「受験数学のテクニック50 数学VC(エール出版)」
徒然レビュー
教科書に載っていない解法・発展事項をコンパクトに集めた本
「受験数学のテクニック50」数学VC(エール出版)
数学V・C内容から、教科書学習時に差がつきやすい事項、教科書に載っていない解法を50の「テクニック」として扱った演習書。表紙カバーのうたい文句「超役に立つ」「スーパー解法」は少々鼻につくが、扱われている内容は、中級以上の総合参考書であれば例題としても扱っているものが約半分、残りは上級の参考書では発展的な内容としてよく扱われているもの。
問題の解法の説明はそれなりにあるが、解答自体は多少そっけなく、使った公式等の注釈が欲しい人には向かない。また、各テクニックの練習ができる類題がついておらず、各問題が単発の印象を受けるなど、演習書としての完成度はいまひとつ。入試までの時期が迫った受験生など、短期間で一発逆転を狙いたいが、分厚い参考書を使い切る自信がない人に限定すれば、薦められないこともない。
著者は張ヶ谷守晃(はりがや・もりあき)先生。珍しいお名前なので、数学T・AとU・Bの解法テクニック集も同じ出版社から出されていることを知っていれば「ああ、V・C版も出たんだな」と思ったはず。既刊書には、確かにもう少し目新しい事項(テクニック)も見られたので、そのような内容を期待する人もいるかも知れないが、数学V・Cという科目の特性もあり、出版社が望むような内容の本に仕上げるのは難しかった様子。
【余談】
本自体の内容とはまったく関係ないが、個人的に気になったのが巻末。あとがき・著者プロフィールが書かれた見開きがあり、その次に張ヶ谷先生の「シリーズ」の既刊といっていい数学1・A、2・B内容の本の紹介があったのだが、問題はその次のページ。エール出版社自身の宣伝ページになっているのだが、そこに大きく書かれていたのが次の文句。
***「素人のあなたも本を書いてみませんか」
・・・このタイミング、一体何なんだろう。ここまで読んで、「なんだ、たいしたことない本だな。これなら自分にも書けそうだ」と思う者の存在をまるで予見していたかのよう。つまり、この出版社は、完成度の高い本を作るということをあえて目指していないということなのか。考えてみれば、それもひとつの戦略かも知れない。玉石混淆というか、初めからそういった眼で見られるデメリットを差し引いても、十分なメリットがあってそうしているというだけの話である。
ただし、受験生の皆さんには、そういった事情はどうでも良い。この出版社の本に関しては、玉石混淆ということをまずは認識して、一発逆転を狙いたい人が、もし万が一自分にピッタリ合った本を見つけられたら儲けものぐらいの意識で手にとってほしい。