「アメリカ帝国の悲劇」 チャルマーズ・ジョンソン著(村上和久訳,文芸春秋,2004.9)。
まずは,こちらを仕上げなくては。ということで,第5章。何気ない事実の裏を知っておくことが必要。
日米の合同訓練も珍しいことではなくなり,2006年1月には陸上自衛隊員がサンディエゴで対テロ訓練を受けたという話もあります。
同盟国だし,我が国の自衛隊は経験に乏しいからね,と納得してしまいがちですが,これはアメリカの世界戦略の一環でもあります。
国際軍事教育訓練計画(IMET)の名で,1976年から始められたこのプログラムによって,2002年度では世界の133か国がアメリカ軍との間の軍事演習や軍事交流を行っているそうです。
「アメリカ軍の教官と外国軍将兵とのこうした親密な接触は,国防総省から直接管理される一種の貿易である武器取引で,アメリカに有利な地位をもたらしている」(173頁) なるほどね,確かに。実演販売みたいなもんですね。
これに加えて,民間軍事会社が訓練を請け負う場合もあります。まさに軍需産業の本質が出ていますよね。戦争能力を養っちゃう訳です。
で,この軍事訓練戦略が内政干渉に使われる場合もあった訳です。つまり,傭兵のように養成して送り込む訳です。ビン・ラディンなんかもこの流れなので複雑な気分ですよね。
アメリカの会社ダインコープ社がイラク戦争後,イラクが新しい警察や司法部門,刑務所組織を作り上げるのを援助するために何千という顧問を供給する大口の契約を獲得した(184頁)なんていうのを読むと,イラク戦争自体がスクラップ&ビルド方式の出来レースだということが分かっちゃいますよね。
イラク戦争をやることによって,アメリカの力を見せつけ,武器を売り,各国で「アメリカ式の訓練」を施し,壊したところは「アメリカ」が復興する。ビジネスの論理が透けて見えます。
軍需産業が力を得たことによって,本土アメリカも変質が進みます。1990年代から国防総省は各種の付随業務を外注してしまう訳です。軍事の上での規制緩和と民間会社の参入ですね。
基地の運営,管理まで任せる訳ですが,当然市場競争なんて,あってないようなものなので,ビッグビジネス到来という訳です。
こうして国の体力ってなくなっていくんだろうなーというのが実感できます。
(つづく)

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