この病は、大体三ヶ月に一度顔を出すのだ。
症状としてはとにかく「スシが食いたい!」。
スーシスシスシ、スーシスシスシ。
こうなったら、スシを食べないともう治まらない。
というわけで、私たちは寿司屋に向かった。
が、考えが甘かったことがすぐ判明した。
私たちが行こうとしていた、廻る寿司屋は22時で閉店だったのだ。
駐車場にさしかかったのは21時40分だったのだが、車を停めている間に店側は入り口付近のライトを消し始めた。
チックショー!次だっ!
すぐ近くのもう一軒の前を徐行してみたが、ソコもやはり22時までらしく閉店準備をしていた。
「あ!あそこは?確かやってたと思う……」
よっしゃー!少し前のめりで3軒目に向かう。
チックショー!暗いじゃねーか!
「どーするー……?」
どーするもこーするもないのだ。こうなりゃ店がたくさんある大通りまで出るぞ!
廻らない寿司屋であれば、やっている時間なのは重々わかっているのだが、それは経済状況が許さないのだった。
「なんでこんな早く終わるかねー?スシなんてさー飲んだあとにちょこっとつまむ人だっているかもしれんじゃんねー」
今まで、廻る寿司屋の営業時間なんて気にしたことなどなかったくせに、この言い草だ。
「あったーーー!!」
ソコは大通りに面した店だった。オープンしたばかりらしく、開店祝いの花がまだ残っていた。
「っらしゃいまっせー!」
お客さんの姿が見えないが、そんなことはどうでもいい。
スシの病をおさえなくては。
だが唯一の客である私たちは、廻る寿司屋なのに、カウンター越しに板サンと向き合ってマンツーマンで握ってもらうはめになってしまった。
いくつかポイポイと食べ、スシの病も落ち着き改めて店内を見渡すと、壁に魚へんの漢字がたくさん書いてあった。
「マグロとかさサバとかサンマはわかるね」
「アレはなんだ?魚へんに春」
「サワラだ。じゃああれは?魚へんに雪」
「タラじゃん。あれは?海胆」
「??海の胆?なんじゃ??」
ぼそぼそと小声で読んでいたのに、板さんに気づかれてしまった。
「アレはウニですね。ちなみに隣がにしん、ぶり、あわび…」
聞いてねーっての。
「その隣はわかりますか?魚へんに盧」
知るかいや…。でも板さんの目が挑戦的でムカつく。ムカつくのだがわからない。でもわからない、と答えるのは絶対いやだ。
「なんでしょーねー?じゃあ会計お願いします」
きっぱり言って立ち上がった。
私はスシを食いに来たのだ。魚へんの漢字の勉強に来た訳じゃない。
でもくやしいので、家に帰ってソッコー調べた。
鱸、今の私にはなんて読むのかわかるんだぞ。はっはっは。
でもおしえなーい。
スシの病がやっと治まったので、もうスシのことは考えたくないのだー。

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