昨年末に、NHK教育でやっていたETV特集、「大東京の真中で、一人 〜詩人・中原中也を歩く〜」と言う番組を見た。騒々しい番組ばかりやっている年末年始にあって、静かに楽しめる良い番組でした。しばし、中也の生涯に思いを馳せる。
http://www.nhk.or.jp/etv21c/update/2007/1230.html
番組のナビゲーターを作家の町田康がつとめていて、その真摯な取材ぶりにいたく感心してしまった私は、早速彼の作品を読んでみることに。
立て続けに5冊ほど読んだのですが、まず一言でいうと、「この人、凄く良い人だよね〜」っていう事。何でパンクしてるのかって言えば、彼があまりにもまっとうなんで、この世の中に耐えられないからなんだな・・と。
一番面白かったのは、やっぱりエッセイ。
「耳そぎ饅頭」
講談社文庫 ISBN 4-06-274968-8 ¥667(本体価格)
☆☆☆★★★

これは中年にさしかかった彼が、こんな偏屈なままではいかんとばかりに、世の中で普通に行なわれている色々な事にチャレンジしてみる内容。ディズニーランドに言ったり、食道楽をしてみたり、散髪屋に行ったり、温泉に行ってみたりする。とにかく本当におかしくて、本人いわく上方者なのに、江戸前の粋なセリフまわしがお好きな彼は、文章に巧妙にこれを混ぜ込んでくるので、本当におかしい。気楽に読めるし、笑えるのでお勧めです。エッセー系の本は、他にもいっぱい出てます。
「実録・外道の条件」
角川文庫 ISBN 4-04-377701-9 ¥438(本体価格)
☆☆☆★★
半分ドキュメンタリー、半分フィクションって感じの内容。彼が、人生の中で出会った最低の人間達がテーマ。名前とかシチュエーションを変えてあるんだけど、ほぼドキュメンタリーです。(笑)嫌な目にあわされた奴等への仕返しの作品、と後書きで述べられてました。表紙の写真、非常にハンサム。アラーキー撮影。
「パンク侍、斬られて候」
マガジンハウス ISBN 4-8387-1490-4 ¥1,600(本体価格)
☆☆☆★
長編時代小説。中味はめちゃくちゃ。腹ふり党なる新興宗教により、恐慌に陥るとある藩。赤塚不二男的ナンセンス。マンガにはすでにあった類で目新しさはないのが、私は残念だった。ま、パンクって言えば、パンクなのかもしれん。もうちょい世界観を広げて欲しい。フィクションにはうるさいよ、私は。(笑) 角川から文庫が出てます。
「浄土」
講談社 ISBN 4-06-212986-8 ¥1,600(本体価格)
☆☆☆★★
「権現の踊り子」
講談社文庫 ISBN 4-06-275351-0 ¥552(本体価格)
☆☆☆★★
この2冊は短編集。「権現の踊り子」は川端康成文学賞受賞作品。町田康の才能が、はっきりと現われるのは、短編集なのだと言う事がわかる。シュールさ加減、内容のオリジナリティー、文章の簡潔さ、などなど、感心するお話がいっぱいで楽しい。
「浄土」の中の「ギャオスの話」はくだらなくてかなり笑えます。「ガメラ対ギャオス」を見てないとダメです。ガメラがいれば、こんな惨事にはならなかったのだ。(笑)
「権現」の中では、川端賞受賞作より、私は「ふくみ笑い」が一番良かった。かなりのホラーです。映画にしても良い位。素晴らしい。
何となくイメージで、彼の作品はもっとアバンギャルドだったり、ナイーブな感性なのかと思ってましたが、どの作品からも溢れてくるのは、正統派の香りでした。変なお話ばっかりだけど、感性はトラッド。実にしっかりしたもんです。強いよ、彼は。
追伸
今回、スーさんに彼の本をたくさんお借りしました。ありがとうございます!読んでてとっても楽しかったよ。

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