Capote
2005年/アメリカ (監)ベネット・ミラー
(演)フィリップ・シーモア・ホフマン クリフトン・コリンズ・Jr. クリス・クーパー
キャサリン・キーナー
☆☆☆★★★
「同じ境遇で育った二人だが、彼は裏口から出て行った。僕は、表玄関から出て行った。そんな感じなんだ。」
カポーティが、同行した友人のハーパー・リーに、一家4人惨殺事件の犯人の一人、ペリーに対する気持ちを打ち明けるシーン。この一言に、カポーティのこの事件に対する思い入れの深さが集約されていると思った。
カンザス州の片田舎で起きた惨殺事件。新聞でその記事に目をとめたカポーティは、雑誌「ニューヨーカー」の記者として現地へ取材旅行に出る。取材途中で、2人組の犯人が逮捕されるが、そのうちの一人ペリーに対し、カポーティは親密な感情を持つ様になっていく。取材の開始から、犯人2人の死刑まで、約6年の彼の心の軌跡を追った作品。
アカデミー主演男優賞を受賞したフィリップ・シーモア・ホフマンの演技は素晴らしく、映像も美しい。起きた事件の残忍さとは対照的に描かれる、犯人たちとの、日常的、かつ静かな対話の数々。
この映画の原作となったのは、ジェラルド・クラークによる伝記「カポーティ」。その中から、「冷血」の取材にかかわる部分をピックアップしての映画化の様です。翻訳本は、文芸春秋から出ているのですが¥6,300もする!(汗)もっと安くなりませんかの〜。映画の中では、ちょこっとしか語られていませんでしたが、彼の前半生を知らないと、本当の彼の胸のうちは理解出来ないと思うのです・・。
若きカポーティ
自らを「アル中でヤク中でホモ」の天才と公言して憚らなかったカポーティ。社交界で、もてはやされている様子も、映画の中にありましたが、そんな彼がなぜ、この事件に深く興味を抱き、そして「冷血」を頂点にして、以降自滅していったのか。
カポーティの「冷血」 In Cold Blood は1965年に発表され、ニュージャーナリズムの源流とされる作品。カポーティ本人は、ノンフィクション・ノベルと呼んでいる。徹底した取材により、膨大なデータを集め、それを再構成して現実の再現に迫る手法。
「冷血」新潮文庫 ISBN 4-10-209506-3 ¥940(税込み)
映画の中で、朗読会のかたちで本人が読み上げたのは、冒頭の文章だが、この出だしからカポーティの並々ならぬ文章の才能がわかります。もう、絶対、他の小説も読むつもりなのですが、やっぱり才能のある人の文章って全然違うのよね〜・・。映画には描かれていない部分がたくさんありますので、映画鑑賞後には是非。特に殺されたクラッター一家の描写は、映画では全て省かれていたので、必読ですよ。
今回、映画を見て知った幾つかの事を最後に。
1 「アラバマ物語」 To Kill A Mockinbird の著者でカポーティの幼なじみのハーパー・リーが取材に最初から同行していたこと。尚、「アラバマ物語」の中で最後に出てくる怪物と呼ばれていたディル(映画ではロバート・デュバルが演じた)は、カポーティがモデルだそうですよ!
2 ディックとペリー(犯人の二人)のポートレートを、何とリチャード・アヴェドンが撮影していた事!
3 カポーティがいつも飲んでるお酒はジンではないか・・という事。(こんな事はどーでもい〜か。)

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