2016/9/14

洗顔  

   
五十音循環                

   ■ ネオン点き黴の胞子の飛ぶ夜かな      松野苑子
     洗顔の泡細やかや秋彼岸
     嚔してしばらく手足遠くなる
     肉食のナイフとフォーク冬三日月     
     摘草のときどき横の姉を見て
     手を入れしところを回る花筏
     春深し俯く仕事ばかりして     
      

    雪渓や空の色なる水たまり          南 葉月           
     秋風や千回弾けど弾けぬ曲
     母死し日朝焼を見る兄姉と
     三人が螺髪に乗りて煤払
     吹き抜けのカフェのさざめき花疲
     行きずりの人と聞きをる初音かな        

       
   大使夫人真白き麻のワンピース        宮田絵里
     割箸で掴む毛虫の腹赤き
     鈴鳴らす巫女のマニキュア秋の風
     大寒の狐の如き眼の役者
     花陰の場所取り役も体操す
     春嵐薬局名は青い鳥  
                  
       
   ■
 指示多き天気予報や梅雨の闇          井岡智子
     マッフしてライブハウスは鉄の部屋
     冬の虹終着駅は始発駅
     かの世への船の駄賃や返り花
     凍て蜂の母を亡くしてわかること
     羽広げ駝鳥のゆばり春麗

    
    夏痩せて森の匂ひの中にをり          北裏節子
     ハイヒールつかつかと来て赤い羽根
     小春日のカスタネットの固き音
     他人ごとのやうに今年も日記買ふ
     老人の多き礼拝風花す
     アップルパイきれいに焼けて雪解風     
            
 
   ■ 五月三日夜間飛行の音激し           木下はるえ
     家族ゐてひとりと思ふ花芙蓉 
     空透けて冬木栞のやうに立つ
     花八つ手ネクタイ処分五十本
     職離れひと月過ぎて春の風
     三月来整理整頓再奮起
             

    村のバス来さうにもなし雲の峰        佐伯花舟
     ウイスキー持つ手が透きて夜長かな
     釣竿を父も子も買ふ二日かな
     讃岐弁互ひに出でし彼岸かな
     花冷や全て尖れる魚の歯
     梨花の白菜花の黄色故郷は


   ■ ゐのこづち一度振り向き別れけり      佐藤帽子
     いやなのにみんなと一緒蛇穴に
     爪先や白き障子の閉められて
     歯のかけら地球のかけら鮟鱇鍋
     みはるかす岬の春に自衛官
     龍天に洗濯物は一列に
             

    買い物籠一番上にさくらんぼ         中橋真韻          
     予防接種乳癌検診胡瓜咲く
     髪染めて香水噴いて頑張れよ
     梨剝いて昔の我でゐるやうな
     年の瀬や風神雷神図の中も
     母に会ひにちよつとお墓へ初桜        
         

    ルノアール見て万緑の中歩く      中村美鈴
     祭の灯夫と綿菓子分け合ひて                 
     朝顔蒔く活断層の上に蒔く
     大根洗ふ我に番号十二桁
     夜空にも青空ありて寒満月
     啓蟄や緩急つけてウォーキング
      
         

     

2015/7/18

千本  

五十音循環 
              


    夫とゐて子無く母亡し母の日に      中村美鈴       
        雑草と括られし草引かれけり
         薔薇の花千本ありて千揺るる  

     

    炎天や肩寄せ合ひて行く二人        星 阿塵
        忍土とはこの世のことよ百日紅
         嗚呼ドイツ楽しかりしや夏帽子
            


    猫の恋巨大スクリュー影を生み       松野苑子
      サイネリア涙の後は擤んで
       初氷耳の形にとけはじむ
        


   ■ 下萌や弾痕残る変電所             南 葉月
       故郷は雪東京の空青し
        秋夕焼空襲みたいと母の言ふ


       
    春夕焼九席ほどの貝の店           宮田絵里
      塩かけて揉んで海鼠の硬さかな
       卵白の泡立て充分クリスマス                  


   
   ■ 玄関と仏壇の前黄水仙             山本範子
      鳥獣戯画の兎のごとく一日を
       ハロウィーンの道掃きてをり肩に雨

       
       
   ■ 梅雨の闇我が内臓に石二つ          井岡智子
      春の野の真中に残る風の癖
        受難日や財布に一つ一セント


 
    人が好き銀座も好きや春一番          伊藤華子
      朽ちし家連翹の香の纏い付く            
       黙黙とキャベツを剝がす男佳し
        

  
    青芝やかつて学生読書会           北裏節子
      揚羽来て御苑の空気軽くなる
       薔薇の花赤し誘眠剤白し

      
 
    八十の離職御礼桜餅             木下はるえ
       少年の唇真つ赤風花す
        竹竿を裂いてくるりと柿を採る

             

   ■ 隣国のコインが浜に春の昼          佐伯花舟
      グラスには炭酸の泡春寒し
        良き香りする人隣初電車

       

    夏日射す太古の岩の肌触り         中橋真韻          
      遠き日に似て十薬の花に雨
        母とゐる春の風邪寝の夢の中
       
         

  

2015/2/18

キルト  

 五十音循環 
              

   ■ 睡眠のしっかり摂れてシクラメン      中橋真韻          
      炎昼や我のみ頼る命消ゆ
       右耳に血流の音秋気満つ
        大寒のキルト縫ひ目のオーラかな           
        


    シクラメン二鉢競ひ合ひてをり        中村美鈴 
      梅雨晴の製紙工場ポスト赤        
       秋高し首都高を豚運ばるる
        震災もサリンも知らぬ子に汁粉  


    鉛筆を削る快感春隣              星 阿塵
       消費税真に重しヨット一艘
        満月を二人で仰ぎ無言なり 
         蜜柑食み人形寝かせ夜の雨        

    

    雉鳴いて枕がふたつ干してある       松野苑子
       噴煙の曲がるところに鯉幟
        ガーベラや厚き手紙の怖ろしき
         とんばうの集まつてくる頭痛かな


   ■ 霾や上終町(かみはてちやう)なる駅に立ち    南 葉月   
      夏屋敷まんずまんずと通さるる
       とりどりの薔薇に囲まれ朝の地震
        明日終る一時帰国や夕かなかな


    春光や母の使ひし鍬重し           宮田絵里
      離陸機を望む病室夏兆す
       口紅の減らぬ毎日金木犀 
        雪掻や胸板厚き高校生                  


   
   ■ チューリップ八つ同時に芽を出せり      山本範子
      水無月に生まれし我と真珠玉
       ワイパーに駐禁切符月の下
        茸飯毎年作る死ぬるまで


       
   ■ 帯留に加賀の指貫春隣              井岡智子
      黒ビールかんしやく虫を放し飼ひ
        黙祷や百の風鈴鳴り続く
         水底に蒟蒻五色小六月

 
  
   ■
 昨日笑ひ今日は怒るや帰り花        伊藤華子
      黄水仙姪の夫婦は仲悪し            
       木漏れ日に樹海の葎光りたる
        案山子立つ福島訛の列通り
       

  

    蝌蚪の国赤き錠剤落ちてゐる        北裏節子
      夏の星六十兆の吾が細胞
       八ヶ岳甲斐駒北岳柿を干す
        号泣の赤き唇流氷期


 
    紫木蓮花蕊に蠟燭立てたしや         木下はるえ
       我が運気強しトマトの赤くなる
        市長先頭阿波踊りスタートす
         厄除けの瓦の鬼や月の射す 
   


   ■ 春雪の積もり積もるや東京に           佐伯花舟
      やはらかき服と言葉や夏館
       地下街から入る三越クリスマス
         缶切の軌道は丸し冬うらら
   





         

  



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