「なっとくの高校数学 図形編(日本評論社)」
徒然レビュー
図形問題に対する見方を変え、苦手意識を払拭したい人にすすめたい読み物
「なっとくの高校数学 図形編」(日本評論社)
幾何(図形)を学び始めの中高生、ひととおり勉強したが苦手に感じている高校生などを対象に、著者なりの切り口から図形問題に対する見方を変えるきっかけを与えようとする、率直に言えば「ためになる読み物」である。一部「ベクトル」「三角関数」に触れているので、すべて理解しようとすれば教科書の該当分野をすべて終えていることが条件となるが、各章の内容はほぼ独立しているので、全部を理解しようとしなければ高1から読める。
筆者が特に面白いと感じたのは最初の2つの章。教科書に載っている基本事項の導入には、その基本事項の使い方よりはるかに難解なもの、その場限りの証明になってしまっていて応用範囲の狭いものがあり、それが学習内容全体の歯切れを悪くしていることを指摘し、著者なりの別証を与えている。さすがにすべての基本事項に鮮やかな導入を与えるまでには及んでいないが、シンプルな基本事項の導入はシンプルであるべきだ、本質を突いた応用範囲の広い導入をするべきだという著者の考えには賛成。逆に、4章の余弦定理の導入では証明に場合分けが必要であることと、生徒さん自信でそれを練習する機会を与えるべきである旨も強調している。
難を言えば、1600円という価格のわりに内容がいまひとつ薄いことがあげられる。著者の伝えたいことは十分伝わってくるが、もう少し様々な事項や問題を通じて多角的に基本事項を深めることができたら、もっとガラッと図形分野に対する見方が変わるのではないか。あと、難しい応用問題の解法を(鮮やかにもしくは丁寧に)解説することによって「問題が解ける面白さを味わわせる」ことにメインを置いた本ではないので注意。同じ安田先生の著書で「入試数学 伝説の良問100」(講談社ブルーバックス)という本があるが、毛色はまったくといっていほど違う。
投稿者: 水野 健太郎(理事会)
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