上級者向け参考書でありながら導入を重視した構成。余裕のある人の先取り向けにも有効活用したい
「本質の研究」(旺文社)
【評価】※1〜10の10点満点
総合:9
基本事項の先取り学習:9
教科書確認と重要問題に触れる(速習):8
単に問題集として使う:4
国語力の弱い生徒さんが独学で使う:2
あまり知られていない本だが、筆者は高校数学における「参考書」のありかたに一石を投じてくれた良書と思っており、学習アドバイスの際も優先して薦めるようにしている。それは、このシリーズの存在を広く認知してもらうことはもちろん、筆者も気づかなかった新たな用途が発掘されることへの期待も含めてである。
対象生徒層としては上級者を意識しているが、瑣末な練習問題の網羅に走らず、むしろ基本事項の導入をしっかりすることに重点を置いている。「講義調=初学者向け」ではないことを示してくれている好例でもあり、この導入を「サプライズ」と表現した生徒さんもいる。やる気があれば、この部分だけをどんどん自分で先取りしていき、先に教科書の本文レベルだけでも定着させてはどうか。同タイプの本として「大学への数学」(研文書院)、いわゆる「黒大数」があるが、この「本質の研究」の方が導入部分がこなれていて読みやすく、例題の選題等も含めて実用度が高い。また、周辺の話題にも適宜触れられていて、数学が好きな生徒さんは読み物として楽しむこともできるはず。
ただネックとなるのが、こういった形式の参考書に生徒さん自身が慣れていないこと。例題の下に類題がついていないところが多いのも気になる。導入部分に「問」もあるし、扱いとして単に「触れて欲しいから入れてある」という位置づけの例題もあるだろうから敢えて類題を付ける必要がない場面もあるだろう。それは理解できるが、類題を解かないと不安に感じるであろう問題でも類題がついていないものがかなりあるのだ。どのみち、演習量はどこかで補わなければなるまい。もしくは、章末問題の「Aランク」だけでもかまわないので、本文や例題との対応関係を何らかのかたちで示すなどして、手が出やすいように工夫するなどの方策も考えられる。誰か「本質の研究の研究」なんてサイトを作ってくれないだろうかと、よく思う。
【基礎知識】
上級者向けだが、基本事項の導入に重点を置いた総合参考書。「本質〜」のシリーズの中では最も上のレベルにあたり、対象生徒層は「青チャート」などと同じあたりだが、例題数を絞り、重要な問題を重点的に解説してある。章末問題は「Aランク」と「Bランク」に分かれていて、前者は入試基礎〜センターレベルの確認、後者は入試標準レベルを意識している。
基本事項の導入はとにかく「読ませる」構成。全体的にやや敷居が高い印象は否めないが、まるで学校の授業の導入のように解説してくれており、合間合間の「問」で確認ができるようになっている。関数とはそもそも何なのか、なぜ0の階乗は1なのか(1と定義するのか)といった関連事項も詳しい。また、サラッと解説してしまうと疑問が残りやすいであろうポイントを「質問箱」というコーナーでフォローしているのも見逃せない(全体的に「質問」の内容はやや高等だが)。
例題のページに類題のついていないものが多く、章末問題の「Aランク」まで手を出してはじめて「青チャート」の重要例題と同程度のレベルの問題に触れられる。教科書レベルを定着させた人は例題とAランクを中心に、逆に基礎を固めたい人は「問」と例題だけを繰り返し解くというふうに使い分けたい。
【リンク】
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※リンク先の内容は当方で確認済み。旧課程版「本質がつかめる」等とお間違えにならないよう十分ご注意ください!