「ドラゴン桜式数学力ドリル 数学T・A(講談社)」
徒然レビュー
対象レベルを考えると全体的に無理が目立つ。内容・配列にも若干問題あり
「ドラゴン桜式数学力ドリル」数学T・A/U・B/V・C(講談社)
「ドラゴン桜」のキャラクターを配し、数学力ドリルと銘打った本。同じシリーズに小学・中学内容のもの、大学数学入門編まで揃っている。12年2月には「新課程版 数学T・A」として、12年度から施行される新課程に対応した、数学T「データの分析」、数学A「整数」の内容を含むものが発売された。収録問題は、教科書の練習レベルの中ではやや難しめのものが中心。
旧(現)課程版が発売された05年は原作(?)マンガとドラマの全盛期で、マンガのファンブックについに学参まで登場したかとビックリしたものだが、その新課程版が何故今さら?という印象で、どうしても見てしまう。
見ていて一番気になったのは、この本は基礎の反復を目的としているのか、網羅を目的としているのかがはっきりしなかったこと。「ドリル」なのだし、基本事項の導入部分はないわけだから、網羅性は多少犠牲にしても問題にスムーズに取り組めるような選題と配列にし、演習量も十分にあった方が良かったと思う。各節は導入を兼ねた例示(であろう)問題とその解説、そして「ホップ」「ステップ」「ジャンプ」の3段階の演習で構成されているのだが、導入部分のレベルはもう少し落として欲しい。
さらには、些細を長々と並べ立てて申し訳ないが、内容の配列に関しても随所に「?」がつく。数学の教材では通常「2次不等式」→「2次関数」と続くことはないのだが(しかも2次不等式の解が「すべての実数」となる場合なども扱っていて、そこでは2次関数のグラフとx軸との位置関係から説明しているという・・・)、まあこれは、この本を「教科書を一度終えた人向け」の純粋な計算ドリルとして考え、作り手の意図として「不等式」の内容をまとめたったのだろうな、ということで百歩譲って目をつぶろう。けれど、本来数学U・B内容であるはずの「解と係数の関係」が、発展内容ですよという断りもなしにT・Aの本で(しかもこんなにページ数の少ない中で)扱われているのはどういうことだろう。
監修の牛瀧文宏先生は、何を隠そう筆者が中3のときに数学を習った恩師であり、現在は啓林館の検定教科書の著者でもあらせられるはずだが、この逸脱を見逃されたのだろうか。それとも、作り手はまったく別の業者か何かで、先生にきちんと見てもらっていないのだろうか。何も出来上がった本を見なくても、プロット(各ページにどんな内容を載せるか、項目を列挙したもの)だけ見てもらえば、別に大学教授でなくても容易に気づく不備のはずだが、これも百歩譲って名前を借りただけとしても、であればなおさら大学の先生に恥をかかせないように細心の注意を払うべきである。こういった部分に関して、旧(現)課程版のときから「危ないなあ」と思っていて、手に取った瞬間から何となく「寒気」がしたのだが、予感が当たってしまって悲しい限り。
【リンク】
○新課程版T・A
○旧(現)課程版T・A/U・B/V・C
○参考:算数力ドリル/他
※05年10月30日執筆分に新刊に関する内容を加筆し再構成