「講義調参考書」とは、問題の解法や基本事項を話し言葉で解説した本で、いわゆる細野真宏シリーズ(小学館:旧版は中経出版)の出現が認知のきっかけとなった。現在は、細野真宏シリーズと坂田アキラ・志田晶・佐々木隆弘他の先生方などの著者がそろう中経出版のシリーズとが人気を2分しているが、他にも山本敏郎先生など予備校の講師の書いた本を中心に、初学者向けから上級者向けまでさまざまなラインナップがある。
講義調参考書にも、実はいろいろな種類がある。高校数学に慣れるために最初に読む「導入書」から、総合参考書だけでは理解しにくい部分に補助的に使う「オプション本」、さらには啓蒙書のようなものまでといった具合にだ。が、講義調参考書といえばそのほとんどが導入書であることから、ここでは大きく「導入書・講義調参考書」として扱うことにした。
共通してみられる特徴は、何といっても丁寧さである。人によって意見は分かれるが、このタイプの本は、一部を除き、なるべく読み手に疑問をいだかせないようにすることを目指す傾向があり、式変形の意味など、分かりにくそうなところに言葉を書き添えたり、著者(講師)が必要と感じたら多少冗長になっても基本事項にいちいち戻って説明し直したりもする。そこで、講義調参考書を選ぶ際には主に
A)著者の「語り口」が好きになれるかどうか
B)今までわからなかった箇所に関する部分を読んでみて、わかるようになったか
の2つに注意していきたいところである。
・・・とここまで書いただけでは、講義調といえばいいことばかりのような印象を与えてしまうが、もちろん欠点もある。大きく分けて
1)1問の例題の解説に見開き1つ以上を費やす本も多く、収録問題数がどうしても少なくなる
2)著者のカラーが出すぎる傾向が強く、読む側によって好みが分かれる
3)ひとりの著者が書ける量には限界があるので、シリーズが揃うまでに時間がかかる
などである。1)はある意味講義調の宿命だから仕方ないのだが、2)と3)に関しては改善の余地がある。著者はたいていの場合予備校の名物先生だから、本づくりは多くの場合著者まかせになりがちだが、もう少し著者と編集者が相互にバランスをとるべきである。本当に良い本は、講師の言葉をただ書き起こすだけでなく、紙面構成を工夫し、見た目にもわかりやすくしている。4)に関しては、解決策は複数の著者で分業することしかないわけだが、多くは著者の名前で売れるものでもあるし、そうでなくても著者間で統一感をもたせるのはかなり難しいようで、今後の課題にもなっていると思う。さらには
4)紙面がどうしても文字ばかりになってしまうので、とくに復習の際、読みたい内容をあとで探すのに苦労する
という、これも講義調の宿命といえる欠点がある。このおかげで、興味深い内容の本でも、1回読んでそれっきりになってしまうことが多いわけだが、これに関しては使う側がもっと意識を高めるべきであると思う。演習は他の本でやることにして、それまでの繋ぎと割り切ってもよいが、使いこみたいなら、本当に授業を受けるように
*** ノートをとりながら読む
ことを心がけたい。そうしておいて、復習の際にノートを手がかりにするのである。
こう考えていくと、講義調といえど使ううえでの基本はやはり自分の頭を使い、自分の手を動かすことである。何かの「きっかけ」になればと思い手を伸ばすことが多い本だが、その内容を最終的に自分のものに出来るかどうかは、やはり使い手の側に委ねられるのだ。