1966年/日本 (監)田中徳三
(演)市川雷蔵 八千草薫 藤村志保 内藤武敏 藤岡琢也
☆☆☆★★★
1925年製作、名作と名高い阪東妻三郎の「雄呂血」のリメーク版。それほど期待してはいなかったのですが、私は雷蔵様の映画は全て見る事にしているので、いそいそと鑑賞。武士道を貫こうとした一人の侍が、次々と裏切りに会い、二つの藩から追われる身となってしまう。結婚の約束をしていた良家の娘は、彼の行方を追ううちに、女郎宿に売られてしまう。女郎となった許婚と再会した彼には、百人を越える追手が迫っていた。そして、ラスト延々と続く殺陣シーンは、見事の一語でした!10分以上続く、一人対百人以上との、立ち回りは全く息もつかせぬ迫力。ラストカットは、一人で全員を倒した彼と、かけよった許婚とが互いを見つめるシーンで完。
最近の日本映画は癒しの時代に入っているので、こういう乾いたショットがラストになる事はまずない。期待を上回る作品で、大いに感激してしまった次第です。
主演の市川雷蔵は、1931年生まれ。歌舞伎役者の家に養子として入り、8代目市川雷蔵を襲名。その後1954年、22歳で大映から映画デビュー。一躍大映の看板スターとなり、1969年、38歳の若さで肝臓ガンのため死去。たかだか15年の映画俳優人生で、158本の作品を残している。私は今のところ51本見ましたが、まだまだ見れる作品があるのかと思うと本当に幸せです。
とにかく、ちょっと只事ではない市川雷蔵の魅力を、ご紹介させていただきたいと思います。
彼の作品は大半が時代劇で、はっきり言ってくだらない作品も結構多い。それでも彼自身の魅力で、何とか映画を持たせてしまうのは、これこそスターと言うものでしょう。

「大菩薩峠」の机龍之介。虚無主義を徹底的に貫いた作品で、後半盲目となってしまった後の美しさは、以降のどんな美形時代劇俳優も足元にも及ばない程です。左は中村玉緒ね。

少ないながらも現代劇もある。そんな中でも最大のヒットシリーズ。「陸軍中野学校」戦時中の日本軍のスパイを描いた作品で、面白いですよ!
大映の美形のトップスターであった雷蔵が、周囲の猛反対を押し切って出演した三島由紀夫の「金閣寺」の映画化作品「炎上」。丸刈りで吃音(どもり)の、犯人の役を見事に演じきっています。この他にも、幾つか文芸作品に出ていて、恐らく彼はこういうのを演じたいんだろうな〜
っていうのがひしひしと感じられます。長生きしていたら、どんなに味わいのある役者になっただろう・・といつも思うのです。
そして最大のヒットシリーズ 「眠狂四郎」
全12作。見ていただけると納得できると思うのですが、雷蔵様意外にこの役を演じる事はムリなのです。田村正和じゃダメなんです。
ここで番宣。4月16日(月)〜4月19日(木)、夜9時から、4夜連続で「眠狂四郎」シリーズがNHK・BSで放映されます。是非、皆様こぞってご覧下さいませ。
と、まあ、語り尽くせぬ雷蔵様の魅力なのですが、又の機会にしつこく特集させていただこうと思っております。唯一のリアルタイム現代劇シリーズ「ある殺し屋」とか、明るい股旅物なんかもあるんですよ〜。
市川雷蔵ファンサイト 朗雷会 ホームページ
http://www.raizo.jp/

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