エリック・ガルシア『鉤爪の収穫』(酒井昭伸訳、ヴィレッジブックス)を読んだ。絶滅したと思われていた恐竜だが、実は16種が生き延びており、かなりの数がラテックスでできた人間の扮装を被って人間社会の中で暮らしている、という世界が舞台の私立探偵小説第3弾だ。昨年秋には翻訳が出る予定だったはずなのに、実際の発行は2005年8月20日。待ったよ。
ブームが過ぎて図書館でうらぶれている本ばかりを読んでいるわたしが、出るのを待ちかねるというのは、なかなか珍しい現象だと思う。それだけ、楽しみにしているのだ。
全作通じてなかなかオーソドックスなハードボイルド小説だし、前2作は主人公たちが恐竜であるということが重要な伏線になっていてSF心をくすぐられた。
『鉤爪の収穫』は、1作目から10ヵ月後が描かれている。ルビオはハーブ中毒から更生中(恐竜は人間とは代謝が異なるのでハーブで酔っ払う、という設定)。今回は否応なくマフィアの抗争に巻き込まれる。親友との再会、そして、かつて心から愛し結婚を考えた女性との再会。
ルビオを送り込んだタラリコ一味はヴェロキラプトルで、対立組織のデューガン一味がハドロサウルス、という種間対立は、人間の人種対立への揶揄だろう。
人の皮を着た恐竜、という一見突拍子もない(下手すると馬鹿馬鹿しい)設定なのに引き込まれるのは物語のつくりが基本に則っており、心理描写も巧みだからだと思う。
あー他にも用事がたんまりあるのに読んじゃったよ〜。どうすんの〜。

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