メコン・デルタ(4)
夜はベトコンの活動が活発になる。ぼんやりとした月明かりの中、夜間パトロールを行う。
1,2マイル先でオレンジ色の光が大きくなったり、小さくなったりしている。
一呼吸置いて腹に響く爆発音が続く。
「政府軍の哨所のあるあたりだ。」
武装ヘリコプターも飛び回っている。
中尉がレーダースコープで数百m先に輝点を見つけ、無線で後続のPBRに連絡する。
左岸のベトコン支配地域(free fire zone)付近で、黒い水面を3隻のサンパンが岸にむけ走っている。
サンパンの20m程手前で速度を緩める。
「ロイ、威嚇射撃だ!」
20才前後の威勢のいい前方銃手ロイが、13ミリ機銃弾をサンパンの頭上に発射する。
サンパンの進行方向に回り込もうとしたとき、真っ黒い河岸から緑の曳光弾の矢が飛び出してきた。
“
バシッ”という弾着音に首をすくめる。
「河岸に火力を集中しろ!」
後続のPBRと協力して連続射撃をしている間に、2隻のサンパンは河岸の水路に消えた。
もう1隻のサンパンは荷物を一杯積んでいるらしく、よたよたと走っている。
それを追いかけ、威嚇射撃をすると、船の真ん中にしゃがみこんでいた黒服の女が両手を挙げた。
「ジヨー、そいつを縛り、転がしておけ。」
秋山は、顔の前で手を合わせて懇願する、やせた女の両手を後ろ手に縛った。
女を艇に乗せ、拿捕したサンパンを曳航して帰投する。
基地にベトコン容疑者を尋問するため、南ベトナムの国家警察官が3人やってきた。
水兵たちが見守る中、下腹の出た中年男の警察官が尋問を始めた。
そして、慣れた手つきで女の胸に電極棒を押し当てた。
女は蛙のように飛び上がり、悲鳴を上げた。
“ベトコンが村に来て、夫を連れ去った。夫を解放したければ、米を運ぶよう言われた。”
女はベトコンとして拘置された。


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