「高校数学 探求と演習 上(Z会出版)」
徒然レビュー
歴史や発展事項なども紹介されているが、実用性には疑問符
「高校数学 探求と演習」上(Z会出版)
基礎〜標準を中心に、一部やや難レベルの入試問題を集め、同時に数学の歴史や発展事項なども幅広く扱った演習書。とくに難関国公立大の志望者、中高一貫校の中学生を意識した内容で、教科書〜入試基礎レベルはマスターしていることが前提。今回の「上」は数学T・A分野が中心とのことだが、巻末の「演習問題」では、現課程の数学Uに入っている内容(複素数・領域など)も一部入っていて、むしろ筆者自身が高校生・受験生の頃(1990年前後)の高1内容に近い。
著者はZ会東大マスターコース講師の木村光一先生。先生は「数学V・C標準問題精講」(旺文社)の著者でもあるが、今回は「探究と演習」という名前どおり、解法の網羅というよりは数学に興味を持たせることに重点を置いている。また、現行課程にとらわれず、意欲ある高校生に理解できそうな内容は積極的に紹介しているので、未習の内容も参考書などで予習しながらついていくようにしよう。学力的・時間的に余裕があり、かつ既存の参考書・演習書に飽き足らない生徒さんは、気に入ったら使うとよい。言わば「ひまつぶし」であるが、低学年のうちにこういった本で貯金しておいた知識が入試では案外役に立ったりするので、あなどってはいけない。
難はやはり敷居の高さ・・・というより、著者が想定している予備知識のレベルからしてかなり「ぶっとんで」いること。「果たして誰が使う本なんだ?」という疑問が最後まで残ってしまう。一部の中高一貫校などで、学校ですでに現課程の教科書内容をこえた授業を受けており、かつそれを完璧に自分のものにしていてもどうか?というレベルだと思ってしまう。ただ解くのが面倒くさいだけみたいな問題を排していることが、ほぼ唯一の救いといっていい。
もっとも、著者の立場、そして主に見ている生徒層を考えれば、こういう内容にならざるを得ないだろうなと想像がつく。数学が得意で意識も高い生徒さんが集まる塾で、学校のフォローもしつつ、生徒さんを飽きさせずに高3まで引っ張っていこうとしたら、それこそ講師の知識を総動員しなくてはならないだろうからだ。さらにその内容を1冊の本にまとめようというのだから、一杯いっぱい(?)になって当然ではないだろうか。