双葉十三郎 著 近代映画社 刊 ¥1,680 (税込み)
ISBN: 978-4-7648-2126-2
敬愛する映画評論家の双葉十三郎氏が、雑誌「スクリーン」誌上で、連載していた「ぼくのベストテン50年」を単行本としてまとめたもの。今月の新刊として発売され、早速購入いたしました。映画好きなら是非、手元に常備していただきたい1冊です!私は、夢中になって一晩で読破しました。ここに載っている作品は全部見たいな〜。
1951年から2000年まで、年度ごとの著者選出のベスト10を解説付きで紹介した内容なのですが、映画を通して見えてくる世の中の移り変わりなども興味深いのです。
その年の1位に選ばれた作品の中から、ディケードごとに私の見た事のある作品1本をチョイスして傾向を考えてみたりして記事にさせていただきました。とても楽しい作業でした。
1951年〜1960年
まさに映画の黄金時代。欧米ともに名作のラッシュの時期。敗戦後の日本人がどれだけこれら名作の数々に精神的に救われてきただろうと、想像するにもあまりある感があります。そして銀幕のスターは、燦然と夢の様に存在していた時代でもある。(戦前、戦中ほどではないけどね。)
この時代の作品は、必ずや見た人にとって生涯の心の中の宝物になるであろう作品ばかり。50年代の後半には、ヌーベルバーグの旗手達の作品も発表されはじめ、新しい時代への息吹も感じられる。
ごみつチョイス1950’s
1952年第1位 「第三の男」☆☆☆☆★★
グレアム・グリーンの書き下ろし小説の映画化作品。この映画は私のオールタイムベスト1映画でもある。映画とはどういうものなのかという事を深く考える教材の様な作品。すべからくパーフェクトで、何回見ても打ちのめされてしまう。
観覧車を背景にした縦構図のショット。形容を絶する素晴らしい写真的なシーン。
あまりにも有名なラストシーン。感動で胸がつぶれそう・・。
1961年〜1970年
ニューシネマ時代の到来。社会も映画も「夢」の世界から「リアリズム」への世界へと
移行していく。映画が「夢の世界」としての吸引力を多少弱体化させながらも、新しい
表現形態の名作を排出してきた時代だな・・とも思う。引き続き黄金時代組も健在で、
ヨーロッパの巨匠達も油がのりきった作品を発表し、新しい才能も開花していた時代。
ごみつチョイス1960’s
1963年第1位 「鳥」☆☆☆☆
ヒッチコックの大ヒット作品で、突然鳥達が、人間達を襲い始めるという不条理サスペンス。何の説明もなく、ただただ鳥に襲われていく人間達を描いただけの作品だが、それだけに映画の手法もサスペンスのみに徹し、類希な作品になっている。
三島由紀夫のこの作品の映画評をちょこっとご紹介します。
「この無償の戯れと、商業的確実性との、みごとな結合については、言うべき言葉を知らない。
中略 この作品における徹底的なリアリズムが、実に徹底的なナンセンスの裏付けとなっている。 中略 火事場の大俯瞰に、鴎の数羽がせり出してくる見事なショットには、現実というものの、白昼夢と紙一重の姿がみごとにとらえられている。」
実際は1960年代には、私の2番目に好きな作品「アラビアのロレンス」(残念ながら1位じゃなかったの。)をはじめ、ヨーロッパの名作が目白押し。1965年の1位はフェリーニの「8 1/2」もあり、60年代初頭にはフランスのヌーベル・バーグ、後半にはアメリカン・ニューシネマも台頭してきた時代。私も産まれたし、めでたい、めでたい。
次回へ続く。

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