「志田晶のベクトルが面白いほどわかる本(中経出版)」
徒然レビュー
ベクトル分野を丁寧に解説。前学年の復習を含めたアプローチが魅力
「志田晶のベクトルが面白いほどわかる本」(中経出版)
導入書の用途にも堪えながら、網羅性・到達点も高い講義調シリーズの1冊。同シリーズの坂田アキラ先生の著書と比べると紙面構成は若干おとなしめだが、解説は詳しく「かゆい所に手が届く」構成といえる。
この「ベクトル」も、類書「ホントはやさしいセンター・中堅私大のベクトル」(文英堂)などにならい、初学者向けには数学A「平面図形」の内容の復習から扱っているが、後半では「外積」など予備校でも上位クラスでしか言わないようなテーマにも触れさせることで「ホントはやさしい〜」との差別化も図っている。坂田アキラシリーズのノリを期待するなら、もう少し黄チャートレベルの例題が欲しいところだが、そこは易しめの網羅系を1冊持っておいたうえでこの本を使うとか、計算練習を他書で補うとか工夫して欲しい。
この本に限らず志田晶先生の著書を見ていると、問題に対するアプローチが「前学年の内容を補うところ」「解法・答案例を複数示すところ」「教科書学習時に触れにくいテーマ・発展事項を扱うところ」の3つに大きく分かれていることに気づく。苦手意識を持つ生徒さんのつまずきどころがどこなのかを、よく分析して執筆しようとする姿勢がうかがえる。とくに同一直線上にある条件から式を作って係数比較するところなど、習う場面や指導者のクセによって答案の書き方に差が出やすい箇所を手厚くフォローしており好感が持てる。逆に、数学Aの平面図形の知識を使うと簡単に解けることを強調しているところでは、それに頼らない解法も一応示して欲しかった気がするが。
さらに、いつも言うことだが、講義調の宿命ともいえる「1ページごとの情報量が少なく、ダラダラと『読まされる』構成に陥りやすい」という欠点は、巻末の問題一覧や「Appendix」(坂田アキラ流に言えば「ナイスフォロー」?)で補っているが、このような編集者側の工夫もノウハウとして定着してきた感がある。今回の「ベクトル」に関しては、以前に山本俊郎先生の著書2冊が発売されていたが先生との契約が切れたため著者が交代して今回が実質的なリニューアル版となったという経緯もあるのだが、志田晶シリーズを含め、高校数学全分野網羅も見えてきた当シリーズの今後に期待したい。