°異なるのだということに今更気づきました。

私、だから、よたろうさんのコメントを楽しみにしています。私が普段なら見ないアニメの魅力を教えて下さるので。それで、『瀬戸の花嫁』を見る事が出来ただけでも私には嬉しい事ですから。

『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』世代の、ちょっと頭の硬い私は、最初は『エヴァンゲリオン』ですら「オタク的」で観るのが辛かったです。キャラデザーからして受け入れられなかったし、戦闘とギャグの組み合わせが生理的に受け入れられなかった・・・。多分、多くの大人が現代アニメを敬遠する理由は「リアルじゃない」という一点に尽きるのかも知れません。ジブリ作品は「ファンタジー」だから、そのハードルが根本的に存在しないからOK。

私がオタク化した結果、家内や身近な人に「アニメの魅力」を伝えようとして痛感する超える事の出来ない崖です。

よたろうさん達の世代(ガンプラ世代?)と私達の世代のオタクの間にも崖が存在しますが、このコメント欄のやり取りが、吊り橋の様に私達の間を、結んでいると信じて疑いません。

2017/4/15  20:05

投稿者:ハノイの塔
月がきれい、は、柿原優子脚本で要注目だったのですが、
こちらが年を取ってしまったせいで、この手のストーリーに
響かなくなってしまったのは残念。

そういえば、岡田麿里さんが自伝を出して大ヒットしているそうで。

川面真也監督のサクラダリセット、どこかで見たことあるなと思ったら
同監督のココロコネクトでした。
(だからどうだ、というのではありませんが)

今期の注目は、正解するカド、とレクリエイターズ、でしょうか。
それ以外では、ID−0と、アリスと蔵六、にもちょっと注目。

今期のヒロインは、恋暴のヤンデレ茜嬢しかいない。
このまま最後まで突っ走ってほしいもの。

あと、カブキブ、の
諦めたらそこで芝居終了、というのが笑えた。
(本編のほうは、どうということはないけど)
とにかく、前期より見るものが多いのは嬉しい。

最後に、塩山紀生さんの訃報があって、びっくりしました。

2017/4/14  21:38

投稿者:よたろう
『東山奈央があんな演技できるとはね…』

人力様、今年2クール目で「『君の名は。』超え」と
は…ちょっと手のひらクルクルし過ぎじゃないですか
w?
只、確かに「月がきれい」は妙な「生々しさ」が有りま
すよね、2話の体育祭でスクールカーストの描写とか
も。
私もてっきりこのアニメ原作あるんか?と思いましたが
アニオリとは驚きました岸監督には見られない「静」の
描写が…
何気、Cパートのショート集もよく出来てると思いま
す。

オルフェンズが全く響かなかった私としてはId-0は期待
してます、谷口×黒田の安心感と言ったらありませんw
あと主人公始め女子キャラのデザインが好みなのですが
原案が「青の6号」「ラストエグザイル」でお馴染みの
村田蓮爾と知り納得。
初回の印象はアウトロー共のスペースオペラという感じ
です、「スペースコブラ」「ビバップ」「モーレツ宇宙
海賊」の系統は好きなので。

「進撃の巨人」はアニメ自体の出来は兎も角、前期の放
送から4年も経ち完全に「機」を逃してしまった印象で
す。
アニメだけのにわか組は熱が冷め前期の内容もうろ覚
え、私の様な熱心な原作読者からすれば「今さらこその
話かよ…」という空気になってしまいます。
因みに原作では物語初期に散りばめられた謎はほぼ全て
解明されています、「壁の中にいる巨人」「超大型、
鎧、獣の巨人の正体」「『ユミル』という名の持つ意
味」
そもそもこの作品のタイトル「『進撃の巨人』とは?」
今ここで総てネタバレできますw
エンディングは作中世界の核心に迫る重要な描写がされ
てますね、神聖かまってちゃんは「惡の華」アレルギー
の私にはキツイですが…

2017/4/14  20:37

投稿者:よたろう
『あの映画は見られたものではないので、チケットを買ってはいけません!!(富野並みの煽り)』

私は最近になって人力様とはアニメの好みや求めるものがまったく根本的に180°異なるのだということに今更気づきました。
(元を正せば「ヴァルヴレイヴを絶賛してる奇特な方がいらっしゃる」という思いを抱きここへとコメントしたのでした。)
ですので私は公開日の朝一で観た「夜は短し歩けよ乙女」は一切お勧め出来ません!!
少なくともノイタミナの「四畳半神話体系」や湯浅イズムの原点「映画クレヨンしんちゃん」初期作の雰囲気がダメな方は合いません。
3・4章のシナリオ改変は個人的にアリですが原作の根強いファンからは不評みたいですし。

ついでに今期だと「武装少女マキャヴェリズム」「アリスと蔵六」「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?」
「神撃のバハムート VIRGIN SOUL」も一切お勧め出来ません!

※投稿されたコメントは管理人の承認後反映されます。

コメントを書く

名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ