白蛇教異端審問
☆☆☆★★★
桐野夏生 著 文春文庫 ISBN 978-4-16-760211-6
¥476(本体)
著者初のエッセー集が文庫化!それほどのページ数ではないのですが、桐野夏生の関するあれこれがギッシリつまった中味の濃い本です。
直木賞受賞後の多忙な日々を綴った日記や書評、映画評、いわれなき中傷に対して真摯に真っ向から反論する表題作となった長編エッセイに加え五篇のショートストーリーも収録。解説・東野圭吾。(裏表紙解説より)
白蛇教とは、小説を信じ、拝み、畏怖する小説教の事。桐野夏生が教祖。キリスト教の「アーメン」にあたる祈りの言葉は「ニョロ」(笑)
自作品に対する誹謗・中傷、または攻撃的な文章に対して、言葉を武器として戦うのが、作家として真摯な態度であると信じ、彼女は正面から反論をしていく。「例え凡打になるのがわかっていても、バッターボックスに立たなければならない。言葉というボールを投げられたからには、言葉というバットで打ち返す。それが言葉を信じる作家のとるべき態度だ。」と彼女は後書きでも述べている。実に、実にカッコ良く、女性なら誰でも憧れてしまいそうだ。
直木賞受賞前後の日記には、作家として、そして家庭人としてがんばる彼女の姿が,浮かび上がる。もの凄く忙しいが、夫と娘のために夕食の支度をする。娘がコンタクトをなくしたと言えば、一緒に買いに行く・・といった日常に、ファンの読者としては感動すら覚える。こんな日常から、あれだけの創造力が生まれている事に。
私が今回最も感銘を受けたのは、読書評のページ。ここで紹介されている作品は全て読みたくなった。一部タイトルだけ紹介すると、ローレンス・ブロック「死者との誓い」P・ハイスミスの諸作品、フラナリー・オコナーの作品、ル・カレの「われらのゲーム」アン・タイラーの「ここがホームシック・レストラン」そして、何度も言及される林芙美子の作品。ああ、本当に時間がたりません。(汗)
そして嬉しい事に、オマケっぽくショート・ショート作品が幾つか収録されています。2ページ程度の超短編。しかし、ほんの瞬間の出来事や心の動き一つの描写で、ミステリーが描けるのだという事に驚かされます。
とにかく幕の内弁当の様に、1冊でたくさんの彼女が楽しめる本でした。大満足。
おまけ
東京は今日も雪!私は前回に続きまたまたお休みでした。ラッキ〜。(笑)

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