「The Manzai」、「俺たちひょうきん族」「笑ってる場合ですよ」と、続いた漫才ブームを私もかなり楽しんだ世代なのですが、ツービート、ビートたけしはそれほど好きではなかった。その後続くたけしの番組も「風雲たけし城」以外はそれほど見てなかったし、今もあまり見ていない。映画も「その男凶暴につき」と「Takeshi’s」しか見ていない。
今まで一度も彼のファンだった事はないにも関わらず、私は彼のエッセイ本だけはほとんど読んでいるのです。自分でも何故なんだろうと思う位、新しい本が出ると買ってしまうのです。一言で言うと読んでて心地良いんですよね。
今回、彼の自叙伝3冊が、文庫で同時発売になり、またもや速攻買いしてしまいました。
「余生」 ISBN: 978-4-7973-4729-6
「孤独」 ISBN: 978-4-7973-4730-2
「時効」 ISBN: 978-4-7973-4731-9
北野武著 ソフトバンク文庫 各¥700 (本体価格)
平均して ☆☆☆★
「余生」は2001年初出。死、愛、笑い等、内面に関わる内容のエッセイ。解説は「TVタックル」でともに司会を務める阿川佐和子。
「孤独」は2002年初出。家族、酒、暴力、野球等、自身のアイデンテティに関わる内容のエッセイ、解説は「血と骨」で彼を監督した崔洋一。
「時効」は2003年初出。金、車、アメリカ、老い等、かなりランダムな感じで、最近の心境を語った内容。解説は爆笑問題の太田光。
今まで、かなりのエッセイを読んでいるので、どれも以前聞いた様な内容だったのは残念でしたが、それでもあっという間に読破。
感性は私とは90%近く異なるし、生き方に共鳴もしていない。しかし、なぜこれほどまでに惹き込まれるのだろう?
私には、たけしの他に、出れば必ず買ってしまう人が他にもいる。(小説を除く)まずは、カント研究の先生の中島義道。この人の本は、数だけで言えば私の読んだ本の作者ベスト1。「死ぬのが怖い!この人生になんの意味があるのか!」っていつも苦しんでる先生なのだが、私にとっては彼の叫びは大いなる癒しとなっている。後は、報道カメラマンの宮嶋茂樹。不肖宮嶋です。男尊女卑の文章の溢れる中、私は何度も爆笑してしまう。「キャリアがない女は、とっとと結婚して子供を産め!一億総玉砕や!」だって・・。(笑)もう、本当に大好き!(笑)
たけしのエッセイと彼等の著作に通じる共通点を、私なりに考えてみると、この世界を正しく見つめている事、虚飾に逃げていない事、弱い自分を「人間のクズ」だと言い切れる勇気、どこまでも理不尽なこの世界への悪態が、清廉である事だと思う。
そしていくばくかのナルシシズム、きつい事を発言するわりに情にあついところ。私の様な、右に習え、事なかれ主義のごくごく平均的な日本人からすると、側にいたら迷惑なタイプ。そんな彼等の言葉が、私の大きな癒しになっているのは、皮肉な話ではあると思う。

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