シタデルカラーを始めとして、最近話題の水性アクリル塗料塗料。
興味はあるけど、よくわからないひと向けにその特徴について「基本のき」だけ説明します。
○シタデルカラーとその親戚
この種類の塗料にはシタデルカラーを始めとしていくつかの種類(ブランド)がある。
現在日本で手に入るのは、その入手の容易さの順に
「シタデルカラー」
「ファレホカラー」
「アーミーペインター」
「コートデアームズ」
の4種類。
ほかにもいろんなメーカーがあるけれども、クレオス社、タミヤ社製の「水性アクリル塗料」はまったく別種の塗料なのでここにはリストしていない。後述するが、混色もできない。
○その特徴
)高い隠蔽力
国産の多くの模型用塗料より隠蔽力が高いのが特徴。
)無臭・無害
基本的に無臭で、無害がうたわれている。
)速乾性・色数の多さ
その乾燥速度はびっくりするほど速く、あまりのんびりしていると、塗っている筆の中で塗料が乾き出すほど。頻繁な筆の洗浄を心がけたい。
その速乾性故か、同系の色でも多数の種類が用意されている。グレーひとつとっても混色せずにきれいなグラデーションを塗ることが可能。
また肌色のバリエーションも多い。
)水で薄められる・乾くと耐水性
基本的に水で薄められ、乾くと完全な耐水性になる。
原則としては水以外の溶剤、洗浄剤は必要ない。
(慣れてきて、特殊な効果が欲しくなってきたときには、それ用の選択肢もある)
)相互に混色可能
この系統の塗料は特殊な一部を除いて、すべて相互に混色可能。
各ブランドをちゃんぽんで使っているユーザも少なくない。
※ただし同じ水性アクリル塗料をうたっていても、クレオス社、タミヤ社製のものはまったく別系統の塗料なので、混色できない。混ぜるな危険。
)筆塗りに適している
Mr.カラー、タミヤエナメル、ファレホカラーと渡り歩いた筆者の感想を言えば、もっとも筆塗りに適しているのがこの系統の塗料。
雑誌記事やネットではじめて使う人の驚きの声があがっているのは、別にヤラセでもなんでもない。
さらに日々、特化した機能の塗料が追加されているので、筆者が手をつけた10年前よりもさらにこの系統の塗料は、
手軽にいい結果を出せる塗料に進化している。
○塗料の種類
シタデルカラー系の水性アクリル塗料は、どのブランドもだいたい次のような種類が用意されている。
)通常色
用意された色の多数がこれ。
高い隠蔽力と伸びの良さ、速乾性を誇るが、なかでも隠蔽力の高さを強化した種類もある。
シタデル:レイヤー、ベース(高隠蔽色)
ファレホ:(基本色)、エクストラオペイクカラー(高隠蔽色)
──など。
)半透明色
下に塗装した色が透ける、インク状の塗料。洗うように塗って、凹部に溜まった塗料によってモールドの陰影を強調したり、全体をその色合いに染めたりする効果がある。
シタデル:シェイド(陰影)、グレイズ(染め)
ファレホ:シェイド(陰影)、インク(染め、つやあり)
──など。
)特殊色
ドライブラシ専用に粉っぽいペースト状になったもの、乾くとざらついたテクスチャになるもの、蛍光色など、各ブランドで様々な種類がある。
)スプレーサーフェサー、サーフェサー
塗装前の下地を作る塗料。
これで下地を作っておけば、水分を弾く素材でも自由に塗装ができる。昔は白、黒、のみだったが、現在は多数の色から選べる。
シタデル、アーミーペインターでは缶スプレーが、ファレホではボトル入り(筆塗り用?)が出ている。
ユーザの大多数はスプレー式を常用しているが、筆者はこれも筆塗り。
○塗装方法の基本
塗装手順の基本は次の通り。とにかく最初にサーフェサーは必須。
0)用意するもの
塗料。筆。パレット。筆洗。筆を拭くティッシュや布。手元が暗くならない作業環境。
1)下地塗装
サーフェサーで下地塗装。
これをやっておけば、プラスチック、金属、レジン、どんな素材でも水性塗料で着彩することができるようになる。
塗りたいミニチュアの大きな面積を占める色のサーフェサーで下地を塗っておけば、基本色塗装の一部を端折れるし、塗膜が厚ぼったくならずに済む。
(とはいえ、高い隠蔽力のおかげで、黒ベースからでも黄色や白の完成品をきれいに塗り上げることはできる)
2)基本色
通常色でミニチュアのそれぞれの部分に基本の色を塗る。
肌、服、鎧、武器、あれやこれや……。
流派によって4までの手順を部分ごとにやってしまうこともあれば、ミニチュア全体をいち段階ずつ塗り終えてから次の手順にすすむ場合もある。
(この「基本の色」が、完成品の色合いより暗いものにするのか、明るいもので塗るのかは流派によるので、ここでは単に「基本の色」)
3)陰影をつける
シェイドなどの半透明色を塗ることで、モールドの陰影を強調する。
凹部だけに流し込むように塗ったり、全体を洗うように塗ったり、やり方は流派による。
(洗うように塗った場合は、全体がその色に染まるが、それで基本色ではドギツすぎた階調を落ち着かせたり、統一感を生み出したりする効果も期待できる)
4)明部を塗る
一段明るい色で明部を塗る。
出っ張っているところ、光が当たっているところなどに、明るい色を細い筆で描くように塗っていく。
あるいはドライブラシで、凸部にだけ色が乗るように塗っていく。
──基本の塗装はこれで完成。
テクニックのたぐいは無数にあるけれど、それは次の段階。
まずははじめての塗装体験を楽しんで!
○筆塗りで気をつけること
)濃度に気をつけて
これに限らず、塗料は濃すぎても薄すぎても塗りづらい。
パレットの上に塗料を適量出し、水で適切な濃度に薄めてから塗っていく。
また濃度調整するのに塗料を混ぜた筆は、根本まで塗料に浸かった状態になったりするが、これも塗りづらいので、実際に塗るときの筆はいったん洗って、あらためて塗料を筆先3〜4分の1くらい含んでいる状態にして塗ると塗りやすい。
)とにかくよく乾く
速乾性は素早い作業の味方でもあるが、気を抜いていると塗っている筆の中で塗料が乾いてしまうことも。
頻繁に筆洗いするのをおすすめする。
)金属色は別の水で
最近はあまり言われなくなっているようだが、金属色は、色を再現するため、金属の微細な粒子が混ぜられている。これがほかの色に混ざると、通常の色がラメ色になってしまうことがあるので、できたら希釈・筆洗い用の水は分けた方がいい。
(とはいえ、最近ではやってるひとあまり見ないので、現在の塗料では不要なのかもしれない……筆者はもう10年以上も金属色を使っていないので、あくまで過去の知識からの注意点)
追記:
塗った塗料が乾くのと同じ理由で、未使用の塗料であってもいずれは乾いて使えなくなる。
お店で買った塗料も、手に取るまでに長い時間が経過していて、もう乾いてしまったりすることもある。
とはいえ、買う前に確かめるのが難しい場合も多い。
なので、
買ってきた塗料はまず中身を確かめること。
さらにレシートのたぐいはその確認が終わるまではとっておくこと。でないと返品交換ができないこともある。

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