2011/1/31  21:53

新素材「ゴビ石」(仮名)  篆刻

http://www.cnbalinshi.com/default.asp
↑内モンゴル、艺美巴林石雕艺有限责任公司のサイトです。ご覧下さい。

萌古石と命名いたしました。

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↑の写真は昨年10月末に取材した、中国、内蒙古自治区は巴林右旗にある艺美巴林石雕艺有限责任公司の工場敷地内に瓦礫のように転がっていた、モンゴル国内から輸入されている石材です。
取材当時はまだこのモンゴル産の石のサンプルが無く持ち帰ることが出来ませんでしたが、年明け早々に現地工場の李成国社長からサンプルが送られて来ました。
小さなサンプル印材では石材自体の均一性や歩止まりなど分からないので出来るだけ大型材のサンプルをお願いしていたところ、海岳石、巴林石、蒙古石の三種類をそれぞれ3.5cm、4.5cm、6.0cm角と大型の物を送ってくださいました。


↓の写真がそれ。大きさは6p立方。左から蒙古石、巴林石、海岳石です。
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これら全てに試刀し、また懇意にしていただいている篆刻家諸氏にも試刀して頂いた結果、三種のうち「蒙古石」はかなり使えそうだという結論に達しました。

↓蒙古石拡大図
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硬すぎず、柔らかすぎず、刀意も冴え、凍石系ではありませんが半透明に近く、磨くとピカピカに輝きます。全体的に滑らかで均質。

何よりの長所は、刀が進まない金属質あるいはガラス質の砂釘が殆ど見当たらないことと、刻している途中に岩脈に沿って割れてしまうような「ひび」が極めて少ないことです。

最近の廉価な青田(青白章)石や寿山石は砂釘が多く、印刀を傷めてしまうような粗悪品も少なくありませんが、この蒙古石はその点では非常に優れた良材と言えます。

あえてウィークポイント挙げるならば、巴林石ほどはありませんが、わりに粘り気があり、大型印材に鈍刀で刻す場合、運刀の勢いをやや制限されます。

また、鉱脈が開鑿されてからまだ日が浅く、三年程前からようやく中国国内にも出回りだしたようで、まだ美材を求めることが出来ないようです。要するに実用的ではありますが鑑賞的な付加価値がつく要素が少ないということです。

さてでは試しに希夷斎が、この石を実際に切り出して磨き、どの程度実用に堪えるのか、朱、白それぞれ印を刻してみました。

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3.5cmを1/4にしましたので、6分角。微妙な硬度のムラは自然物ですから無いとは言えませんが、少なくとも運刀に影響は皆無。磨けば表面は滑らかでとても綺麗に輝きます。

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印文は「南戈壁石」。李社長に詳しい産地を尋ねたところ、モンゴル国の南ゴビ県産だということ。「戈壁」は中国語でゴビ沙漠のゴビ。

入刀の感想は、青田石よりもほんの少し硬度が低く、巴林石よりも硬く密度が高い。エッジのキレも青田石の良材に殆ど遜色がありません。何より直裁法が正確に反映され、精緻な印を彫るのにはむしろ青田石よりも向いているように感じます。↓その印影
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↓次は朱文です。
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印文は「額爾烏拉」。額爾はモンゴル遊牧民の家の「ゲル」で、烏拉はモンゴル語でウラン即ち山を表します。「ゲル山」なのか「ゲルのような形をした山」なのか定かでありませんが、とにかく「額爾烏拉」で産出されるのだそうです。
↓その印影
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細朱文の比較的精緻な物を刻してみましたが、運刀も大変心地よく全く難がありません。

青田石の良材には、篆刻家諸氏の多くが、その非常に心地よい刻味を贔屓にしておられることとは思いますが、今まで数万顆の石に刀を入れてきた私自身も、御多聞に漏れず青田石をことのほか愛用してきました。

がしかし、最近の青田の粗悪化の傾向を非常に危惧しているのもまた事実です。
そういった意味でもこの蒙古石は青田石の刻味に非常に近く、次世代の新素材として充分に対応できる品質ではないかと思います。

また、青田石は強く煽って、刀を突き入れれば、大きな破片として捌れ飛び、時として望まない欠損を招いたり、逆にそういった「捌れ」を作品傾向として意識することもありますが、この蒙古石は強く刀を突き立て煽ると、粉状になって飛び散るので、展覧会形式の大印材にて激しく捌った作品傾向には向かないかもしれません。

しかし上のような精緻な表現には、運刀の微妙な動きが明瞭に反映されますので、篆刻家諸氏の報酬印や実用印にはもってこいの素材だと思われます。また篆刻ビギナーにも硬度、粘り等、非常にバランスの取れた良材ではないかと考えます。
最後に側落も刻してみます。
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巴林石特有の崩れるような感じも無く、やはり青田石良材に迫る表現が可能でした。

さて、後は価格の問題です。
20余年、篆刻で生活をしてきた私にとって、印材の品質が落ち、価格が上昇するということは死活問題でしたが、実際に最も廉価で刻味の良かった青田石が、年々質が落ち、また価格も上昇している昨今の状況を非常に危惧していました。この20余年の間に巴林石は品薄で高騰し、変わりに伽藍石、嶺南凍、綺林石、臨江石、ウィグル石など新素材も出てきましたが価格の割には、臨江石以外どれも使い物にならず憂慮しておりました。

何とか新素材が出て来ないかと、思っていたところ、学生時代の友人社長が内蒙古での工業事業展開の他に、印材輸入も手がけてみたいとの話しから、巴林右旗行きの話しに発展した訳です。

先ずは私自身が欲しいと思う素材であることが先決であり、さまざまな精査の結果、この蒙古石ならば大方の篆刻家諸氏にも安心して使ってもらえるのではないか。
価格も実際にの李成国社長に友人の会社を通して問い合わせてみたところ、青田石よりは若干高く、巴林石よりは廉価と言うことが分かりました。
今後友人の会社を通して契約交渉をしてもらうつもりですが、なるべく多くの方に使ってもらえる価格設定に出きればと思っています。

蒙古石ではちょっとネーミングが悪いとのご指摘もありましたので、ゴビ砂漠で取れるがゆえ、「戈壁石」あるいは「ゴビ石」と命名しようかと思っています。
とにもかくにもこのゴビ石が輸入できれば日本初であることは間違いなさそうですw

交渉が成立し次第、またこのブログでご紹介するとともに、当面は希夷斎ホームページにて、購入窓口も開設しようと思っています。
ただ、相手は中国ですので、どーなるかは分かりません。
ご興味のおありの方も、気長にお待ち下されば幸いですm(_ _)m
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