セル
スティーブン・キング著 新潮文庫
上 ISBN: 978-4-10-219359-4 ¥740(税込)
下 ISBN: 978-4-10-219360-0 ¥740(税込)
☆☆☆★★★
穏やかな陽射しが落ちる秋の一日。ボストン午後3時3分。未知のパルスにより世界は地獄へと姿を変えた。その時携帯電話(セル)を使用していた全ての人々が、一瞬にして怪物へと変貌したのだ!主人公のグラフィック・ノヴェル作家のクレイは阿鼻叫喚が繰り広げられる街中で呆然としていた。一体何が起こったのか?
待ちに待ったキングの新作。以前は必ずハードカバーで出版されていたものが、最近では文庫からスタートになってきたのがさびしい限りですが、(財政的には助かるけど)確かに交通事故をおこして九死に一生を得た後の彼の作品は、以前の様なパワーがなくなってきたいたのも事実。
そんな中久し振りで、かなりしつこいキング・ワールドの繰り広げられる作品が発表されて、嬉ししい限りでした。
とにかく、このバカバカしさと、しつこさは、やっぱり日本人にはムリ。うんざりする位のアメリカ的エンタテインメント主義に、浅はかなジョークの類。あれこれと矮小な家庭的問題を抱えっぱなしの登場人物達。
「地獄に落ちる前に、本物のロックが聞きたいぜ。ベイビー。」
ここに私の愛するキングの描くアメリカがある。「キャリー」以降、ずっと愛しつづけてきたキングの世界。彼が言うところの「文学界のビッグマック」がここにある。
ボリュームもあるし、おいしいし、何しろ安いじゃないか。でも、体に良いとは決して言えないよ。胸焼けだっておこしかねないしね。
しかしハイテク嫌いのキングらしく、今回のターゲットは、そうです、ムカツク事では右に出る者のない携帯電話。携帯を使ってない少数民族は本当にラッキーだよ。だって、頭のいかれたモンスターに落ちぶれなくて済むもの。何しろ、携帯から流されたパルスによって、脳内を初期化され、新しいデータをダウンロードされずに済んだからね。
でもどうやら、そのデータにはウィルスが混ざってた様だよ・・・。ふふふ。

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