この転圧というのが、けっこう「悪魔のささやき」的なところがあって、
やれば確実に成果が出るので、ついついグリーンを転がすためにやって
しまうのですが、やりすぎるとグリーンをいためる原因になります。
分かってはいるのに、なんか変なサイクルにはまってしまうと、知らず
知らずのうちに頼ってしまうということになります。
さすがにそれほどまでではありませんでしたが、春先に芝生の葉を広げて
しまい、週末に向けてはどうしても転圧に頼ってしまうというサイクルに
陥っていたことは否めません。とにかく6月になれば、がっつり芝目を
すいて、新芽をださなくてはと思っていたところ、とんでもなく高温の
6月が来てしまいました。これにはまいりました。
それともう一点、今年から肥料の種類を変えました。これがどうも思わし
くない。理論的にはぜったい自信があった肥料なのですが、思った結果が
出ない。このあたりのことについて、どうしてナセリーなどで試験して、
それから本グリーンへというステップを踏まないのかと、指摘されるの
ですが、私は物によっては、予備試験はありまり意味がないと考えてい
ます。再現性、ということを考えるからです。
たとえば、新しい品種のベント芝を導入するかどうか検討する際、よく
管理棟の横に植えてみて「試している」キーパがいますが、これは疑問
です。そこで得られた結果が、本グリーンで再現されるかということを
考えてしまいます。
肥料なんかも同じですね。実際のグリーンでやってみないと正しく評価は
できません。まあそれでも最初は、パッティングでやってみてということに
なるのでしょうが、今回の場合は全グリーンの肥料をいっせいに切り替え
ました。これはその肥料の性能にかかわる論理的な裏づけがかなりすばら
しいものだったからです。理論に殉じてしまいました。頭でっかちなよう
ですが、私は結構そういうことをやってしまいます。
これはグリーンキーパの仕事というものが、一年単位でしか考えられない
からということに起因します。肥料なんかの場合、どうしても評価を下す
ためには一年という期間が必要になります。一年で評価を下せない場合も
あります。段階的にやっていたのでは新しい技術の導入が遅れてしまうの
です。ですから自分が理論的に納得できたものは、予備段階をとばして
いきなり本番に持ってくる、なんてことを結構平気でやってしまいます。
たとえばコース管理に従事して25年、グリーンキーパに就任して10年、
なんて言ったら、かなりのベテランのように思いますよね、一般の人は。
でも、その人はグリーンキーパとして、春を、あるいは夏、秋、冬を10回
経験しているだけなんですね。それが十分な経験値といえるかどうか
難しいところです。ただ漫然とキーパやってましたというのであれば、
10回の春の経験なんてほとんどとるに足らないものになってしまいます。
常に試行錯誤し、新しいものを取り入れて積み重ねていかないと、
グリーンキーパとしての成長はないと私は考えます。
まあその結果、試行錯誤なわけですから、失敗することもありますが。