中央線に乗ったのだ。浅草橋から代々木まで行くのだ。
秋葉原で人がドドドッと降りたので、座って本を読むことにした。隣にはおかっぱ頭にシルバーフレームのメガネをかけた推定19歳の男子が座っていた。ビミョーに古いタッチの少女マンガを読んでいた。ま、代々木に行く線だしね、と思った。
そして二駅くらい過ぎたあたりで、彼がゴソゴソしたと思ったら、何かをリュックから取り出した。
アルミホイルに包んだおにぎりだった。
…え??手作り?おにぎり?ここで?今?
マンガを読んでクツクツ笑いながらアルミホイルを広げる彼。
隣から湿った海苔のニオイが漂って来る。
遠足のニオイだ…。車内遠足。
そして新幹線。
また遠足のニオイがした。
なんでだ!夜7時すぎの新幹線はビールのニオイとおつまみのニオイ、あとはお弁当のニオイのはずなのに。
ちらっと通路の反対側を見ると、お弁当箱を広げている人がいた。きちんと包んであったらしく、ヒザの上には四隅に結んだ跡が残るハンカチが広げてあった。推定25歳のサラリーマンだった。
売っているお弁当と、おうちで作って来たお弁当はニオイがちがうのだ。
おうちのお弁当は、やっぱり湿ったニオイがする。
子供がいると全然普通のことなんだけど、大人、それも一人だと、車内で手作りのものを食べるのはなかなか勇気がいるコトだと思う。まわりの人の(家から持って来たんだ………)みたいな視線もなかなか痛い。
かく言う私も、そーいう痛い視線にさらされたことがある。
出張の前夜、近所のスーパーに行ったら大好きな菓子パンが半額になっていたのだ。
半額だぁ〜〜!
どうせ新幹線乗る前にパン買うんだし、持って行けばいいや。
で、早朝の新幹線。
私は忘れていたのだった。朝7時台ののぞみには比較的きっちりした会社員の方々しか乗っていないのだ。大体が、日経かスポーツ紙、そして缶コーヒーを手に持っている。その車両中にこんな浮かれたカッコをしているのは私しかいない、という状況がよくあるのだった。
ましてやその時は3人掛けの真ん中だった。
誰も朝メシ食ってねーじゃん!みんななんかどんよりしてるし〜〜〜。
でも私は朝メシを食いたい女なので、車内販売でコーヒーを買い早速バッグからパンを出した。
パンなら家から持って来たとはバレへんやろ。
と思っていたのも、パンを出すまでだった。
『半額!!』
というシールがべったり貼ってあった。
どう見ても家から準備して来たパン。それも半額。
両隣の会社員さんたちは、薄目で見ていた。この薄目は、ヒジョーに痛かった。
恥ずかしかったので「半額」シールを剥がそうとしたのだが、気にしてるのがバレて更に恥ずかしさを増す結果になっただけだった。
中央線の手作りおにぎり、夜の新幹線での手作り弁当、朝の新幹線での半額パン。
……半額パンが一番レベル低い。なんてったって前日仕込みだもん。