「ベルリン,僕らの革命」(原題:Die Fetten Jahre Sind vorbei) ハンス・ワインガルトナー監督,ダニエル・ブリュール,ジュリア・ジェンチ出演(2004年,ドイツ,オーストリア)。
こちらも録画していたもの。何というかあまりピンと来ないタイトルで期待しないで見たのですが,傑作映画でした。
映画は,この現代に革命を夢見て,エデュケーターと名乗り,金持ちの家に侵入しては家具や電化製品を動かしてメッセージを残していく若者(ヤンとピーター)を描く。ここに自動車事故によって多大な損害賠償債務を負担しウェイトレスとして働きながら,反グローバリゼーションの運動をする女性(ピーターの彼女,ユール)が絡む。
まあ,この設定にアレルギーを覚える人にとっては,あまり感動はないかもしれません。
映画は,エデュケーターとして侵入した先で,家主に顔を見られたことから急展開します。しかも,家主とユールが面識があるため,絶体絶命。とりあえず誘拐したものの・・・
こういう場面,もう殺すしかないという心理に追いこまれそうになりますが,映画は残酷路線には走りませんので安心して見ることができます。でも,こういう設定だと映画を見る我々としては,いろいろと現実の事件を考えてしまう訳です。
この視聴者の想像を誘う部分が,映画では非常にうまい具合にさばかれていきます。そして,この想像が我々にいろいろな可能性を考えさせてくれるのです。
ヤンが夜の町を見ながら,この町で革命のことを考えている人間がどのくらいいるだろうか,と嘆息するシーンがありますが,革命運動の火種もすっかり消えかけている現代という時代の文脈で,我々若者はどこに希望を見出せばいいのかという問いかけは鋭く迫ります。しかも,それは革命運動を唱道する一昔前のアジテーションとは全然違う響きを持っています。
誘拐された富豪が自分の過去を振り返って,なぜ自分がこうなったかを語る場面は,30代以上でなければ,その含蓄は分からないでしょう。
つまり,そういうことなのです。革命を想う気持ちにせよ,理想を追い求める気持ちにせよ,純真な心にせよ,時間というものは我々の意思を超えて大きな影響を与えるのです。知らず知らずのうちに,保守党に投票している自分がいる。これがなかなか政治の変革が困難な理由でもあります。
青春映画でもあり,革命を想った時代の,最良のクリーム部分だけを斬新に切り取った映画でもあり,時の流れというものを見事に描き出した映画でもあります。
PS. 映画の最後の壁に貼られたメッセージ。「お前たちはきっと一生変わらない」は誤訳で,正しくは「決して変わらない人間もいる」だ,というOttoさんのアマゾンでのコメントを読みました。なるほど,そっちの方がすっきりと意味が通りますね。

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