朝一番のお客さんというのは、キモチ的に結構重要なポイントだ。
私たちは勝負師ではないがいろいろとジンクスがあって、例えば開店早々にカフェにお客さんが来たらその日は一日ヒマ、だとか、この音楽をかけてるとお客さんが来ない、とか……うーむ、ヒマばっかしやん。
そんな大事な朝イチなのに、店を開けると同時に入って来たのはおばあちゃん二人連れだった。
「お茶だけ、ええ?」
「バスに乗り遅れちゃってねぇ」
「次のバス、何分?」
「39分だわ」
「ああそう。じゃあそれまで待たせてもらおか」
「私はアレだわ、アイスコーヒーでええわ」
「まー次のバスには乗らないかんで」
「……アンタ時間になっても来んもんで、タバコ屋のあたりにでも見えたら、運転手さんに言って待っとってもらおうと思ったけど、アンタちぃとも姿が見えへんであかんわ」
「まー悪かったねえぇ〜。でもさ、アンタが…」
口を挟む間が見つからず、呆然と立ち尽くす059。
「アンタ、とにかく先に注文せんと!」
若い方のおばあちゃん、どうもありがとう。
「クモ膜下出血だわ」
………アイスコーヒー改めアップルジュースをすすりながら、朝イチからこんな話題…。
もう、今日は絶対あかんわ。
「ほーかね……大変だったねぇ〜。で、バス何分やった?」
「39分だわ」
「まーそれにしてもねぇ〜…」
この調子で39分に間に合うのか?まあ近くなったら声かけよう。
「O脚の手術したんだわ」
お、お、O脚の手術!
私もどちらかいうと、O脚なのだが……。手術かよ……。
「アラ、ほんとぉ?大変だったねぇ〜。で、誰が?」
「はぁ?私の兄嫁だわ」
あ、あ、兄嫁??!!
年上のおばあちゃん、どう見ても80はいってます。そのお方の兄嫁で?
えええ??
「あ、もうそろそろ出んと!」
「あ、ホントやね。ごちそうさま……あーいい、いい。私が払うで」
あ〜〜〜続きが気になる〜〜。
嵐のようなおばあちゃんたちは、39分のバスに乗るべくドタドタ出て行った。
案の定、その日は一日ヒマヒマデーだった。
おまけに80過ぎのおばあちゃんの兄嫁が手術までしたという、O脚のことが頭から離れなかった。
こわいなあ、O脚。立ち方気をつけよっと。