昨日は,表現の自由との関係でこの問題を少し述べたけれど,ちょっと補足というか補論。
まず,デンマーク紙の報道とその後の転載とで判断基準は変わるだろうか。デンマーク紙の報道に対する抗議についての報道という形で,問題の風刺漫画を転載したのは,フランス,ドイツ,ノルウェー,スペインなどの各紙だそうだ。
これに対し,イギリスでは転載をしないこととし,アメリカ国務省は,漫画が侮辱的だとの声明を発表している。
期せずして,イラク戦争推進コンビが抑制的な対応をしたと言えますが,これはイラクの統治戦略に関与しているという国益との関係を考慮して,慎重な対応をしたものと見ることができるでしょう。
アメリカもイギリスも,国益のためにメディアも協力するという挙国一致体制が出来上がったという批判も可能ですが,他国が招いた暴動を見て敢えてこの問題を取り上げて,大変な事態を招く必要もないだろうという判断でしょうね。
転載するかどうかは,これまたメディアの判断な訳で,基本的には自由といえるでしょう。ただし,転載するメディアも必要性が高い場合を除き当初掲載した新聞と同様の社会的な責任を問われることになるでしょう。
今回の事態をみると,表現の自由を認めるという考え方は価値観の相対性を前提にしているということがよく分かります。宗教の場合には,基本的に絶対的な存在を前提にしていますから,マホメットを絵に描いてはならないということになる訳です。
以前にアフガニスタンのことを書いた時にも少し触れたと思いますが,この問題は社会の中の,世俗的な権力・権威と宗教的な権力・権威の力関係が大きく影響している気がします。
宗教的な権威が強いイスラム社会の一定の人たちは,絶対的な価値を前提とするが故に,今回の問題を見過ごせないと感じるのでしょう。
と,検索していたら,
小林恭子の英国メディア・ウオッチというページで,英国での状況に絡めて詳しく触れられていた。ネット社会って,ほんとに便利だ。

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