LE FEU FOLLET
1963年/フランス (監)ルイ・マル
(演)モーリス・ロネ ベルナール・ノエル ジャンヌ・モロー
☆☆☆☆
ブルジョアの退廃的な生活に溺れてアルコール中毒になった上、精神を病みベルサイユの病院で療養していたモーリス・ロネ。彼は完治した事からニューヨークにいる妻に連絡をとるが、彼女は一向に迎えには来ない。愛人の女性からもらったお金をもって彼はパリへ向かう。そして、かつて享楽をともにした、友人達を一人づつ訪ねて歩く。しかし、彼らを別世界の人間としか見れなくなっていた彼は、病院へ戻り、読みかけの本を読み終えると、ピストルを心臓にあて引き金をひいた。
開巻、愛人とベッドをともにしているシーンから、ラストまで冷酷なまでに、彼のはりつめた神経、絶望、孤独感をカメラは追っていく。一瞬、一瞬の微妙な彼の心理、それに続くリアクション。彼にとって、もはや人生は恐ろしいほどに意味のないものであり、友人達のみならず、町行く人々も、彼には理解できない存在となっている。バックに流れるのはエリック・サティの静かなピアノ曲。
1957年の彼の処女作にして代表作とも言える「死刑台のエレベーター」以来、ルイ・マル監督の作品を見るのはこれで2作目。(「プリティ・ベビー」も見てないんですよ!汗)モノクロの画像、静かに主人公モーリス・ロネの心理と行動を追っていく冷え切った映像。映像による心理小説と言っても良いかもしれない。
「生きるに値しない人生」に絶望する彼の姿は、観客に人生の意味を見つめなおさせてもくれる。人間の愚かさ。それぞれの魂の孤独。老いていく自身の姿への恐れ。そういったもののどれかに自分をシンクロさせる事ができるだろう。
フランス映画はやはり残酷です。

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