「インカの反乱」 ティトゥ・クシ・ユパンギ述,染田秀藤訳(岩波文庫)。
「ドイツの悲劇」の方も書きたいけれど,まずは今日読み終わったこっちから。インカ帝国の王,マンゴ・インガの息子が,1570年にスペイン国王に提出した文書で,父マンゴ・インガの反乱について伝えた小冊子。
インカ帝国といえば,今のペルーですね。メキシコのアステカ文明と共に,スペインの侵略を受けました。
マンゴ・インガは,人が良すぎ。スペイン人たちに何度も金銀を奪われます。なんか読んでいると,闇金の取り立てみたいですね。仏の顔も三度までとばかりについには抵抗を始めるのですが,「君たちは世界中の人びとの友情よりも少量の銀の方を大切だと考えているらしい。」(85頁)との言葉が胸に響きます。
こんな連中がやってくるなんてことは,想像の範疇を超えますね。安全保障の側面からも深読みしてみましたが,やはりこういう事態を想定して準備するなんて無理ですね。宇宙人の侵略と同レベル,まあインディペンデンス・デイあたりの雰囲気でしょうか。
この事態をスペイン側から見ると,一種の軍部の暴走に近いものがありますね。当時のスペインの国制では海外の部隊のコントロールという点ではどのような配慮をしていたのでしょうね。ちょっと興味が湧きました。
あとは,キリスト教。布教名目とセットで侵略をする訳です。この植民地主義との関係も興味のあるところです。
現地では,金銀発見で,露骨に利益を上げようとしたんでしょうね。現地の人たちに対する差別感情もあったので貿易という形にはならなかったのでしょうね。そういえば,本書の終わりの方に委任状も訳されているんだけれど,ティトゥ・クシが書かされた委任状は,ほとんど白紙委任状で財産の管理処分権を受任者に大幅に移譲しています。なんかこれを見ると,彼らから金銀を取るばかりか,これを契機にスペイン国王からも金を引き出して自分のものにしようという意図が透けて見えます。
本を読むと例の如く,関連本が読みたい衝動に駆られます(岩波で刊行中のインカ皇統記も注目)。南米の文化はエキゾチックで,失われた文明の歴史を紐解きたいですよね。そういえば,子どものころに,
「太陽の子エステバン」なんちゅうアニメがあったなー。今から考えると,かなり画期的なアニメですよね。
本書以外にも,聞いたこともある人もいると思うけれど,インカ帝国の最後の抵抗拠点ビルカバンバとか,ヒップホップで有名な2pacが名乗っている,インカ帝国最後の皇帝,トゥパク・アマルとか,インカ帝国はその茂みに分け入ると血を沸きたたせる豊富な水脈が眠っています。

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