二等の客室は通路を挟んで、両側に布団がずらりと隙間なく横一列に敷かれている。
ただそれだけ。
しかも、布団の幅は下手な寝返りが打てないほど狭い。
窮屈なのが嫌な僕は部屋を出て船内をぶらぶらすることにした。
レストランの横に小さなゲーセンがあったので、とりあえず時間を潰しに入った。
だけど、すぐ飽きて今度はデッキに出た。
九月中旬とはいえ外は風が強く肌寒かった。
ベンチに腰を落として、たばこに火をつけて考えた。
どうして人生はこんなにつまらないのか。
何のために生きているのか。
なんだか生きながらにして死んでいるような気分。
そして、またゲーセンに。
そして、またデッキに。
そうこうしていると、疲れてきたのでしぶしぶ客室に戻った。
もうそこにいるほとんどのヒトが寝ていた。
僕も寝ることにした。
だんだんと意識が遠のいていくところで、通路を挟んで真向かいに寝ていたよぼよぼの老人が起て靴を履きはじめたわかった。
僕は気にしなかった。
ドンッ。
半分だけ目を開けた。
すると、老人は右腕を枕にするようにしてこっちを向いて倒れていた。
大きな目でこっちを見ていた。
僕は目を閉じた。
一分くらいしてもう一度目を開けると、老人はさっきと同じ状態でこっちを見ていた。
状況を把握するのに時間がかかった。
「大丈夫ですか?」と声をかけると、彼はかすれた声で「手を貸してください」と言った。
自分で起き上がることができなかったようだ。
周りで寝ていた人も起きて不安な顔つきで見ていた。
その後、老人は便所に行くのをやめたのか、靴を脱ぎ毛布もかぶらず横になった。
僕はすっかり目が覚めてしまった。
なんだか変な気分になった。
そして、その老人のことを考えた。
この老人も戦争のときは若くたくましい青年だったのか。
その青年が、今では転んでも自分で立つことすらできない。
時間は人間をこれほど残酷に変えてしまった。
この老人の生きがいは何か。
自分が夢中になれることはあるのか。
奥さんはいるか。
子供は?孫は?
仕事は何をやっていたのか。
今は、年金生活?
いろいろ考えていると外は明るくなっていた。
係員が起こしに来ると、客は次々に目を覚まし自分の布団をたたみ、身支度を始めた。
しかし、その老人は寝たままだった。
一番端っこにいたヒトの良さそうな中年の男が心配して、声をかけるとようやく重そうな身体を起こし上下共に下着のまま便所に立っていった。
その中年の男は老人が部屋を出ると、親切にも老人の布団をたたもうとした。
が、毛布を手に取ると布団には老人のお漏らしのあとがあり、男は老人に気を使ったのか、たたむのをやめた。
僕はまた変な気分になった。
そして午前6時。
松山に到着。

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