![松川事件 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51eUUP9W4VL._SL160_.jpg)
「松川事件」 山本薩夫監督,小沢弘治,高松政雄,寺島幹夫出演(日本,1961)。映画。
逮捕された全員が無罪となった冤罪事件である松川事件を描いた映画。福島県で鉄道脱線事故が起きる。警察は,労働組合による事件との見込みで捜査・逮捕を行う。全員無罪の判決が下される前に作成された,162分!の長尺映画。
三鷹事件,松川事件,下山事件とセットで名前を知っていても,舞台が福島だっていうのはなかなか頭に残りませんでしたが,映像で見ると,舞台が福島だっていうのが鮮烈に伝わってきます。
やはり福島弁はインパクトがありますね。
映画は法廷シーンがほとんどを占めます。法廷シーンもありのままといった感じで表現しており,専門用語が飛び交います。また,労働運動が華やかな時代でもありましたので法廷の雰囲気も寛大というか,被告人たちもアジテーションのようによくしゃべります。
訴訟制度は,証拠に基づいて認定していく訳なので,結局裁判官が有罪の心証を得られるのかどうかになる訳ですが,特に刑事事件においては,裁かれる被告人自身が事実を知っているので,単なる立証ゲームのように捉えるのは正しくありません。
そういう意味で,松川事件の叫びというのは大きいと思いますね。地裁,高裁で有罪判決が続き,たまたま検察側が隠していた諏訪メモが出てきたから最高裁でひっくり返った。こう見てくると,恐ろしいと言わざるを得ないですね。
特に,この手の事件は,裁判所としても騙されまいという視点で検討を開始し,推定無罪の原則が後ろに追いやられがちなので危険が伴います。こういう映画を見ると,取り調べ過程の全面可視化は,不可欠だろうと思いますし,全面可視化に対する弊害論はあっさり吹き飛んでしまう気がします。
高裁の裁判官が判決言渡しに関わる問答において,にやついたことを追及されるシーンがありますが,頭がいいとか,法律論に詳しいとかいう以前に,やはり裁判官の職責というものについて,こういう映画を見て心しておくことが不可欠なんだろうと思います。
迫力の法廷シーンは必見です。

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