青井汎(あおい・ひろし)『宮崎アニメの暗号』(新潮新書)を読んだ。出版された当時は、タイトルを見て、もっともらしく適当なことを書いているのではないかと怪しんだのだが、ユリイカで青井氏の評論を読んで「あ、ちゃんとした人だ」と思ったので買ってきた。
わたしは宮崎映画ではナウシカとラピュタ、カリ城と魔女宅が好き。テレビシリーズではコナンが大好き。その理由も自分ではもっともらしく整理して文章に表してきたのだが、この本を読んでかなり反省した。わたしはエンターテインメントとして優れているかどうかの面でしか、宮崎作品を評価してこなかった。
あまたあるプロのライターさんの宮崎作品解説は単なる「深読み」ではなかったのだと。こじつけじゃないかと感じる評論・解説もあるのだが、『宮崎アニメの暗号』で行われていた論理の展開は納得できた。
この本は、「もののけ姫」比重が高い。興行的には成功したものの、「宮崎アニメのなかで一番好きな作品」という声はあまり聞かないもののけ姫だが、わたしも映画館まで足を運んだ割りに、あまり評価してこなかった。フルアニメーションが苦手という個人的な理由だけでなく、室町時代の日本が舞台ならなぜ女人禁制であるはずのタタラ場に女がいるのか、とか、映画を観ただけでは分からない様々な「ひっかかり」が、「考証の手抜き」と見えたのだ。
しかし、今は猛省している。あれは「室町時代の日本」ではなかったのだ。世界設定は五行思想をベースに、複数の神話を重ねてなされていたのだ、と解すると納得ができた。
「近代以前」の世界を描こうとした作品のすべてが、現代の考え方(西洋の近代科学に基づく考え方)で理解できる、と考えていたという自分の驕りを恥じている。

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