ドアの前に立った時にすでに少し後悔した。
中では男達が思い思いの姿で鏡に向かっていた。
みなさん、腹がホワイト餃子のように割れている。
私たち4人は、ボクシングの体験に来たのだった。
ボクササイズではなく、マジボクシングなのだ。
つまみ枝豆似のコーチが担当してくれるらしい。
おずおずしながらストレッチをしたあと、枝豆コーチが縄跳びを持って来た。来る前にハルリラが「縄跳び千回とか言われたらどうしよう」と心配していたのだが、ホントにどうしよう。
「ボクシングは3分刻みだから、トレーニングも3分刻みねー。3分やって3分休憩」
30秒もたたないうちに、すでにヒザががくがくしている。なのに、ハルリラとF尾は余裕くさい。私の次にヨタってきたのは059だった。
カーン!
3分ながっ。だが、この縄跳びはさらにもう3分追加された。
もう死ぬかと思った。
次はシャドーボクシングだった。
枝豆コーチが、足のスタンスはこう、構えはこう、と詳しく説明してくれる。なのだが,アゴをひいて左手で顔をカバーするファイティングポーズで説明しているので、イマイチ声がこもって何を言っているのかよくわからない。とりあえず、枝豆コーチのマネをしてみる。
なーんかヘン!絶対ヘン!
何分かやっているとなんとなくコツを掴めて来た気がしたのだが、枝豆コーチに向かって「ワン・ツー!」とかやりだすと、なーんかヘンなのだ。
「なんかヘンですよね?私」
「いや大丈夫、いいよー」
枝豆コーチはそう言うのだが、明らかに私と059チーム、ハルリラとF尾チームで対応がちがう。
次にグローブをつけてのシャドーになった。
そうなったらもう、枝豆コーチはハルリラチームにつきっきりになっていた。私と059の方には、ブラックなコーチがついてくれた。
ブラックなコーチは本当のブラックなブラザーだったので、枝豆コーチに輪をかけて一体何を言っているのかわからなかった。でもわかったところで言われた通りにできるワケじゃないので、気にせず見よう見まねで「ワン・ツー!」と打ち続けたのだった。
途中で気がついたのだが、どうも私の手は手首で内側に曲がってしまうのだった。なんかヘンだったのは、このせいもあったのだ。
どうみてもワタナベ直伝の猫パンチだ。
「ワン・ツー!ワン・ツー!にゃん・にゃー!」
わはははは。
ブラザーコーチにサンドバッグを押さえてもらいつつ打ち込む059、横で猫パンチの私。
あっちの鏡の前では枝豆コーチが「スジがいいよー」とハルリラとF尾に言っている。F尾がだんだん無表情になってきた。獲物を狙う目になっている。力石だ。
約1時間の体験を終え、入会の説明をしてくれた枝豆コーチだったが、まあ決まりだからするけどもどーせこいつらこねぇだろうな的なあきらめた態度であった。多分、クールダウンのストレッチをしている時のハルリラ・F尾の会話が聞こえていたのではないだろうか?
「縄跳び、家でやればいいんだねー」「このワン・ツーも、家でできるね」
枝豆コーチ、がっくりである。
それにしても、私にはどーにも似合わないスポーツであった。
ワン・ツー、のタイミングもなんだか最後までつかめなかった。
相手をしてくれたブラザーコーチも「ワ、ワ、……ワ、ワン・ツツツー」と私にはついてこれなかったようだ。
ワン・ツーはもういいや。亀田兄弟にまかせとこ。