
「リヴァイアサン 第4巻」 ホッブズ著,水田洋訳(岩波文庫)。
4巻も基本的に3巻と同じく,キリスト教についての話が続きます。肉体と魂の関係についての考え方は,たとえばギリシャのプラトンなんかの考えとキリスト教の考え方は異なります。魂は永遠である,不滅であるとはやっぱり考えないんですね,キリスト教は。まあ,確かに終末思想とかの意味がなくなりますからね。
神の王国の生活を見ると,あんまり魅力を感じないですね。飲食なし,生殖なし。つまり欲望はなくなるんでしょうが,うーん,そんな感じに神の国の理想を描くというので多くの人を惹きつけることができるんでしょうかね。
哲学についてのホッブズの定義を見て,ふと再確認しましたが,もともと哲学は,自然科学一般を取り扱っていたんですよね。で,その中から諸科学が独立していった。今の哲学は,いわばその残りものです。このあたりは,誤解しないでおきたいですね。
余暇至上主義の自分としては,
「余暇は哲学の母であり,コモン−ウェルスは,平和と余暇の母である。」(107頁)という言葉をメモしておきましょう。騒乱が続く時代には,学問の発展はありません。
ホッブズは,聖職者に結婚を禁じる習慣を批判します。そして,その最終的な狙いは,王が祭司を兼ねることができないようにするためだとまで言います。
つまり,王は,自分の権力を承継させるための跡取りの確保が重要ですから,独身でいるという訳にはいきません。この点から,祭司の結婚が禁じられれば,王が祭司を兼ねるという事態が生じることはないことになります。ホッブズは,このほかにも宗教における暗黒の創造として,いくつかの指摘をしています。これらの批判はストレートに当時の教会のあり方を批判する内容になっています。
ということで,何とかリヴァイアサンも終わり。ホッブズの表現自体も,相手を批判する割には実は多義的で,国家主権のあり方を論じたという点では評価できるのですが,それ以外の部分は,一方の極に振れたという感じがしない部分がないではないです(例えば,法の支配を認めない点など)。そういう限界を理解した上であれば,参考になる部分もあるのではないでしょうか。
(終わり)

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