「気鋭の講師 沖田(/原田)の数学をはじめからていねいに(東進ブックス)」
改めて定番書レビュー
初学者の速習向け定番シリーズの改訂版。選択肢に入れたい
「沖田の数学T・Aをはじめからていねいに」方程式と不等式・2次関数編/三角比・平面図形編
「原田の数学U・Bをはじめからていねいに」式と証明・複素数と方程式編
(東進ブックス)
【評価】※1〜10の10段階
総合:7
とにかく初歩から丁寧に解説した本が欲しい:8
「手書き」風の文字がイヤな人:2
全体としてシンプルかつ丁寧で、昨今の受験勉強初心者の実情をよくとらえた選題・解説の導入書。だらだらと文章だけが続く「読まされる」部分はだいぶ少なくなったように思うが、この手の本の宿命であるから目的を考えて選びたい。
著者いわく「普通の」平方完成に比べミスが少なくなるという方法を「沖田式」と呼ぶなど少々鼻につく箇所もあるが、多くの生徒さんにとって気になる平面図形の分野では、センター試験で三角比の問題に絡みやすい部分を中心に強調している。初学者向けでは選択肢に入れて欲しい本である。使い方としては、とりあえず通読して大雑把に理解し、さっさと他書に移って演習をするだけでも十分だが、どうせなら使い手側の工夫も望まれる。本当に授業を受けるときのようにノートをとりながら読んでいくのが理想だろう。
個人的に目をひかれたのは、解答・解説の書き方。各講(節)は導入のあと「例題」、さらに類題を扱った「練習問題」と続くのだが、例題の解答は講義調の解説の間に数式などが挟まるスタイルであるのに対し、練習問題の解答は通常の参考書に近い形式になっている(着眼部分を問題文の直後にまとめ、解答は普通の答案形式である)。このように、「解説答」と「答案見本」が1冊の本の中に共存しており、しかもそれらがごっちゃにならずしっかり分けられている構成には好感が持てる。さらに細かいことだが、この手の本はどうしても解答・解説が複数ページにまたがりやすく、あとで見直すときに探しにくいという欠点もあったのだが、この本の例題の解説には小問ごとに「例題○○(△)を解く!」のような小見出しがついており、その点も改善していこうという編集側の姿勢が見られる。
あと、当シリーズの特徴として、ところどころに著者の直筆とおぼしき数式等が書かれて強調されるスタイルがあるが、特に「原田〜」に関して、割り算筆算の横棒が右下がりになるなど汚さが気になった(著者プロフィールの写真に写っている小さな黒板にはマシな文字が書かれているので、余計に「どうしたのかな?」と思ってしまう)。アイキャッチとしての機能性は認めるが、そこに「手書き文字」をもってくる必然性については再考の余地ありか。
【基礎知識】
旧課程時代、馬場敬之先生他が執筆していた「はじめからていねいに」、略して「はじてい」シリーズの新課程対応版。著者は「気鋭の講師」として売り出し中(?)の沖田一希・原田知也両先生で、旧「はじてい」の流れをくみながら、高校数学の各分野をそれぞれ初歩からかみくだいて解説しており、短期間で、かつ読むだけでも基礎知識をひととおり頭に入れることができる。
いわゆる「数学アレルギー」をなくすことに主眼をおいているため、解法の網羅性、見開きの情報量の多さはどうしても犠牲になる。
【補足】
沖田一希先生の本は「はじてい」シリーズとしては2冊。以前に同じテイスト・ニュアンスの「気鋭の講師 沖田のはじめての2次関数(/場合の数・確率)」(東進ブックス)の2冊と合わせて数学T・Aの主要分野が網羅されている。
「場合の数・確率」でも、すべての場合を具体的に書き出させるなどの手法を用いて、この分野の公式を実際のイメージで理解させることに心をくだくなど目を引くところが多い。学校や予備校でこの分野の授業を急いで終えられてしまったなどの理由で基礎が身についているか危ういなど、初学者から脱し切れていない人におすすめ。各章の練習問題の問題文一覧がないなど、機能性の面で改良の余地もあった。
※08年5月20日、07年3月31日、03年1月13日他の「徒然レビュー」執筆分をまとめて再構成しています。