ヴィッツさんはスラリとしている。細くて長い脚でいつもきちんと座ってケーキを食べている。私と同年代なのだが、とにかく品がいい。
イメージとしては、図書館の司書とか大学教授の秘書とか…そんなカンジだ。そして大事なトコだが、独身。
ヴィッツさんはその名の通り、某TOYOTA車に乗っている。イメージ通りの堅実さ。
ヴィッツさんはケーキセットを食べて、お惣菜をテイクアウトしてくれる。お客さんが少ない時など、ヴィッツさんが来ると、私も059も少しホッとしてしまう。買ってってくれるかな〜と期待してしまうのだ。
「すいません、ロールキャベツはいくつありますか?」
キタキタ。
「えっと〜あと5コありますよ」
「じゃあ…4コ下さい」
なぜ1コだけ残すのだ!
……どうせならあと1コ……イヤイヤ4コでもありがたいことだ。
「この豚しゃぶと蒸しナスの梅マヨサラダ?ですか?これはどれくらいありますか?」
「量ってみましょうか?……あと400gくらいですね」
「じゃあ…300g下さい」
……なぜ100g残すのだ!
イヤイヤ、勝手に期待した私たちが悪い。
多分さ、お母さんと二人暮らしで、今日は弟さん夫婦が遊びに来るとかなんじゃない?メイン料理は作ってあって、サブっぽいのが欲しかったんだね。
私と059はヴィッツさんに関して勝手にこんな予想をしていた。
だが…。
ヴィッツさんがダンナさんと来た。
ダンナさんがいたのだった。独身じゃなかった!
「……がっかりしたね」「ウン…ヴィッツさんにはだまされたよ」
はっきり言うが、ヴィッツさんは一度も独身だなんて口にしていない。
私たちが勝手に思い込んでいただけだ。
それにしても…あんなに生活感がない奥様なんてアリでしょうか?
ところで、ヴィッツさんが来ているのにいつもの白い車が駐車場になかった。
どこかよそに停めてあるのかな?
ヴィッツさんが買い物を終え、駐車場に向かって行く。
ラベンダー色の車に手をかけている。
「車変えたんだね!ヴィッツさん」
「もうヴィッツさんじゃなくなっちゃうじゃん」
「え〜ヴィッツさんはヴィッツじゃなくっちゃ〜…」
大丈夫だった。
ヴィッツさんはNEWヴィッツに買い替えていたのだ。
最後には期待に応える女、それがヴィッツさんなのだ。