===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== 「徒然(つれづれ)レビュー2009」数学参考書レビュー投稿分再録 ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ***09/04/10 「難関大突破 精選75問題集」数学TA・UB(学研) # 基礎の確認から発展事項・こまかな注意点まで注釈が充実 難関大志望者が本格的に過去問演習に取り組む前段階に使うことを念頭において書かれ た演習書。豊富な別解に加え、模範解答のあとに、基本事項の確認から関連・発展事項 まで幅広い内容の注釈もつく。収録問題は基礎問題25+実戦問題50の計75題で、 1問に時間をかけてじっくり取り組みたい人(または用途・時期)向け。 まずは「基礎問題」として代表的な25題を扱っていて、その解説・補足では基本事項 の整理をしてくれている箇所が目につく(分かっている内容なら読み飛ばすこと)。 「実戦問題」は東大・京大の問題からの収録が多いが、突飛に見える問題は案外少な く、問題文の状況を整理してコツコツ調べ上げさせるタイプが中心に思える。類書とし ては「極選」シリーズ(旺文社)などがあげられるが、比べると本書「精選〜」の方が 解くのに手間を要する問題が多いので、できれば余裕のある時期に(もしくは他の学習 を効率よく済ませたうえで)使うようにしたい。 著者は駿台予備学校の高橋昇先生。全体にサラッとした書き方をしているので人によっ てはそっけない印象を受けるかも知れないが、様々な角度から復習のヒントを与えてく れているので、特に本格的な過去問演習の前など、今までに使った本を含めて見直す きっかけと考えるべきであろう。 【余談】 手に取ると75題のわりに分厚く感じるが、それは本書の本文ページの紙1枚1枚が分 厚いから。最終ページに振られているページ数を見ると本冊243+別冊問題編19 ページであるが、参考までに本書より若干薄い「数学V・C標準問題精講」(旺文社) は325ページまである。 ***09/04/08 「数学T(/U/B)高速トレーニング」2次関数編/他(東進ブックス) # ピタッとはまれば理解が深まりそうな内容・構成の分野別問題集 分野別問題集。09年3月現在のラインナップは「2次関数」「対数」「数列」。人に よっては基礎の基礎からやり直した方がいいが、なかなかそれに適した本がない分野を うまく切り取ってきている。指数・対数をベッタリ扱わず、あえて対数をメインで扱う というのはひとつのアイデア。図形と方程式なら、前半部分をバッサリ省いた「軌 跡・領域」だけの本も、あっても良いかも。 難問はあまりないが、やけに初歩的な問題があると思えば、ただややこしいだけの問題 もあるといったように収録問題の難易度にもバラつきがあるし、直感的に穴埋めだけさ せる箇所があるかと思えば「線型性」などとかしこまった用語を使って説明する箇所も あったり、はたまた見開き一杯に問題文がズラズラ並んだりと、ターゲット層がいまひ とつはっきりしないうえ、学習者にこの本をどんなふうに使わせたいかという意図が見 えにくくなっているのが残念。 やはり、この本は著者である東進講師の大吉巧馬先生のような、パワーにあふれた指導 者について、「とやかく言う前に、本当に得意になりたかったら、まずはとにかく頑 張って、これぐらいの数をこなしてみよう!」とモチベーションを高めてもらってはじ めて使いこなせる(・・・というより、強引に使い切ってしまえる)本ではないだろう か。さもなくば、とにかく苦手な分野1つに絞り、実際に内容を確かめてから使いた い。 ただ、1つ弁護しておくと、この本や「チェック&リピート」(Z会出版)にところど ころ収録されているような、「ただややこしいだけの」問題も案外バカにはできない。 特に私大志望者で、首都圏や関西圏の有名校や医歯薬系を志望する人が最後の最後に頼 りにするのは、案外こういった本なのかも知れない。 ***09/04/10 「難関大突破 精選75問題集」数学TA・UB(学研) # 基礎の確認から発展事項・こまかな注意点まで注釈が充実 難関大志望者が本格的に過去問演習に取り組む前段階に使うことを念頭において書かれ た演習書。豊富な別解に加え、模範解答のあとに、基本事項の確認から関連・発展事項 まで幅広い内容の注釈もつく。収録問題は基礎問題25+実戦問題50の計75題で、 1問に時間をかけてじっくり取り組みたい人(または用途・時期)向け。 まずは「基礎問題」として代表的な25題を扱っていて、その解説・補足では基本事項 の整理をしてくれている箇所が目につく(分かっている内容なら読み飛ばすこと)。 「実戦問題」は東大・京大の問題からの収録が多いが、突飛に見える問題は案外少な く、問題文の状況を整理してコツコツ調べ上げさせるタイプが中心に思える。類書とし ては「極選」シリーズ(旺文社)などがあげられるが、比べると本書「精選〜」の方が 解くのに手間を要する問題が多いので、できれば余裕のある時期に(もしくは他の学習 を効率よく済ませたうえで)使うようにしたい。 著者は駿台予備学校の高橋昇先生。全体にサラッとした書き方をしているので人によっ てはそっけない印象を受けるかも知れないが、様々な角度から復習のヒントを与えてく れているので、特に本格的な過去問演習の前など、今までに使った本を含めて見直す きっかけと考えるべきであろう。 【余談】 手に取ると75題のわりに分厚く感じるが、それは本書の本文ページの紙1枚1枚が分 厚いから。最終ページに振られているページ数を見ると本冊243+別冊問題編19 ページであるが、参考までに本書より若干薄い「数学V・C標準問題精講」(旺文社) は325ページまである。 ***09/04/16 「国公立大学理系学部への数学」T・A・U・B/V・C(学研) # いわゆる「ヨコ割り」構成で、入試問題の解法の道筋がわかる 「最大・最小とその応用」など、教科書的な分野別とは違った切り口で、入試独特の解 法に触れられ、またその全体像をつかむことを主眼とした演習書。教科書学習をひとと おり終え、入試の基礎を固めた国公立大志望者が、本格的な過去問演習に入る前の導入 に用いることを想定している。 章の始まりに「総論」として入試レベルの問題に取り組むための必要項目を列挙してあ り、個々の説明がコンパクトにまとまっているのが特徴的。基礎知識が不足した状態で いきなり入試問題の解法(解説)に触れると、様々な解法からなぜその解法を選んだか 納得できず、ただ解答を「なぞる」だけの学習に陥りやすいので、この部分をフォロー しようとする姿勢には好感を覚える。また、この部分を読むことで頭の中が整理され、 個々の解法を特別でないシンプルなものと捉えることが出来るようになると、目標レベ ルに近づいてくる。 一方、後半の章では「数列の応用」「場合の数・確率」のように、ある程度教科書的な 分野別に沿った構成になっている部分も見られるが、教科書学習を終えたばかりの(ま たは苦手意識を持ったまま学習を終えてしまった)「自称:国公立志望者」へのフォ ローが先決であろうからこういった内容になるのだろう。そのあたりも含め、最難関志 望者対象バリバリの内容を期待するとやや肩透かしをくらってしまうようだが、出来れ ば実際に内容を見て選んでほしい。 著者は代ゼミの浅見尚先生。学研からの著書が多く、気に入っている人はもちろん、幅 広い受験生の選択肢に入ってくるだろう。類書として「奥平禎の理系数学頻出50テー マ[T・A・U・B]を攻略する本」(中経出版)などがあるが、これと「理系数学の 良問プラチカ」(河合出版)等を比べるとまだかなりギャップがあるので、ちょうどそ の間あたりを埋める本が欲しいと思っていた人にどうだろうか。 ※08年10月26日執筆分より加筆修正 「馬場・高杉の合格!数学」T・A/U・B/V・C(マセマ) # 教科書〜入試基礎レベルに若干不安を残す人向けの再導入&演習書 マセマの入試基礎レベルの導入&演習書である「合格!数学」シリーズに、V・Cの現 課程改訂版が登場。問題を新しいものに差し替えつつ、いわゆる「発展的内容」をカ バーするための措置と思われる。「黄チャート」レベルの参考書の例題を押さえたあと の復習を兼ねた力試しなどに使える。このシリーズは、現課程になって間もなくライン ナップを揃えたものの、旧課程版の収録問題の使いまわし的印象が強く、当サイトでも あまり薦めてこなかったので、これからの展開には期待していきたい。 特徴は、何といっても随所にみられる「すべりを良くしよう」という工夫。前書きには 「まず本書の流し読みから入ってみるといい」などと書かれているが、特に極限に関す る事項のイメージづけの部分など、「確かに厳密ではないが、(学校の授業で)こう説 明してもらえていたらアレルギーにならずに済んだかも」と思わせる導入が豊富で、分 野の概観をつかむ助けになる。 また、通常の参考書では例題扱いされているものの、発想や答案の書き方が難しい(つ まり、例題をページ順にやっていく学習をするとつまずきのもとになりやすい)問題が 導入文中の「例題」として扱われているのも目を引く。そこで、これらの内容は一旦ス ルーしてしまい、他書の例題ページに相当する「演習問題」ページの問題に絞って反復 練習をするとよい。ただ、ある種の達成感は得やすいが、この本の問題だけでは不足す るし、そもそも網羅性が期待できる数がないので、そこは他書とうまく併用し取り組ん でいくこと。 さて、当シリーズに限らずこの出版社の参考書・問題集には、熱烈なファンがいる一方 で一方で、使われている字体や紙面全体のつくりなどの構成面で独特の「ゴテゴテ感」 もあり、逆に毛嫌いされるもとにもなっている。たとえば、表紙カバーのキャッチフ レーズや前書きなどを読んで「何だ?この自信過剰な著者は?」と思ってしまった人 は、絶対にこの本を使う気にはなれないだろう。「今、日本の数学の教材で、マセマは 最高峰に位置していると言われている」とは一体誰が言ったセリフなのだろうか?少な くとも筆者の周囲にそんなことを言う人は1人もいないのだが・・・。 ***09/04/25 「全国私立大医学部10ヶ年 数学入試問題」(聖文新社) # 私立大医学部入試の過去問集の極め付け。主に指導者用? 筆者も解答を執筆している「全国大学数学入試問題詳解」(聖文新社)の総集編的内 容。私大の医学部の一般入試で平成11年から平成20年(1999年から2008 年)までに出題された入試問題をすべて収録している。 問題量を考えれば当然だが、少し前に同じ出版社から発売された「東京大学数学入試問 題50年」よりも分厚い。また「東大」では巻頭にあった問題文一覧が、こちらでは別 冊「問題編」となっているほか、問題編も解答・解説も、すべて学校別・年度順(古い 順)で編集されている点で異なる。特定校の入試問題をまとめて抜き出して取り組むの が主用途ということを考慮すれば納得がいくが、特定項目に絞って演習量を補う用途な ども考慮し、各大学の年度別出題項目一覧、項目別問題索引をつけフォローもしてい る。 例によって、使うのは主に指導者だろう。私大の医学部の入試問題の傾向を知る手がか りにとりあえず持っておくと良い。平均的レベルに関してはもちろんそうだが、問題の 分量や個々の難易度が学校によってかなりバラついていることもわかるからである。 【余談】 一応↑こう断っていますが、毎度本筋とはまったく違う話で毎度スミマセン! 「東京大学数学入試問題50年」と比べ、真っ先に気になったことがある。同じ出版社 からの本で、同じシリーズといっても良いぐらいなのに、タイトル中の収録年数の場所 が違い、さらに「ヶ」の有無まで違うのは何故なのだろう?「全国私立大医学部数学入 試問題10年」ではダメなのだろうか?・・・もしかして、会社には姓名判断の専門家 のような人がいて、本をつくるごとにタイトルをいちいちそういう所に「はかって」決 めているのだろうか?? ***09/05/04 「センター試験 数学T・A+U・B 満点をとるための攻略法!」(旺文社) # センター試験で少しでも解答時間を節約したい人向け演習書 センター試験で解答時間を節約したい人、高得点を狙いたい人向けの演習書。著者は河 合塾の大竹真一先生。同じ出版社の「センター試験 数学T・A(/U・B)公式50で 平均点突破!」(旺文社)で正統派のテクニックを身につけた人向けの続編といった位 置づけ。 前半の講義部分は、補助線を入れて図形を分割して面倒な計算を省く、数列の問題でn に適当な値を代入してみるなど、マーク式独特ではあるが知っていると得をしそうな裏 ワザ的テクニックをいくつか紹介している。まず講義部分をザッと読み、後半の「演習 問題」で学んだ内容を使って解こうとしてみるとよい(ただし、集合と論理の問題など を中心に、ゴマカシがきかない問題も混じっている)。「演習問題」は分野別に分かれ ているが、講義部分では普遍的(?)なテクニックも扱っているため、基本的に分野別 にはなっていない。教科書内容をひととおり押さえ、マーク模試等で全受験者の平均レ ベルには達してから使うべき。 「演習問題」の解説ページには、一般的な解答に続いて「研究」というコーナーがあっ て、ここでは気づくと楽に解ける事項や、「定理の意味を知る」などといった高得点を 狙うなら知っておきたい知識を扱っている。 やや惜しい点は、「研究」の前に載っている解答に、本の前半の講義部分で解説した エッセンスが盛り込まれているのかどうかがハッキリしない点。とくに一般的な解答を 載せている部分には、改善の余地がある箇所に印をつけるなどして、「研究」で触れて いるような解法に変えることでどの程度見通しよく解けたり、時間が節約できたりする のかを強調すべきであろう。著者がすすめない解法がダラダラ書いてある部分をいちい ち読まされるのは、意外とストレスがたまる。 ***09/05/17 「TOKI流くわしい数学」基礎編 @わかる2次関数/Aベクトル(学研) # 要所で講義調を入れ、高校生の素朴な疑問を解決する導入書 基礎編と言いながらも、導入部分のイメージづけや答案の書き方、周辺事項の解説など 手厚く、文字どおり「くわしい」導入書。解法パターンを網羅するタイプの本ではない が、到達点はそれなりに高く、文字どおり「くわしい」参考書である。見どころが多い ので、著者みずから前書きで言っているように理解できるまで何度も読み直して欲し い。計算など、ただ問題をダーッと解くだけが数学と思っている人にはややきついが、 そういう人にこそ手にとって欲しい内容ともいえる。 筆者自身も大変興味深く読ませてもらい、大いに勉強になったが、中でも最も目をひか れたのは方程式・不等式の解法など何気ない計算問題にも複数の解答が提示されてい て、それぞれの解法・計算法の位置づけまで言葉で説明されている点。「普通にやった らこうなる」「慣れてきたらこうする」「こういうテクニックを使ってもよい」といっ た使い分けは著者に限らず多くの指導者がすすめているが、多くの場合口で言うだけな ので、記憶に残らなかったり、曖昧になったりしてしまう。この本には、そういった箇 所もはっきり文字で書いてあるので、日ごろから要領の悪さ(情報の選択が苦手で、学 習内容の相互の位置づけや線引きができない)を感じている生徒さんには嬉しいはず。 その他、「複号同順」といった答案用語の説明、よく使うギリシャ文字の書き順などの 補足事項、不等式の両辺を入れかえて不等号の向きを変えるところを「バタンとひっく り返します」と表現しているところなど、著者である土亀(とき)先生の気配り、授業 の聞かせどころが見通せる。素朴だが高校生が意外と引っかかりやすい箇所が特に手厚 くフォローされていて、好印象。ただ、「基礎編」というわりにはかなりガチガチに書 かれているから、ある程度のガッツが必要となる。基礎の部分は手っ取り早く通り過ぎ たいと思う受験生向きではないので注意したい。 逆に、気になったのは、全体に文字がやや小さく紙面がゴチャゴチャしている点。この まま紙面全体をB5版に拡大した方が絶対いいはず。特に、本文の右の囲みに解説や別 解が入っているところなどでは、そちらが目立ちすぎて圧迫感を感じてしまう。もし、 この本に元ネタとなる予備校のテキストやプリントがあるとすれば、その多くはB5版 のはずで、さらに生徒さんは授業を聞きながらそういうものにポイントや注意点を書き 加えて自分のノートを完成させるはずなのだ。そのプロセスなしに「完成品」をいきな り、それも小さいサイズの本として与えられてしまうと、内容は同じでも受ける印象は かなり違ってくると思う。 ※07年5月1日執筆分に続刊の内容を加筆 ***09/05/18 「東大数学で1点でも多く取る方法」理系編/文系編(東京出版) # 刺激的な(?)タイトルに惹かれるが、内容は骨太の演習書 東大の過去問を理系編は60題、文系編は40題それぞれ収録し、さまざまなアプロー チから取り組み解説した骨太の演習書。 応用性の高い解法や部分点を稼ぎやすい解法を追求する過程でおのずと別解や周辺事項 の解説も豊富になるわけだが、ベストではない解法をあえて「生徒の解法にこのような ものもあった」といった扱いで紹介している点、状況を調べてまとめたメモのようなも のを示して「文系だからこれで少し部分点をあげて欲しい」などと言っている点などが 目を引く、いろいろな意味で希少な本といえる。 同レベルの演習書で言えば、「ハイレベル理系数学」(河合出版)などがニュアンス的 に近い。が、こちらは後半が「演習」となっていて問題集的な側面も強いのに対し、本 シリーズ「1点でも〜」はあくまで1問を掘り下げるスタイルを最後まで貫いている。 どちらを使うべきかは学習者それぞれのレベル・志望・用途によるが、ある程度の基礎 を固めたらあとは練習を積むだけ、という状況から選択肢が広がったことを純粋に喜ば しく思う。 著者は駿台の安田亨先生。直接お会いする機会の多い筆者だからかも知れないが、特に 「はじめに」と「あとがき」には、先生独特の「人間くささ」がにじみ出ていると思 う。このノリが各問題へのアプローチ「考え方」にもあふれ出た、いわゆる安田節はこ の本においても健在。力もないくせに変に気取ってクールぶっている筆者には、見習わ なければならないところが多い。 ところで、本書には「解説」と言いつつその中に余談としてコラム的な話題が挟まって いる箇所が多い。たとえば「近似値を覚えよう」「3次関数のグラフは箱入り娘」など がそれにあたり、これら単独でも大変有用であるわけだが、箇所によってはかなり普遍 的な内容に触れているにもかかわらず、それが1問の問題の解説の、さらに注釈の内容 として埋もれてしまっているのが勿体無い。もし似たコンセプトの本が次に出る機会が あるとしたら、このようなコラム的な記事の索引なども設けてはどうだろうか。 ※09年5月4日執筆分に加筆修正 ***09/05/23 「東京大学(/京都大学)数学入試問題50年」(聖文新社) # 東大・京大入試の過去問集の極め付け。指導者なら持っておきたい 筆者も解答を執筆している「全国大学数学入試問題詳解」(聖文新社)の総集編的内 容。それぞれ東大・京大で1956年から2005年までに出題された入試問題をすべ て収録していて、巻頭に年度ごとの問題文一覧があり、解答・解説は分野別で編集され ている。主に指導者が授業などで扱う問題を探す用途に使える。 前書きにもあるように、日本の最難関大学の入試であるにもかかわらず、東大の入試に は奇問の類はほとんど見られず、正統派の解法で考えさせる良問が多い。京大について も、数学的思考力を見ようとする傾向が顕著にみられ、比較的単純な問題設定で本質を 突く良問が多い。筆者の印象もおおむね同じである(もちろん全問を解いたうえで言っ ているわけではないが)。と同時に、何年かに1問の割合で出題されてしまうこともあ る難問・奇問のイメージにとらわれすぎて全体を見る目を曇らせてはならないことも、 改めて痛感させられる。 さらに、よく言われることであるが、東大・京大に限らず「入試問題」は、実施する学 校がそこの受験者に対して発するひとつのメッセージであり、特に難関校のそれは日本 の数学教育全体に対するそれの意味合いも強くなる。受験生を指導する者として、ここ に秘められたメッセージを真摯に受け止め、次の世代へと伝えていかなくてはならな い。そして、大学入試から安易に数学の学力検査を無くしてはならない。 【雑感】 版下をコンピュータで作るようになる前の時代のものと思われる問題に関しては、当時 出版された本(もしくはその原稿)からスキャンして編集していると思われる。巻頭の 問題文一覧を見ると、特に95年の前後で印刷の質が格段に向上し、紙面のレイアウト も自然な感じに改まっていることが見てとれる。 94年以前の問題を扱った部分に関しては、√の記号や増減表の縦横の線が途中で切れ ていたり、文字の並びが微妙にゆがんでいたり、それ以前にスキャンしたであろう際に 色が薄くなってしまっていたりするのだが、・・・そういえば筆者が高校生当時の本の 中にはそのようなものも多かった気がする。思わず「時の流れ」を感じてしまった筆者 であった。 ※09年2月27日執筆分に続刊に関する内容を加筆 ***09/05/24 「奥平禎の数学証明問題が面白いほどとける本」(中経出版) # 分野横断的に頻出の証明問題を網羅して丁寧に解説した演習書 証明問題というと、一般の受験生にはやはり敷居が高いだろうが、本書はあえてここを 切り口にした意欲作である。数学T・A・U・B・V・C全範囲から幅広く題材をと り、基本事項の確認から答案作成上の細かな注意点、やや難しい問題まで扱っている。 センターレベルまでは一応押さえた気になっているが、記述になると得点が安定しない という「自称:難関大志望者」の皆さんには特におすすめ。 著者の代ゼミ講師奥平禎先生は、ワンランク上の力をつけたい受験生にとって越えにく いハードルをポイント的に狙った演習書の作り方に定評があると筆者は勝手に思ってい るのだが、本書も「証明」をキーワードに多くの分野の基本事項を見直しつつ、同時に より深い学習に目を向けさせる内容に仕上がっている。例えば数学的帰納法の実践のく だりでは、示すべき式を一応書いておくものの(答案に書く内容ではないので)囲みに して「ラクガキ」とタイトルを付けて区別したり、「はさみうちの原理」のイメージを 説明するのに、小さい子どもがお父さんとお母さんに両脇を抱えられて病院に連れて行 かれるマンガを用いたりと、「のみこめない」まま先に進まれてしまうと気持ち悪いま まズルズルいってしまいそうなポイントを押さえ、うまく印象づけていると思う。 もちろん苦労しているところもある。限られたページ数(予備校の授業であれば短い授 業時間)の中で、分野によって基本事項に戻るべきところをどのあたりまで丁寧に導入 するかという「さじ加減」の部分などがそれで、例えば帰納法のところは予備知識なし の生徒さんに初歩から説明している一方、ベクトル扱った章では、まったくの基礎から 導入するものの、内積の計算が文字式の展開や平方完成のように処理できる理由には触 れずに先に進んでいたりする。参考書は予備校の授業とは違い、読み手が他書を適宜参 照することもできるし、逆に分かりきっていれば読み飛ばしてもよいわけだから、もう 少し「戻る度合い」を揃えても差し支えないのでは。あと、数学T・A・U・B内容と 数学V・C内容の部分が一応ページで分かれてはいるが、やはりどこまでがT・A・ U・BでどこからがV・Cか分かるように章で分け、目次などにもその旨明記して欲し かった。 中経出版といえば、少し前までは初学者向けの導入書が専門という印象が強かったが、 昨今は本書のような中〜上級者向けのラインナップを揃えてきている。今後の動きに期 待したい。 ***09/06/07 「(年度版)センター試験 過去問 予備校講師はこう解く!」数学T・A・U・B (旺文社) # 問題文のページに書き込まれた解説が特徴のセンター過去問集 3年分のセンター試験過去問を手書きで詳しく解説した、マーク式特有の解法や周辺事 項に強い過去問集で、1年ごとに1年分の内容が差し替えられて発売される年度版。問 題量は赤本に比べて少ないが、その分解説の密度は濃い。いっとき、収録年数ばかり 競っていた感のあった過去問集にも最近になってさまざまな新機軸が打ち出されるよう になったが、その1つと位置付けたい。 タイトルの「予備校講師は」に惹かれ、何か「スゴイ!」と感動させてくれる解法満載 の構成を期待してしまうが、内容はあくまで問題の並びを崩さずに全問を扱っている過 去問集(予備校のセンター試験対策講座なら講師が授業向きの問題を選んでテキストを 作ったりもするが、そういったものとは根本的に違うので注意したい)。図形の問題で 図を何度か描き直すなど解説に工夫を凝らしやすいT・A分野に比べ、U・B分野では どちらかというとオーソドックスな解法が中心という印象を受けるが、不親切さは感じ ない。 気になったのは解説部分の紙面構成と配色。とくに配色については、問題文の再録以外 はすべて朱色1色で、しかもあまり目に良い色でないのが残念である。計算以外に、問 題文を読むうえでのポイントや周辺事項の解説、はたまたマーク式特有の解法までペー ジの隙間にびっしり書かれている、この「読ませる」部分がウリであるが、それらがす べて同じ色で書かれているから、どの部分が何なのか分かりづらい。一部、囲みや仕切 り線で区切っているところなどもあるが、ページにより書式の使い方・印象がガラッと 変わるところがあり、読み手が紙面構成に慣れるのに苦労しそうである。 旺文社というと「お堅い」イメージがあるが、こと紙面構成に関して「引き出し」が少 ないと感じているのは筆者だけだろうか。その中で、こういったシリーズを出したとい う姿勢自体も評価されるべきだが、今後もっと完成度の高いものも求めていきたい。 ※08年6月19日執筆分に加筆修正 【余談】 手書きの解説(解答)といえば、以前「くろ田のセンター」の名前で発売され、今は再 編集されている「マーク式基礎問題集 試験場であわてない数学T・A(/U・B)」 (河合出版)を思い出す。 また、解説で使われている朱色については、「東大合格生のノートは〜」等で近年ブー ムとなっている、いわゆるノート本でも「見づらいので使わない方がよい」と指摘して いるものがある。 ***09/06/17 「でるもん」確率/三角関数(中経出版) # センターレベルから入試標準レベルへの橋渡し的分野別演習書 分野別に、入試問題から55題ずつを選び解説している分野別演習書。08年末から英 語・国語も含めたシリーズのラインナップが増えていく予定になっているが、数学は 09年6月現在「確率」「三角関数」の2冊が発売されている。 問題冊子が別冊になっているが、本冊にも問題文が再録されていて普通に読むこともで きる構成。解説は同じ出版社の導入書・演習書に比べてややそっけないが、「導入」→ 「解答」(注釈入り)→「ポイント」の流れで、解法を理解する部分と答案の作り方、 また他の問題にも応用がきく知識が頭に入るようになっている。また、章立ては基本的 に事項別であるものの、一部難易度別になっている部分があり、学習者のレベルによっ て「○○の基本問題」の部分をパスしたり、逆にその部分に絞ったりといった使い分け も可能になる。 気になる難易度は、センターレベルを中心としつつ、基礎が確認できる問題からやや本 格的な入試問題まで意外と幅広い。教科書学習と並行してでも使えないことはないが、 かなり余裕のある受験生以外には難しいので、そこは無理せず、例えば同じ出版社の 「坂田アキラの〜」等で導入したあとや、いわゆる網羅系参考書の例題を終えたあとに 力試し的に用いるのがよいだろう。 分野別の問題集といえば、類書に「新こだわって!」(河合出版)があるが、それより も易しめをそこそこの問題数でバランスよくカバーしているのがこの「でるもん」とい う位置づけでよいだろう。全体に比較的素直な問題を選んであり、また1問の分量も重 くないので、即効性という点でも期待できそうである。 注文をつけるなら、内容的にもう少し厚みを持たせることはできなかっただろうか。確 かに、この本を仕上げれば、頻出の解法にひととおり触れることはできるが、同じ解法 を使う類題が収録されていないため、練習は他書でやらねばならなくなる。短期の力試 しや苦手対策が主用途ということを考えたら、この本の中である程度完結した方がよい のでは。あと、筆者の個人的な好みであるが中経出版のイメージカラーともいえる黄色 でない「青」が基調の表紙を見て、一瞬この出版社の本と分からなかった。・・・あ、 でも今回は教科で色を分けてるのか。うーむ。 ※08年12月7日執筆分に新刊書の内容を踏まえ加筆修正 ***09/06/20 「教科書Next ベクトルの集中講義」(東京出版) # 検定教科書に載らない重要事項も扱った導入書。数学が得意な人向け 「1対1対応の演習」や月刊誌を含む「大学への数学」シリーズがおなじみの東京出版 から、教科書レベルから入試レベルへの橋渡しを意識した導入書が発売された。それ以 前に、この出版社の本で「2色刷り」自体が珍しいので、筆者などはまずそこにビック リしてしまうわけだが・・・(汗) 内容的には、導入の丁寧さと到達点の高さが共存しているのが一番の特徴か。また、成 分を導入する時点で空間座標も同時に導入してしまい、平面ベクトルと空間ベクトルを 同様に扱えるようにしている点なども(この本のオリジナルではないが)目を引く。さ らに、「斜交座標」や「正射影」、「重心座標」といった発展事項もきちんと扱ってい るので非常に格調高く見える。それでいて、ページ数的にもそんなに多くないのが嬉し い。数学が得意な生徒さん向けの先取り学習や、難関大を志望しているものの学校の授 業でこの分野をしっかり扱ってもらえなかったという人にも使えそう。 例題の解答・解説本文の右の部分で、何度か図を描き直しているのが特徴的だが、副文 (使った公式などの注釈)はないので、式や文章だけで内容を読み取れる理解力・予備 知識が必要。逆に、その部分だけでスッと理解したい人は落ち着いて読めると思う。 その例題であるが、この本では本当に重要なもの、知っているかどうかで差がつくもの だけを収録している。筆者自身も、最近この分野をダッシュで授業したことがあり、そ のときはこの本の前半にあたる部分を、本当にここに載っている例題程度の数・レベル の問題を紹介しただけで終えたことがあり、そのときのことを思い出しながら読んだの だが、網羅的学習や演習は他書にまかせることにすれば、導入書というのは本当にコン パクトでいいんだなとこの本で改めて気付かされた。ただ、あくまで市販書であるから 例題だけで確認問題の類がまったくないのも困る。大きく4つに分かれている章の終わ りに、各「Section」(節)の内容の確認問題を1題ずつ程度は入れても良かったので は。 【余談】 「重心座標」というのは、ややマニアックな事項であるが、△ABCの内部の点Pに関 してベクトルの等式で「k→PA+m→PB+n→PC=→0」が成り立つときのPの 位置に関係した内容であった(恥ずかしながら、筆者はここに書かれた内容について本 書で初めて知った)。ここまで説明したあと、先ほどの問題に対して分けられた三角形 の面積に注目した別解(ただ機械的に式変形により解くのでなく)を提示し、Pの図形 的な意味について触れているわけだが、1つの事項に関してここまで深く学べると達成 感も大きいだろう。そのまま探究的な学習のネタにも使えそうである。 分野別で教科書型テキストといえば、類書「佐藤の数学教科書」(東進ブックス)が 真っ先に思い浮かぶのだが、こちらももちろん丁寧ではあるものの、数学U・B内容の 本はどれも1冊の中で導入から応用まで完結させようとしすぎるきらいがあり、煩雑さ も感じられる。 気になったので、前述の「k→PA+m→PB+n→PC=→0」を扱った問題につい て改めて見比べてみたが、「佐藤〜」の方では「教科書Next」とは全く違う「深め」方 (チェバの定理で出てくるような三角形の周りの線分比との関連に触れる)をしており 2度びっくり。ただ、「教科書Next」では数学的に興味深い内容を切り取って深めると いう意図がストレートに表れているのに対し、「佐藤〜」の方は準公式としては面白い ものの、最終的に練習問題が式変形を省略して解ける「裏ワザ」的(?)な扱いで締め くくられていたのが残念。さらに、「佐藤〜」では機械的な式変形による解法(いわば 正攻法)が扱われていない点も気になった。 特に自学自習ということを考えると、重要問題(およびそれらの正攻法的な解法)だけ を押さえて次に進むか、基本を押さえたあと網羅的に学習するかの使い分けができた方 が良いので、教科書レベルから導入する本は、到達点として入試基礎レベルをこえるべ きではなく、さもなくばコンパクトにして読ませるだけにするべきだと筆者は考えるの だが、どうだろうか。 ***09/06/24 「ここがねらわれる 数学重要公式166&用語88」(学研) # 見やすい紙面でポイントもうまく強調された公式集 センター対応で、数学T・A・U・B内容に絞った公式集。実用性を重視したつくり で、ひと昔前よくあった無味乾燥なものとは一線を画している。 新書版というサイズのハンデを、記述量を絞ることで補っているのはもちろんのこと、 紙面のビジュアルも重視されているのが特徴。昨今の参考書でよく見かける手書き風文 字によるポイントの強調なども見られる。他にも、絶対覚えておくべき事項についた 「暗記」、解法の流れを頭に入れておきたい「手順」のマークなど、覚える対象の質に も言及しているなど、作り手のセンス・意識の高さを感じさせる構成(とくに「手順」 に関しては、筆者自身も担当授業の中で強調することが多い)。 ページ下の「例題」に関しては、狭い紙面に問題文・解答まで入れなければならないの で、分かりやすさよりもコンパクトさ重視。まあオマケ程度と考えるべきだろう。パラ パラとめくりながら「ああ、こんな問題もあったっけ」と思い出すきっかけとしては十 分か。 ***09/06/25 「大久保進一朗の数学U・B計算トレーニング」(中経出版) # 計算問題集というより網羅系参考書の例題の類題集?基礎の確認に タイトルには「計算トレーニング」とあるが、問題がズラズラ並んだドリル的な本では なく、計算が主になる重要問題を数学2・Bの各分野から集め、ポイントを強調して丁 寧に解説した本。内容的には「カルキュール[基礎力・計算力アップ問題集]」(駿台 文庫)よりもむしろ「数学基礎問題精講」(旺文社)や「土曜日に差がつく数学典型問 題エクササイズ」(河合出版)に近く、網羅系参考書の例題ページの問題を反復して解 く演習書、つまり類題集と考えた方が良いかも知れない。 著者は代ゼミ講師の大久保進一朗先生。ご自身が偏差値30から国立大学に合格した経 験をもとにした、基礎の徹底を重視する授業スタイルと思われる。 各ページは、「チャート式」のような総合(網羅系)参考書と似た、1ページ1題の 「問題」とその指針の紹介「ねたばらし」と解答、さらに下には「類題」がつくといっ た構成。一応「計算トレーニング」問題集らしく、各問題に「目標60秒」というふう に解答時間が設定されている。巻末には「さくいん」と類題の解答がある。さらに別冊 として「問題」ページの問題文一覧も付属している。 とにかく、この本に載っているような良問を繰り返し練習することで計算力もつくはず なので、教科書〜入試基礎レベルをひととおり終えたつもりだがイマイチ実力が定着し ていないと感じている人は、この本で演習量を補いつつ基礎の確認・復習をしよう。 「問題」と「類題」のギャップも少ないし、本のコンセプトを考えたらやはり「類題」 までしっかりこなしたいところ。 あえて気になる点をあげるなら、本文中の章の変わり目がはっきりしないことと、類題 の解答がややそっけないことだろうか。とくに前者に関しては、目次では章立てがはっ きりしているものの、本文中では著者が思いを語る「夢へのかけ橋」というページがは さまっているだけである。せめてこのページの背景か外枠に赤色がついていたら、本を 開かなくてもスジのようなものが見えて目印になっていただろうにと思う。 【雑感】 筆者も、この本を最初手にとったとき、「計算トレーニング」というタイトルから「カ ルキュール」(駿台文庫)のような内容を期待をし、いざページを開くと網羅系参考書 の例題ページだけが淡々と続くような内容で面喰ってしまった1人である。が、だから といってこの本を「タイトルと内容が違うじゃねーか!」のひとことで切り捨てたくは ない。思い当たることがあまりにも多すぎるからである。 「計算力をつけたい」と思ったとき、普通に考えたら計算ドリル的な問題集を買ってき て繰り返し解けば良いだろうという考えになる。が、それで良い人が果たしてどの程度 いるのだろうか。問題文の意味を正しく読み取れるか。解法の手順をまったく忘れてし まっていないか。 計算ができないというのは単なる「結果」であって、実際のところ、その原因はさまざ まなところにあるはずだ(人によってもかなり違うと思う)。きっかけはどうあれ、受 験生の皆さんが今までいい加減にしてきたところにきちんと目を向けてくれたらと願う ばかりである。 ***09/07/03 「合格!数学T・A(/U・B/V・C)実力UP!問題集」(マセマ) # 地方国公立&有名私大の入試レベルに触れられる演習用問題集 同じ出版社の「合格!数学」の演習量をさらに補うための問題集。本家「合格!数学」 のリニューアルに合わせて発売された。問題の難易度は「合格!」の反復レベルからや や難しいものまで幅があるが、少ない問題数の中で、そこそこのバランスで入試重要問 題を扱っていて、入試問題のレベルに触れながら独特の「ひねり」に慣れていけるよう に構成されている。 著者は馬場敬之先生・高杉豊先生で、独自のファン層を持つ。ターゲットは、難関を除 く国公立大および有名人気私大の受験生と思われる。おそらく使うのは本家「合格!」 を気に入った人に限定されるだろうが、選択肢に入れても良いだろう。収録問題の難易 度に多少バラつきがあるが、うまく問題を間引きながら取り組みたい。 紙面構成は、1ページで1問の入試問題を扱い、問題文はページ上の囲みに入りその下 に「ヒント!」、さらに解答と参考が左右2段組で入るというもの。少々詰め込みすぎ の感もあるが、見づらい印象は受けない。 複数分野が融合した問題が多く収録されている点には注意が必要。一応、後の章(数学 Vの極限と積分の融合なら積分の章、Vの内容とCの内容との融合ならCの内容の章) で扱われる形にはなっているものの、教科書学習と並行して使うことを難しくしている ほか、苦手分野を残している生徒さんには明らかにつらい。本の後半になるにしたがっ て融合問題の割合が高くなるので、ある程度その分野の中だけで解決するように改題し たものも一定数入れて欲しかった。 ※09年6月9日執筆分に新刊書に関する内容を踏まえ加筆 ***09/07/21 「難関大突破 数学の底力」(学研) # 難関大志望者向け、本番・模試で差がつくポイントに触れられる 難関大の入試本番で差がつく分野・問題を中心に扱った、上級の導入書。数学が苦手で ではないが(教科書の章末問題程度なら解ける)、模試の応用問題など少し難しい問題 になると手が出ないなど、そういった問題まで解けるようになりたいと思っている生徒 さんにはぜひ取り組んでもらいたい。要するに、ただ教科書の基本事項を学ぶだけでな く、それらをどう使って問題を解く手掛かりを作るかが大事なわけだが、本書では「底 力」と呼ばれているそういった部分を少しでも多く見せたい。そんな意図にあふれた、 「自称・難関大志望者」向け、もしくは学力的に余裕のある高1・2生向けの良質な導 入書。収録問題数は126題と多くない。 1問1問に学ぶポイントがあり、難易度に関しても、難しすぎず、かといって定型パ ターンの暗記だけでは対応しづらいところをうまく採ってきているほか、解説以外の部 分(問題の紹介や解説の前の導入部分など)も全体に「読ませる」内容・構成となって いて目を引く。学習効果はかなり高いはずだ。 特に中高一貫でもトップ校の生徒さんなど、難関大志望者の多くは入試問題演習に入る 段階で一種の「下地」のようなものを持っていて、過去問演習にもスムーズに入ってい けると思う。それは、やはり日々の学習を通じて養われるものだと思うわけだが、通常 の学習の進め方でやってきた一般の受験生にとって、その一端に触れることができる本 書を手にできることは大きなチャンスであると筆者は思う。難関大模試などで自分の力 のなさを痛感させられても簡単にあきらめたりせず、ライバル達のしてきたであろう努 力を追体験(?)してみるとよい。もし最終的に諦めることになるにしても、自分の中 でそこまで努力したうえで諦めるのと、ただ判定だけを見て漠然と諦めてしまうのとで は、その後の学習への取り組み方が大きく違ってくるはずだ。 ***09/07/26 「山本俊郎の数学TAUB発想の原点」@/A図形編(あすとろ出版) # 数式の見方・扱いに『こだわり』を見せるピンポイント的演習書 特にここ何年か、山本先生は「先生役と生徒役の会話調」を大変押していらっしゃっ て、今回は実写のモデルまで起用するなど新たなファン層の開拓に余念がない。今回 は、「式と証明」を主な題材に、基礎から難関大入試レベルまで、1つの問題に対して 様々なアプローチを示し、また丁寧に解説している。 例えば@でとりあげている「式と証明」の分野は、教科書や傍用問題集の問題をこなす だけでは入試レベルとのギャップが残りやすい分野の1つで、筆者も中3から高1にか けて学んだが苦手としていた。自学自習の場合、1問題1解法で淡々と網羅していくだ けの演習をしていると「どうしてその解き方になるの?」「こういう計算の仕方ではダ メなの?」という疑問がわいてくることが多く、そういう疑問が解決されないまま次に 行くと、解答を(肌に合わないまま)覚えるような学習に陥りやすい。そういうところ で、ちょっとした式の扱いにも丁寧にフォローを入れ、別解も示してくれると非常にあ りがたいわけだが、こういうところは山本先生ならではといった感じ。 @から約2年の沈黙を経て登場した「A図形編」でも、「軌跡の着眼点」として同分野 でやや程度の高い問題でつまずく受験生が多いであろうポイント(いわゆる「除外点」 の扱いなど)を丁寧に解説していて好感が持てる。このほか、さほど発展的な内容では ないが受験生の実情に考慮した「ベクトルの着眼点」「幾何図形超特急」からなる。 対象としては、数学T・A・U・Bの教科書内容をひととおり終え、中級から上級にス テップアップしたい難関大志望の現役生などが想定される。内容的にも「切り口」的に も、予備校の講習会っぽいので、直前期以外で適当に時期を決めて集中的に取り組みた い。たとえば高3の1学期〜夏休み前、何か得意分野をつくりたい人には選択肢に入れ るべきだろう。同じ短期集中型でも、反復練習がしたい人、多くの問題に触れたい人に はすすめられない。あと、これも当たり前のことだが、会話調が苦手な人には敬遠され る。実は筆者がそうなのだが、特に登場人物が増えたとき、「脳内ボイス」(?)を切 り替えるのに行頭をいちいちしっかり読まされるのがけっこう負担になるのである。 ※07年11月13日執筆分に加筆修正 【余談】 こういう本を見ていると、東進ハイスクール時代の湯浅弘一先生が、元教え子を生徒役 にして問題を解く指針についての会話を収録したCD付きの演習書を出していたことを 思い出す。湯浅先生もラジオたんぱで講座を担当されていて、お得意の路線を市販本に 反映させた「講師のファンブック」的参考書という意味で、同じニオイを感じる。さら に、山本先生は本の中に予備校の講座でこういった会話調テキストを使っていることも 「@」のまえがきなどで明記されているから、言わばダメ押しである。 もちろん内容自体は優れているし、この本を読んで山本先生の授業を受けたいなという 気になって、そして数学が好きになってくれたら、その生徒さんにとってはオンリーワ ンの参考書・講師となるのだろう。けれど、少し冷静に戻って考えると、そういう講座 の受講者(もしくは講師ファン)と一般書店で本を買う人はもともと層が違うのだか ら、著者の周囲における基準(温度、もしくは「空気」と言った方がよいのかな?)を そのまま市販本に持ち込むのはどうかとも感じる。実際「人気」ではあるのだろうが、 筆者のように、直接面識がない者(しかも予備校自体をあまり良く思っていない)が見 てしまうと、言い訳がましくも感じてしまう。普通の感覚で見て、著者の趣味に走りす ぎだと思う。 ・・・本当に個人的すぎる意見ですみません。でも、最近、いろいろな参考書に目を通 していて「これって、もしかして私に対するメッセージ?」と思えて仕方のないこと が、けっこうあるんです(汗) ***09/07/29 「(年度版)大学入試攻略 数学問題集」(河合出版) # 毎年その年のトピック的出題を紹介した良問集。指導者向け? 河合出版から毎年発売されている、その年の入試で特徴的な問題を集め紹介・解説した 問題集。最近の入試で特徴的な問題を紹介する一方で、典型題を網羅する意識も高い が、参考書にも載っているような問題からは少し外れた「目新しい」ものを収録しよう という意図も強く、やや後者にウェイトがあるという印象。全体的に収録問題のレベル はやや高めである。 巻末の「概観とトピックス」を読むと、文字通りその年の特徴的な出題についてひとと おり情報を仕入れることができる。例えば07年に発売された08年度版で言うと、教 科書内容との対応に関する記述などがそうである。「行列」そのものを扱った問題は増 加したが、点の移動を扱ったものでも「1次変換」という用語は問題文に明記されない ことが多いといった情報が得られるわけだが、聞けば一応納得するものの書き方はどち らかというと指導者向け。河合塾には、各教科の講師が集まってその年の入試動向を分 析したり、トピック的な問題を紹介したりする会議があるそうで、特に「概観」部分を 見ても元ネタはおそらくそのあたりと推測される。その他、10年度版には、09年度 の入試では易しい問題はより易しく、難しい問題はより難しくなった(二極化)といっ た気がかりなことも書かれている。 内容的に、受験生の皆さんに実用で使うことは勧めないが、逆に学校などであまりにマ ニアックな内容を教えられているなどの理由で「入試突破に本当にこんなことが必要な の?」と不安になっている人は、こういう本をザーッとやることである種の「安心」は 得られるかも知れない。 余談になるが、解説や概観などの行間から「教科書がスカスカになったせいか、受験生 の質が下がったせいなのか、今年も面白い問題がほとんどなかったなあ・・・」という 講師のぼやきを聞いてしまうのは、筆者だけだろうか。でも、逆を言えば、悪問・難問 が淘汰され、やるべきことをしっかりやっておけば取れる入試問題が多くなったおかげ で、一般の受験生にも(さらに言えば筆者のような凡庸な指導者にも)入り込む余地が 生まれていると思うのだが。 ※元記事は07年8月26日執筆。  08年8月15日、09年7月29日にそれぞれ加筆修正 ***09/08/06 「柳谷のセンター数学基礎講座 数学T・A・U・B CD−ROM講義付」(旺文社) # PCの画面上で音声と動くペンによる講義が見られる『レク本』シリーズ第3弾 これまでに多くの著書を出されている柳谷晃先生みずからによる7時間もの講義が見ら れる。旺文社では、他教科も含めて講義(レクチャー)+本で学ぶ『レク本』としてシ リーズ化しようとしていて、本書は数学では第3弾にあたる。 講義自体は至ってオーソドックス。筆者などは、予備校講師が執筆した導入書・演習書 を見慣れてしまっているので、そっけないというか期待外れの印象を抱いてしまうが、 画面上には講師の画像が映らないことなども考慮に入れると、むしろこの程度でも良い のかも知れない。なぜなら、授業を受けるうえでは講師の見た目や動きも重要な情報で あり、それがないとオーソドックスでない講義は理解しづらくなるであろうからであ る。好みの範囲だろう。 ただ、画面に解法のポイントをテレビ番組の字幕のようにボンと出したり、答案を書く 順番をいじる(例えば解法のポイントを書いては消しつつ答案を書き足していくような スタイル)など、工夫の余地はいろいろあると思うので、特に続刊では、この「動くペ ン」というメディアで情報を的確に伝えるにはどういう手法が望ましいかいろいろと試 行錯誤してもらいたい。 本自体は、センター試験の問題番号に即した分野ごとに、「基本事項の確認」と「基本 事項の練習問題」があり、さらに過去問3題を「演習問題」1題(これはいわゆる例題 の扱いで、見開き左に問題文がある右に「解法のポイント」がつき、解答がすぐ次の見 開きにある)そして「模擬問題」2題(これはいわゆる演習問題形式で解答は巻末にあ る)として扱うという構成になっている。 が、やはり全体に非常にそっけない紙面構成で、そのせいもあってか全体「工夫が感じ られない」のが気になる。センター対策「基礎」講座というわりには、基本事項の確認 は申し訳程度でいきなり過去問をそのままで扱っているし、昨今の参考書ではなかば当 たり前にもなっている答案横の注釈もまったくない。その分、講義中に解法のポイント などがバンバン出てくるかとも思ったのだが、こちらも期待外れ。せっかく新しいテク ノロジーを使っているのだから、変にベテランに頼るのではなく、若い力に期待すべき ではなかったろうか。 【雑感】 旺文社からは、以前にも「動くペン+音声」による解説の入ったCD−ROMが付属し た参考書が出されていた。「ここからがわからない 入試基礎 数学T・A(/U・B) 40題 CD−ROM講義付」がそれだが、こちらはいわゆる「お試し」の色合いも強 く、講義付は後発で講師も著者とは別であった。旺文社はいよいよこのジャンルに本腰 を入れるのだろうか?続刊を含めて期待したい。 「解き方がわかる数学」T・A/U・B/V・C(代々木ライブラリー) # 教科書と入試の橋渡しを意識した演習書。U・Bはややレベルが高い 教科書レベル〜入試基礎まではとりあえず押さえたが、入試標準レベルになかなか取り 組めず悩んでいる人に向けた演習書。教科書学習時には触れにくい問題を通じて、学ん だ基本事項が入試問題の中でどのように使われるか学習することができる。高2までの 中間・期末試験や模試ではそれなりに結果が出ていたが、高3(もしくは卒業生)なっ てから手が出ない問題が多くなり、それが気になっている人が主対象と思われる。 各「問題」には、同じ分野から「類題」が付けられていて、その略解が巻末についてい る。この「類題」が「問題」と同じか少し易しめのものが中心になっているのだが、こ れは問題で「触れて欲しい解法」を提示し、類題には「自力で解けて欲しい問題」を集 めているということなのだろうか。 気になるところがあるとすれば、収録問題の難易度に多少バラつきがあるところか。 「T・A」には中級者向けの総合参考書(網羅系参考書)の例題としても見かける問題 があちこちにあるが、「U・B」になるとパターンをあえて外した問題とでも言おう か、解説を見てはじめて納得するような問題の割合が高くなる。気になるほどではない が、取り組む際には注意が必要だろう。 著者には中経出版からの著書の多い佐々木隆宏先生、旧課程時代に「藤田の壁を超える 数学T・A・U・B」(代々木ライブラリー)を出された藤田健司先生、そして貫浩和 (ぬき・ひろかず)先生という計3名のお名前があるが、「橋渡し」というかなり曖昧 なコンセプトの中で、問題の難易度に関する共通認識を持つことの難しさも伺える。 ※07年7月16日執筆分に加筆修正 =====