……くせぇ!
と思ったらチェ・ホンマンが店の中に立っていた…と思ったらヤモだった。
ヤモは東京のメーカーさんの営業担当だ。今どきの若いヤロウなのだ。アカノちゃんに言わせれば「子鹿のような」瞳をしたチェ・ホンマンなのだ。とにかくデカイ。164cmの私がヒールを履いていても見上げるほどデカイ。
それはいいのだが……クサイ。
私アンタと今日飲みに行くのヤダ。
「なんすか!失礼な!」
だってアンタくさいもん。
私は香水が苦手なのだ。いや普通に香るくらいは全然へーき。でもたまにいるでしょう、一瓶ぶっかけたんじゃねーの?みたいな人が。こんなん得意な人いないだろうけど、あ、でもいるんだなあ。
ヤモ、香水つけすぎ!頭痛くなってきた。
「って言われても……。そーすか?」
営業もそこそこに、おしぼりで手首やら首筋やら拭かされるヤモ。
かわいそー、こんなに面と向かって「クサイ」とか言われちゃって。まあ言ってるのは私だが。
「イヤ、いいっすよ…。もう、慣れました」
ナニさ…その言い方。
「オレ、今日、ブーツもクサイんですよ」
は?そーなの?
「そう。なんかカビ臭いんですよ。だから靴脱がなくていいとこにしてください」
…カビくさいのかー……。
「昨日飲み過ぎて、風呂も入れなかったし」
身体もクサいのか!3重苦かよ〜〜。
その後臭覚疲労をおこしたのか、そんなにニオイも気にならなくなったので、ナゴヤ名物を食べに出かけた。ヤモは初ナゴヤ飯なので、まずは無難に鶏だな。ナゴヤコーチンだ。
ヤモはウマイウマイ!とモリモリ食っていた。モリモリ食う男っていいな。
どする?2軒目。台湾ラーメン行く?
「行きましょう!」
ナゴヤ名物はいろいろあるけど、麺類でいえば味噌煮込みうどんが有名だ。だが、あんかけスパもおいしいし、この台湾ラーメンもナゴヤ発祥でウマイんだぞ。
席についたヤモはまず台湾ラーメンの安さにびっくりしていた。そして運ばれてきた実物を見て「あ、小さいんだ」と言った。
フフフ、小さいからってバカにすんなよ。小さめの丼にはワケがあるのだ。
ズズッ……ブホッッッッッッ!!「い、イタイ!!」
辛い辛い台湾ラーメンをヤモは普通にすすり、思いっきり吹き出していた。
そして見る間にどんどん顔が赤くなり、汗がどばどば出て来た。すごいなあ、人間ってこんなに一気に水分出るんだなあ。
ああ、おもしろい。
隣の席のカップルの女のコまでが、微笑ましいという顔でヤモを見ていた。
ヤモは図体はデカイのだが、性格は少し乙女が混じっている。一生懸命なのか計算なのかわからないところがあって、私的にはどっちでもいいので、単純に「おもしろいヤツ」だなあと思っている。
ところで台湾ラーメンにはたっぷりニンニクが入っている。
ヤモはきちんとブレスケアしたのだろうか?一応しとけ!とは言ったけども、ちょっと心配。
香水にカビくさブーツ、そして体臭、おまけにニンニク。これじゃあ4重苦だ。
いくら見ためがいいヤモでもさすがにキツいぞ。
でも普段は、香水以外は気にならないからな…。
今度の展示会、お願いだから香水つけないでね。
まあまたクサかったら言うけど。
せっかくの出張営業なのにクサイ連発しちゃってごめんね。一応あやまっとくわ。
ホンマン扱いは…ホントだからいいよね。

0