「合格る計算 数学T・A・U・B/V・C(文英堂)」
徒然レビュー
計算を通じて受験数学全般にわたるコツが幅広く身につく、読ませる演習書
「合格る計算」数学T・A・U・B/V・C(文英堂)
タイトルの「合格る」は「うかる」と読む。一応の切り口は「計算」であるが、単なるドリル的内容に終わらず、計算練習を通じて各分野の概要、教科書学習時に見過ごされやすいポイントなども復習できるようになっているほか、数学の得意な受験生が無意識のうちに心がけているであろう内容にも触れられる。問題集というより演習書と呼ぶ方がスッキリするだろう。
T・A・U・Bで1冊、V・Cでさらに同じぐらいの分量で1冊というシリーズ構成で、その中で各分野をバランスよく網羅。教科書では公式として扱われていないが役に立つ「準公式」的なもの、ちょっとした公式の使い分け方や注意点なども盛りだくさん。「いろいろな不等式」「正射影ベクトル」など、限られた人向けだったり相応の予備知識が求められたりするテーマの見開きには、見出しに「重」「理系」などのマークがついているので、基礎を固めたい人はこの部分はとばして学習できるようになっている。逆に、1歩進んだ事項も含めて理解し、計算力につなげたいという人なら、これらのテーマだけに絞って進めていってもかまわない。
細かいところでは、途中式を書かずに暗算で済ませて欲しい(と著者が考えている)箇所に関しては薄い色の文字や消しゴムのマークがつけてあったりといったフォローが大変充実している。また、そもそもこの本をどう使えばよいかに関するQ&A等が4ページにもわたって書かれているのに加え、「注意」として例えば
$「筆者自身、なんのマニュアルももってませんし、しょっちゅう失敗しては
$ やり直してます。それでたいして問題ないんですよ」
といった著者(講師)の本音のような内容も書かれており、好感を覚える。こういった箇所もしっかり読み、講師に親近感のようなものを持ってくれたら、部分部分ではけっこう厳しいことも言っているこの本の学習も、必要以上のストレスを感じずに進められるのではないか。「できないから」といって、ただ単に同じような内容を繰り返すだけの学習(?)に終始している生徒さんはもちろん、日々そういった指導に陥ってしまっている指導者の皆さんにも是非見て欲しいと思う。
このように、非常に盛りだくさんでかつ親切な内容の本ではあるのだが、それらを非常に狭い紙面に詰め込まなくてはならないうえ、かつこの本には1つの見開きで1つのテーマという「縛り」もあるため、箇所によっては非常にゴチャゴチャしているのが残念。途中式を省略する、慣れてきたら書かずに済ませるといったところが詳しいので、そのノリでいけば「じゃあ、その計算式を紙の上にどうレイアウトして書くのか?」といった部分のフォローが出てきそうなものだが、本冊のスペースでは苦しかった様子。別冊解答の方は比較的すっきりしているので、練習の際にそちらを参照するようにしたい。
著者は河合塾の広瀬和之先生。これまで、計算に特化した問題集では「カルキュール」(駿台文庫)、「土曜日に差がつく 数学T・A・U・B計算力エクササイズ」(河合出版)、「基礎力徹底ドリル」(学研)等があったが、今回の「合格る〜」はこれらとは一線を画し、細かいテクニックを徹底的に文章化するというアプローチで新境地を開いたと言えるのではないか。