「攻殻機動隊 Stand Alone Complex Solid State Society」
映画
2006年/日本 (監)神山健治
(声)田中敦子 坂脩 大塚明夫 山寺宏一
☆☆☆☆
O先生からお借りしたたくさんのDVDの中に混ざっていた1枚がこの作品。何となく見てみたのが、私と「攻殻機動隊」との運命の出会いであった〜。
この作品のあまりのレベルの高さに、ビックリしてしまったアニメに疎い私は、その後O先生におねだりして、テレビシリーズの一部を借り、足りない巻はレンタルして全話を見たのですが、この作品には私がドラマに求める全てがあるのです!まったく、アニメがこんなにレベル高くって良いんだろうか、これで良いのか、日本は!?と憤りを感じる位素晴らしい作品です。(笑)
あんまり好きなので、どうやってまとめたら良いか悩んでいたのですが、最初の出会いの作品でもある「Solid State Society」をピックアップしてこの作品のどこが凄いのか、私なりに感じたところを文章にしてみました。
時は西暦2030年。第3次、第4次の世界大戦を経て、世の中は科学技術の発達により、人々の電脳化、義体(サイボーグ)化が進んでいる。そのために特殊化した電脳犯罪が多発する中、犯罪の阻止を目的として総理大臣直轄の特殊部隊、公安9課が設立される。
9課の面々。
リーダーは全身義体のスーパーウーマン、草薙素子。1stシーズンの「Stand Alone Complex」 2ndシーズンの「2nd GIG」を通じて、課を率いて来たが、2ndシーズンの最終話で、組織というものに限界を感じた彼女は9課を去ってしまう。
この「Solid State Society」では、20,000人に及ぶ子供の誘拐事件をきっかけに、素子が9課に戻ってくるまでが描かれています。ストーリーは単純ではないので、詳しくは書きませんが、まず何が素晴らしいかと言えば、この入り組んだドラマの複雑性があげられる。単純な完全懲悪ではなく、そこには政府の意向が介在し、外国からの圧力もある。社会問題が底辺にあり、個人の力では及ばない大きな社会の流れがある。
もう一つは、これは神山監督の感性だと思うのですが、技術は驚くほど進化しているのに、人間
というものが全く変わっていない社会の描写の素晴らしさ。政治家も官僚も、利権構造に組み込まれて今と何も変わっていない。ネット犯罪に汲々とし、外国人難民の問題等、国としての問題は山積み。アメリカは帝国となりその強大な力は、有無を言わせないが、中国との関係もあり日本の立場は非常に微妙だ。現実離れした科学技術と平行して描かれる、現在との延長線上にある世の中の様子との対比が何とも言えないこの作品の魅力になっている。
後はもちろんキャラクター設定。今回のこの映画では、素子という求心力を失いながら、何とか課を存続させて行こうというメンバーの姿がまずは描かれているのも、泣けてきます。義体化率も低く唯一警官あがりのトグサが隊長になっているファースト・シーンからまず心打たれますが、杖をつく様になった荒牧課長、ちょっとすね気味のバトーなんかの描写も良い。9課のメンバーは、すべからく正義のために戦う、戦いのプロフェッショナル達。だが、正義が通用しないシチュエーションにいつも身を置いている。これはね、やっぱりハードボイルドなんですよね。
やっぱり、ここでは語り尽くせないので、是非未見の方はテレビ・シリーズをご覧になって見て下さいませ。私が言いたい事がきっとわかってもらえると思うんだけどな〜。
尚、押井守監督の劇場版2作品について少し。
「Ghost In The Shell」(1995年)☆☆☆★★
「イノセンス」(2004年)☆☆☆★★
この2本は、テレビシリーズとは世界観の全く違う作品。
特に「イノセンス」は、攻殻機動隊がベースになった作品である必要は全くないと思うんだけど・・。私は両方とも好きじゃないです。アート的にはレベル高いのですが、私は攻殻機動隊にはそれは求めていないんですよね・・。(押井監督のファンの方すみません)
士郎正宗の原作のコミックは読んでいないので、どちらが原作に正しい世界観なのかはわからないのですが、私は神山監督の描く世界が好き。もっともっと書きたい事、山ほどありますが、今日はこの辺で。
皆さん、「攻殻」見てね〜〜。ちなみに私は9課のメンバーの中では石川が好きです。(笑)


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