NHK・BSで、市川崑監督の金田一耕介シリーズが一挙放映されました。楽しみにしていた放映でしたが、久し振りの横溝正史ワールドを堪能した5日間でした。
1976年公開の第1作目「犬神家の一族」から金田一耕介の最後の事件である「病院坂の首縊りの家」まで、全5作。主演の金田一を演じるのは、石坂浩二。レギュラー配役としては、県警の等々力警部を演じる加藤武。(「よ〜し、わかった!」の警部ね。)尚、この警部は、毎回違う県警の等々力警部で、金田一とは毎回初対面という設定です。
犬神家の一族 (1976年)
あおい輝彦 島田陽子 高峰三枝子 草笛光子 三國連太郎
☆☆☆★★★
大富豪・犬神佐兵衛が死に、その莫大な遺産の相続をめぐって一族の間で猟奇的な連続殺人事件が勃発する。名探偵・金田一耕助の推理やいかに?
第1作目のこの作品が、作品自体の持つインパクトや、設定の持つ面白さという点で、やはり一番良かったです。尚、この作品は角川映画第1作目でもあります。やっぱり、スケキヨさんの存在が大きいし、菊人形にかざられた人間の首のシーンも印象的。昨年公開のリメーク作品もがぜん見たくなりました。DVD発売は7月の様です。
悪魔の手毬唄 (1977年)
岸恵子 若山富三郎 仁科明子 北公次 草笛光子 中村伸郎
☆☆☆★★
日本独自のおどろおどろしい風土をもつ鬼首村で起きるなぞの連続殺人事件。過去の忌まわしい出来事が引き起こす惨殺事件は、土地に伝わる手毬唄になぞらえられていた。
朴訥とした若山富三郎演じる刑事の存在感が良かった。市川監督ならではの、映像美も注目だが、今回は4人の人形が手毬唄を歌いながら毬をつくシーンが幻想的で美しい。
「獄門島」 (1977年)
司葉子 大原麗子 東野英治郎 内藤武敏 佐分利信 太地喜和子 ピーター
☆☆☆★★
瀬戸内海に浮かぶ獄門島で起こる連続殺人事件に挑む名探偵・金田一耕助。頭の弱い3人の姉妹が、寺の屏風に書かれた俳句になぞらえ、次々と猟奇的に殺されていく。
大好きな佐分利信が出ているので、楽しみにしていましたが、それよりも、太地喜和子の演技が凄かった。彼女に囲われているピーターの不気味な存在感も良い。
「女王蜂」 (1978年)
中井貴恵 高峰三枝子 岸恵子 司葉子 仲代達矢 萩尾みどり 沖雅也 伴淳三郎
☆☆☆★★
伊豆天城の月琴の里にある大道寺家の美しい娘・智子の求婚者が次々と惨殺された奇妙な事件の謎に挑戦する金田一耕助。
求婚してくる男を死に至らしめてしまうところから、女王蜂と呼ばれる若い娘の役が、中井貴恵
なのは、ちょっとたよりない感じがした・・。楽しみにしていた、仲代達矢の演技は流石でした。「暗い海が見える・・。」とつぶやく時の表情とか、ちょっとたまんない感じ。
「病院坂の首縊りの家」 (1979年)
佐久間良子 桜田淳子 あおい輝彦 萩尾みどり 草刈正雄 小沢栄太郎 ピーター
☆☆☆★★
このシリーズの最終作。「病院坂の首縊りの家」と呼ばれる古い館に、人間の生首が風鈴のように吊るされるという猟奇事件がぼっ発し、やがてそこから次々と惨劇が繰り広げられていく。
金田一がアメリカへ渡るために、パスポートの写真を撮りに行った写真館で、その事件は起きた。この作品は、このシリーズ中でもあまり評判が良くない様なんですが、私は実は「犬神」の次に気に入っています。事件そのものが大した事ないのが不人気の理由の様ですが、佐久間良子の演技の素晴らしさや、ラストの哀しさなんかが私はとても好き。それに桜田淳子が良い!しね。途中、進駐軍のキャンプで歌う"It's Only A Paper Moon"も上手かった!びっくり。
金田一シリーズは、舞台は終戦間もなくの昭和20年代。戦前から亡霊の様に残っている、土着の因習や風習のおどろおどろしさ、家や血というものへの執着、そういったものまで丸ごと飲み込んでしまった戦争の大きな傷跡と言ったものが、織り交ぜられた稀有な作品だな・・とあらためて感心しました。
このシリーズにはないけど、私は「八墓村」が大好き。「悪霊島」や「悪魔が来たりて笛を吹く」等、あらためて再見したいな〜って思わせてくれた、楽しい五日間でした。

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