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2009/6/26
「48年『CASITE』」
ragb.工房
48年製ブラス・クローム、3バレル。
インナーはニッケル・シルバーの16ホール。
新型カムに斜歯。
モーター・オイル『CASITE』のピンズ。
このピンズはブラスではなく『銅』ですね。
オイル屋さんは景気が良かったのか、缶の形に『浮き彫り』調で作られています。
現在のオーナーさんは、千葉県在住の『ブスデイラレル』さん。
前回のソリッド・ニッケルと同じ方です。今回は2台同時の調整依頼。これがその2台目です。2台ともヒンジ・ピン交換とヒンジの調整です。
1台目はこちら
『ソリッド・ニッケル・John』
『CASITE OIL』にはチョイとした逸話がありますね。
『J.R.Case』という人がいまして(この方は後にこのオイル会社の経営に参画するのだが)ジョプリンからメンフィスに旅をした時の事。(ちなみに、車はT型フォード。)
セアー(ミズーリ州)付近でスプリングを壊してしまったらしい。道端のサービスステーションに寄ったのだが、スプリングのナットがサビついて中々外せない。その時、整備士はひと缶の潤滑オイルのサンプルがメーカから持ち込まれていたのを思い出した。それを一適垂らすとナットはいとも簡単に外れた、というもの。
ケースはすぐさまジョーンズボロ(アーカンソー)にあるそのオイルメーカに向かい、大量に買い付けると共に、『大いに売り出すべきだ』、とか何とか言って引き上げた。(らしい。)この時のオイルがこの『CASITE OIL』。1922年頃のお話し。
さすが、自動車王国と言われるだけ有ってこの頃の米国は自動車の隆盛は大変なもので、それに伴いオイル・メーカも巨大産業を形成します。我々ジッポー・フリークの中では『Kendall(ケンダル)』が有名ですがね。歴史的にはケンダルは1881年ですから、ダントツに『老舗』です。しかも、彼らのエンジン・オイルは、当時500〜1000マイルごとの交換が必要だったオイルを、一気に2000マイルまで寿命を延ばしたというからこちらの功績もスゴイ。社名ロゴの『2本指』はその2000マイルを(誇らしげに)表しています。
もっとも、我々ジッポー・フリークには、1936年に初めてジッポーを広告媒体として使った企業としての方が覚えがよろしい。
勿論、『CASITE OIL』も『負けちゃぁ居ないゾ』、という所。
さて、ごらんの通りの3バレル。
ヒンジはニッケル・シルバー製でブラスピン。実際のところ48年製なのか49年製なのか正確には判りませんが、その辺の年代でしょう。この太さはビッグ・3バレルといってもいいかもしれないですね。
驚いたのはこのバレル、削られて居ますねぇ。
この個体の不思議なところは、バレルだけではなく、よく見るとメッキの剥げている部分がことごとく『真っ平らに減っている』、という事。この画像でも下部のブラスが覗いている部分は研石で研いだように真っ平らです。
全体として『真っ平ら』に減っている部分はこんなにあります。
1、ヒンジ
2、裏面、上部右隅
3、背面下部
4、ボトム底面
反面、ヘッド部分は(まったく)減っていない。
前面は、ピンズがあるので『真っ平ら』という訳にはいきませんが、正面画像左下隅(彫刻文字Qの左)部分は妙に平らに減っています。
これでいくと、どうやらバレルに関しても、『削った』のでは無く『平らに減った』と考えるのが妥当なようですね。さてさて、どうしたらこの様に減るもんでしょうか?
かなり前の事になりますが、片側(片面)だけキレイに減ったジッポーを(画像で)見たことが有ります。長い間スチール机の引き出しに入れられていた物だそうです。
引出しの開け閉めの度に引出しの底でズルズル動き回っていて、それで片側だけツルツルに減ってしまったそうです。(~_~;)
仮に、そんな感じだとすると、
さて、このように減るのはこのジッポーはどのような形で使われていた(保管されていた)んでしょうかね?
上部の黒ずんだ部分はナフサかなんかで拭けば取れそうですが、余計な事はしないほうがいいかも知れませんね。これはこれでアジがありますからね。(^.^)
ボトム刻印とインナー。
インナーの刻印『I』は磨り減ってもう無いですね。(~_~;)
ボトム底面、右端、真っ平らに減っています。
チムニー内部とボトム内部。
この画像でもヒンジ・ピンがかなり磨耗している様子がわかります。
現オーナーは『ご臨終寸前』と言っていましたが、何のなんの、40年代ジッポーでは普通です。
リッドのズレ。相当なもんです。
左右とも同じぐらいズレています。
全体にシブイ感じでメッキが剥げています。
御覧のように、ピン交換のキズも、ヒンジ交換の跡も残っていませんので、この個体は48年当時から同じヒンジピンでここまで来ました、という事ですね。(ご苦労さま。)
61年前のブラス・ピン。
かなり減っていますが、61年間使い続けてきたとは思えませんね。
多くのオールド・ジッポーのように、途中何年かは使われずに来たんでしょうね。
この減り具合ではこれほどのリッドズレになるとも思えません。バレルのループが開いてしまっているんですね。
>
今回の交換用ブラス・ピン。(1.75φ)
中央は旧ピン。
最後は、5バレルのピン。(ニッケルピンですね。特に意味は有りません。太さ比較用に掲載しました。)
ついでですが、ペンチの『先端加工』が見えます。
向こう側は『平ら』ですが、手前の(見えないほう)先は『丸型』に加工しております。
こちらですね。
丸型に削っているのが分かりますかね。
この様に加工まではしないまでも、先の細いペンチ(先細)はオールド・ジッポー・マニアは一本は持っておきたい道具ですね。ヒンジ・ピンは消耗品ですし、簡単なバレルの変形はこれで直っちゃいますからね。
尚、ヒンジ・ピンの交換は前回かなり細かく掲載しましたので、今回は(あっさり)これだけです。(^.^)v
インナー内部に入っていたもの。
コットンはこれが全て。随分少ないです。
ウィックは既に硬化してますね。要交換。
スプリング・チップはギリギリOKか?
赤フリント。(Ronsonかな?)
チップ以外は全部交換しましょう。
交換部材は、
1、コットン・ボール 8個
2、コットン・ロープ(ウィック) 15〜6cmぐらい
コットン・ロープは、インナー内部側に結び目を作って入れます。
特にフリントが『Ronsonの赤』とか柔らか目の物だとかなり汚れも早いですから頻繁にカットします。(月2回ぐらいかな。)最後の方で、引っ張った時、引っこ抜けてしまわないように・・。
コットン・ボールのうち2個分をこの様に引き伸ばします。
これは、インナー内部の狭い側(フリント・チューブ側)に『縦』に入れます。
2個入れると、はみ出しました。ハサミでカット。
無理に入れるとフリント・チューブに余計な力が加わりますので注意、注意。
カットしました。
コットン・ロープは、真っ直ぐに入れます。
コットン・ロープを挟むようにコットン・ボールを左右に1個づつ入れます。
ロープはあくまでもセンターです。
これは、先端の汚れをカットする時チムニー側から引っ張るので、出来るだけ抵抗が少ないようにしたいから。
ロープをグルグル巻きに入れます。チョット長すぎたのでカット。
この場合も、引き抜いたとき、なるべくスムースに抜けるようにするためです。
残りの4個を左右に入れてお仕舞い。(簡単、簡単)
ジッポー社のマニュアルでは『S字を描くように入れる』と説明がありますが、これは近代の『ワイヤード・ウィック』では無理。チムニー側からウィックを引き抜こうにも大変です。
勿論、芯を切る時は『全部バラす』と言う方はそれでOKかと思います。
私の方法の欠点は、ロープの量が多いのでドンドン切っていくとコットン量が足りなくなる事です。途中でコットン・ボールを2個ぐらい足すようです。(~_~;)
利点は、『ウィックの手入れが楽だ』ぐらいですかね。それから、とにかく安い。
これでインナーの中は全て純正の『コットン』です。
『レーヨン』と『コットン』では『含水量(水分を含む量)』が違うんでしょうか、レーヨンよりもオイルがたくさん入ります。かなり押し込んで入れるせいもあるかも知れませんが、そんな気がします。実際、含水量は違うんでしょうかね?
今回もオイルは(頂き物の)ナフサ。(^.^)v
ブスデイラレルさん、有難うございます。
(なお画像のジッポーは、前回の46年ソリッド・ニッケル・『Fitz・John』)
さて、ヒンジ・ピンの交換も、コットンの交換も終りました。
今回の悩みは、『バレルが(表からも)減っていた事』。バレルの強度が足りません。
調整にも無理出来なかったですね。
ヒンジ・ピン交換のキズ跡に心が痛みますがね。
ピンの断面。ヒンジの磨耗に合わせて『面取り』しました。
ヒンジは僅かに緩めです。(バレル強度が心配だったので。)この辺が限界かと思います。
通常使用にはまったく問題は無いです。
『メッキのハゲも景色なり。』と言った方がおられますが、
こうして観ると、まったくその通りでのジッポーですね。
ジッポー
Zippo
投稿者: ragb.
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2009/6/18
「ソリッド・ニッケル・John」
ragb.工房
46年前半、ソリッド・ニッケルシルバー
鉄ヒンジ、センターロング3バレル。
インナーは、ソリッドのニッケル、打ち抜きっぱなしカム、14ホール、
水平歯。
現在のオーナーは千葉県在住の『ブスデイラレル』さん。
なんともスゴイ名前。
ご本人にはワルイが、随分変わったハンドル・ネームだと思います。
おそらく、ジッポー社の創設者、『George G. Blaisdell』さんをパロディーでもじったのではないかと勝手に推測しましたが、どうでしょうか?
今回は、調整として2台お預かりしましたが、今回はその1台目。
どちらもヒンジピンの交換と、ヒンジの調整です。まずは、ソリッド・ニッケルの調整レポートです。
(もう1台はこちら
48年『CASITE』
)
イニシャル彫刻がとにかくカッコいい。
このジッポーの最初のオーナーが当時の『名入れサービス』を利用したのかと思いますが、良く見るとペイントが僅かに残っていました。当時の名入れサービスはペイントまで入れてくれたかどうかは分りません。かと言って工場ライン品にも見えません。なんでしょう。
色は『ダーク・ブルー』にも見えますし、ひょっとして『ダーク・グリーン』かも知れないです。これもよくわかりません。
裏面。
表面の画像でも判りますが、バレル側が少し持ち上がっています。バレルの変形でもこうなりますが、ヒンジ・ピンを太くし過ぎてもこうなります。このままでも使えますが、気になりますね。
なるほど、ヒンジのゆがみは見ただけでわかりますね。
ヒンジ・ピンがこれまたすごい。はみ出してますねぇ(~_~;)
『以前のオーナーはヒンジ・ピンは交換したようですが、バレルの調整はしなかったようです。』(ブスデイラレルさん談。)
インナーを抜くとこれぐらいゆがんでいます。(~_~;)
リッドのゆがみがひどく、リッドを閉めるときインナーに当るので使っていなかったそうです。なんとも勿体無い話です。
インナーの刻印。
水平歯。
46年水平歯によくある『縦スジ』があります。
『レッド・フリント』が入っていますね。(Ronsonに見えます。Ronsonかな?)
今回は『目立て』無し。今の所調子はいいようです。
ボトム内部とチムニー内部。
カム・ピンは少し右側が持ち上がっているようですね。これぐらいは仕方ないですかね。
インナー内部とボトム・スタンプ。
インナー内部には『1枚コットン』がドカンと入っていました。
オールド・ウィックもまだ使えそう。
パッドはタバコフィルター型。これが入っていると得したようで嬉しいですね。(^.^)v
ヒンジ・ピンが飛出ています。すごいですねぇ〜。
面白いので、『このまま使う』というのも有りそうですが、いかにも太すぎます。今回は交換しちゃいます。
(センターロングの3バレル。メッキも残っていますね。)
リッドの『ゆがみ』
バレルが曲がってしまった場合、このようにリッドの『ゆがみ』は片側のみに出ますね。ヒンジ・ピンの磨耗などでは、ゆがみは左右に(均等に)出る傾向にあります。
ピンを抜いた後のバレル。センター・バレルがかなりゆがんでいます。
抜いたピン。
それほど減ってはいませんでした。
『抜け止め』のつもりか、両端をつぶしていたので抜く時も結構大変でした。こういうピンは、私は以前にも見たことが有ります。
これです。
なんとなく似ています。(^o^)
私は、通常お預かりしたジッポーの古いピンはオーナーさんにお返ししますので、これは私のジッポーのどれかに入っていたものでしょうね。
なんとも豪快でアバウトなピンですが、ジッポーって本来はこういうもんじゃないでしょうかね。これでいいのかも知れませんね。
旧ピンは1.85φぐらい有ります。
これは46年の鉄ヒンジには(いかにも)太すぎます。
さて、1.75φの真鍮クギを入れてバレルの『傾き』を見ます。右側に傾いています。
調製用『改造ペンチ』で締めながら傾きを調整します。
今回は1.75φで締めます。新規のピンもこの太さで行きます。
このように、バレルの調整は『バレルに直接力を加えて』やるのが肝心です。必ずピンを入れたままやります。バレルをつぶしてしまったらその瞬間に『オシャカ』です。(>_<)
直ったかな?
サイド・バレルは1.55φで締めます。
ここでは水平も見ます。
バレルの傾きをザッと調整したら、今度は『勘合』の調整です。
リッドの『前面』をピッタリ合わせてズレないようにテープで固定します。出来上がったときこうなって欲しい形をここで決めます。
バレルの合わせ具合(勘合)を確認します。
まぁ、大体OKのようですが、左のサイド・バレルが少し持ち上がっています。
センターも少し飛び出しています。
テープを張ったままでは調整出来ません。ここではズレ具合を確認するだけ。
微調整をしてこの形になりました。
この状態でトコトン調整しようとしてもムダです。最終的にはピンを入れた状態で調整しますので『一応合ったかな』程度でOKでしょう。
一応、バレル幅を計測。ピンの長さの目安にします。9.5mmぐらいですね。
1.55φの真鍮クギをこのように切断します。
右から、クギの『頭』、2番目はピンになる部分、その次は捨てます。その次の短い部分は『ガイド』。左端のクギの先端は捨てます。
小型の万力に挟み、ヤスリで大体の長さまで削ります。
最終的な長さの決定は現物合わせ。
長さがほぼ決定したら、研石で断面の研磨。
(ここまでやるかどうかは個人差が出ますね。)
すごいのが出て来ました。
この道具で、ほんの少しピンに『R(アール)』をつけます。これは曲げ過ぎるとかえって『デメリット』にもなりますので、慎重に慎重に。
どことなく『エイリアン』に似ている。
小さい弾丸のようなものは、先ほどの『クギの先ッポ』。
サイド・バレルは1.55φで締めましたので、1.75φのピンはそのままでは通りません。このガイドを先に通して、正規のヒンジ・ピンで押し込むようにします。
押し込んでいくと最終的に反対側からポロリと抜けます。
ガイドを押し込んだ状態。
これでサイド・バレルも一時的に1.75φが通ります。
新規のピンを押し込みます。(緊張します。)
入れ換え完了。しかし、ゆがんでいますね。
どうせこうなりますから。(余裕、余裕。)
再度、ゆがみを修正します。
ここが最終調整となります。
はい。一発で決まりました。(^.^)v
一直線。(ですかね?)
ボトムとリッドのラインもいいですね。(^.^)v
如何でしょうか。
ご本人の了解を得て彫刻のペイントも補修しました。どうせ使うならコッチのほうがいいですね。
色の配合は、グリーンにほんの少しブルーを混ぜました。
この個体に関しては、ヒンジ・ピンの交換とペイント補修のみでした。
1時間足らずの作業で見事復活。バリバリ使って下さい。(^o^)y-。O0O
ジッポー
Zippo
投稿者: ragb.
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