表参道の焼き鳥屋で、
スカさんに「誰か紹介せい」と頼んでいたのだった。
「どんな人がいいの?」
と聞かれ、ちょっと考えてはみたのだが具体的に全く浮かばない。
理想を言えばアナザーさんと個人名は出るのだが、そんな夢のよーなことを言うほど若くないので、それは口に出さずに考えてみた。
あげく出た答えが「自分の稼ぎでちゃんと一人で暮らしてる人」。
……あーあーロマンチックのカケラもない答えだ。
どんな人がいいか、は出なかったのだが、こんな人はイヤだ!というのは出た。
それは2軒目に行ったバーでのことだった。
キューバ系のバーで、店に入った途端ラムと葉巻の匂いがした。
だが、そんな大人っぽい雰囲気をぶちこわす音がたまに響く。テーブル席のサラリーマン5人組の方からだ。
『…んぐぁ!』
えーとぉ〜。もしかして鼻ですか?…でもまあ…ねえ。たまたまかも……。
『……んぐぁ!』
それにしても、笑う時に鳴ってしまうのならまだいいのだが…。
『んぐあ!!』
アンタの法則がワカラン!どのタイミングやの!
どーする?好きな人があんなに鼻鳴らす人だったら?
「え〜どーするかなー?…」
あ、でもさ、好きになる前の段階でわかるわ、あれだけ鼻鳴らすって。そしたらまず間違いなく好きにはならんな。
「どれだけカッコよくても?」
うん!絶対やだ。
スカさんは?その子がすんげぇかわいいの、で、性格も超よくてさ、でも鼻鳴らすの。
『…っんぐぁ』
……あんなカンジで。
「カワイイのかー……。言うかな、ソレやめない?って」
でもクセなら直んないよねぇ。横で寝てたりしても鳴るんだよ。それもいつ鳴るかわかんないんだよ。鳴らないかもしれないしさ。鳴るなら鳴り続けろって話だよ。……いつ鳴るかわかんないからドキドキするよ。
「で、たまに呼吸とまってたりするんだよね」
いつの間にか、鼻鳴らしがイビキの話に変わっているが。
もちろんその間も、何度となく鼻を鳴らす音が響く。
一緒にいる人たちは気にならんのか?!慣れてるのか?
私とスカさんは、彼が鼻を鳴らすタイミングを考えたのだが、全く法則性がわからなかった。あいづちとして鳴らすのか、話し出す直前に鳴らすのか、ナニもなくただ単に鳴ってしまうのか。
あーアタシやだなあ、鼻鳴らす人はいやだよー。紹介してくれるにしても、鼻鳴らさない人にしてね。
「あんな鳴らす人、知り合いにいないって」
バーでしっぽりのはずが、見ず知らずの人の鼻鳴らしについてずーっと語り合った私たちなのだった。
『んんぐぁ!……ごちそうさま!』
あ、帰っちゃう!どいつだ?あのサラリーマン5人組のうちの誰かだよね?
思い切ってガン見してみたのだが、誰も鳴らしてくれなかった。
誰だったんだ?!
もう!鳴らしてほしい時には鳴らしてくれないんだよな。くっそー。
鳴らしてほしいんだか、ほしくないんだか……。