一度も植民地になったことがない日本
デュラン・れい子著 講談社α新書 ISBN 978-4-06-272448-7
☆☆☆
新聞の広告を見て、思わず買ってしまったこの本。はっきり言って、うすっぺらな内容で、買って損した感じです。このタイトルはずるいよな〜。
著者は元博報堂のコピーライターで、スウェーデン人の男性と結婚後、ヨーロッパ、南米を拠点にしながら、アーティストとして活動。現在はフランス在住でヨーロッパの美術を日本へ紹介したり、桐野夏生の「柔らかい頬」のフランス語訳なんかもしている女性。
私も以前から、日本が欧米の植民地にならなかった事に興味があったので、楽しみに読み始めたのですが、一般人のブログ記事レベル並位の感想なんかが書いてあるだけで、まったく中味がない。まあ、気軽に読む分には良いのかもしれないけど。第一、タイトルにかかげた問題位は、もうちょっと調べるとか、自身の見解を述べるとかしたらどうなんだ!とうんざりしてしまいました。
で、なんでそんな本を記事にしたかと言いますと、1ケ所だけ気にかかって仕方なかったくだりがあるからなのです。
ある日、著者がヨーロッパ在住の南米の女性から「あなたの国のマスターズ・カントリーはどこなの?」と聞かれる。「マスターズ・カントリーって何?」と聞き返したところ、「欧米のどの国の植民地だったのか?」という内容の質問で、著者はビックリしてしまうと言うくだり。「日本は植民地になった事がないのよ。」と返事をすると、「ウッソ〜!」みたいな態度をとられたと言うのです。
「マスターズ・カントリー」!Master's Country !?「ご主人様の国」か! ここを読んだ時はさすがに私も著者と同化してショックを受けてしまいました。「おお、何という中華思想」「何という白人優位主義」。知識では知っていても、もし直接、外国でこんな質問をされたら屈辱で、人間性まで卑屈になってしまいそう。これが、歴史なんだな・・、これが欧米列強が今までしてきた事なんだな・・と感覚的ではあるけれども理解できた気がしました。
さらにビックリしますが、アジア、アフリカ、南米(欧米以外の国)で、植民地化されていないのは、日本とタイだけなんだそうです。たまさか歴史上、地理上、政策上の運なんでしょうが、これはやはり幸運と呼ぶべきなんでしょうか?
又、別の本で読んだと思うのですが、同じ様に植民地政策をとってひどい事をしても、欧米なら仕方ないけれど、日本は絶対に許せない!みたいな感情を、日本の植民地になった国々は思うらしい。そう、白人優位主義は、有色人種の心の中にもあるのです。そういう私も、昔からアングロ・サクソン贔屓を公言して憚らなかったし、恥ずかしいけど今でもそういうところがある。
しかし、少なくとも、自身の国民性を恥ずかしむ事なくいたいと思う。日本は、何だかんだでかなり凄い国だと思うし、誇りに思う部分もたくさんある。(最近はちょっとうんざりもしてるけど。)結局、どの国にも一長一短があり、どの国がベストだみたいな事は決して言えない。同じ人間が営む国家なのだから、問題があるとしたら、歴史がひきずってきた様々な負荷故なのだろうと思う。
そろそろ人間は、ローカルな文化を大切にするとともに、グローバルな視点で人類を見つめなおす時代に入るべきだし、入らないとこの先はかなり厳しそうな気もする。「マスターズ・カントリー」なんて言ってちゃダメなのよね〜。
この本は、全然お勧めしませんが、(笑) 私にとっては、しばしそんな事を考えさせてくれた本ではありました。

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