Iris
2001年/アメリカ-イギリス
(監)リチャード・エアー (演)ジュディ・デンチ ジム・ブロードベント ケイト・ウィンスレット ヒュー・ボネヴィル
☆☆☆★★★
英国を代表する女流作家・アイリス・マードック。
彼女は晩年アルツハイマーに冒され言葉と記憶を失っていく。
原作は夫である文芸評論家のジョン・ベイリー。
1950年代、一目でアイリスに恋をしたジョンは、恋愛経験豊富な彼女に翻弄されながらも2人の愛を育んでいく。50年後、アイリスはアルツハイマーに冒されるが、ジョンはアイリスの臨終のその時までかたときもそばを離れる事はなかった。
介護生活にあたる現在のシーンと、若き二人の物語とが、織り交ぜられながらストーリーは進みます。奥手で、ハンサムでもなく、吃音気味のジョンを、数ある恋人の中から夫と選ぶアイリス。良き伴侶を得る事がどれほど幸運な事なのかという事がしみじみとわかります。
私自身同居していた祖母を痴呆のはじまりから、臨終の時まで介護を続けていた経験もあり、とても身につまされるシーンが多かったです。
信じたくないという恐怖の気持ち、正気に戻ってくれというむなしい願い、家の中はムチャクチャになり、やがて全てに慣れきり受け入れていくまでの過程。
若く美しく才気溢れるアイリスのシーンと対比すると、運命の残酷さを感じてしまう。
でも「ドライビング・ミス・デイジー」の時にも同じ様に感じたのですが、人生は辛くはかないからこそ価値がある・・と私自身はしみじみ思うのです。
実物のアイリス・マードック。
初期症状に苦しみながら書き上げた最後の作品「ジャクソンのジレンマ」
印刷が出来上がった時には完全に認知症が進んでいた・・。
調べてビックリしたのですが、アイリスの和訳本はほとんどが絶版状態。
この最後の作品だけが入手可能なので、今度読んでみようかと思ってます。
しかし、ひどいな・・・、日本の出版状況は。
尚、夫のジョン・ベイリーの原作は「作家が過去を失うとき―アイリスとの別れ〈1〉」「愛がためされるとき―アイリスとの別れ〈2〉」(朝日新聞社刊)ですが、こちらも現在入手不可・・・。まったく、くだらない本だけは湯水の様に出版するくせに・・ってグチっても使用が
ないですね。

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