客足もバッタリ途絶えた午後7時、カフェに横付けされた車。
運転席あたりからブンブン誰かが手を振っているのが見える。見えるが、店内が明るくて外は暗いので全く顔などはわからない。
誰だよ??………車の中からあんなに手を振る人、ト言えば………。
「おねーさーん!ひさしぶり〜〜〜〜!!」
マ、マオちゃーーーーん!!!
朝ニュースで見たばかりの
マオちゃんだった。
マ……。
「おねーさん、TV出たんだって?!マイが見たの!すごいおもしろかったって言ってた」
う…マ、マオ…ちゃ…。
「マオも見たいー!」
「おねえさん、やりあったんだって?B東さんと」
ママ…。いや、やりあったってゆーか、ちょっとカチンときたんで。勝手なことゆーな、ト。
「アハハハハハ!」
マオちゃん、そんなに笑うとこじゃないよ。
「あのね、私たちもね〜おねえさんとこのそーいうとこが気に入ったのよ〜」
そーいうとこ、とは?
「ホラ〜お客に媚びないっていうか、こっちのやり方が気に入らなきゃ来なくていいよってとこ」
「うん!」
イヤイヤイヤ!誰もそんなコト思ってませんて!そんな、人を頑固オヤジみたいに。
「そこがいいのよ〜」
「アハハハハ」
だからマオちゃん、そんな笑うとこじゃないって。
でもマオちゃんてすごいなって思ったよ。
「なにが?」
だってTVでしゃべるってすごい緊張したもん。普通にしゃべるだけでも緊張したのに、マオちゃんなんてもっと大変なんだもんね。すごいよ。
「ウン、いろいろ考えるとしゃべれなくなる」
そーかー。
そりゃそーだよね……。
「おねーさん、こーいう風に言ってくれってTVの人に言われたんですか?」
言われないよー。普通にしててくれって言われただけ。
「それで言い合っちゃったんですか?」
う、うん。だって…。
「アハハハハ!」
「そこがいいのよー。初めてここに来た時『おねえさんはコワイけど、ここはイイ!』って言ってたんだもんねぇ〜、ねえマオ」
「そうそう、アハハハ!」
なぁ〜にを言っとるですか?!マイちゃんとマオちゃんだって、最初の頃ウチでなんて呼ばれてたか知らないでしょー?!
「エー!ナニナニ?」
『すいません姉妹』。すぐ「すいませ〜ん!」って呼ぶから。
「アハハハハハ〜!」
マオちゃんはどんどんキレイになっていく。
でも大きな口を開けて「あははは」と笑う顔は、昔からまったく変わらない。
私たちには想像もつかないくらい大変なコトを抱えているのに、まわりにはそんなところを全然見せない。
そこがいいのよー!
ト、言いたいのはこっちの方だけど、そんなこと言うと本気で嫌がるから言わない。
言わないけど…そこもいいのよー、ホントに。

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