「民数記」 旧約聖書を頭から読んでいくと,4番目に位置します。冒頭人口調査から話が始まるので,この名前が付いているようです。本書では,シナイ山からカナンの地へのイスラエル民族の移動を描きます。
人口調査は,一定の目的のもとに行われますが,民数記の場合は兵士になりうる者を登録しています(20歳以上,男子)。
姦淫(まあ,浮気ですね)の疑惑を持たれた妻の判決法として,苦い水の呪いという方法が取られています。それを飲んで腹が膨れるかどうかというものですが,端的に言って妊娠するかどうか,ということですかね?
ナジル人の誓願というのも不思議。ナジル人というのは,人種のことではなく,神との関係で,一定の約束(守り事)に従って生活することを言うようです。
具体的には,ぶどう系は禁食(当然ワインもだめ),髪は切ってはいけない,死体に近づかないといった決まりを守るということのようです。
レビ人は,儀式専門ですが,定年があります。50歳に達すると臨在の幕屋に入って努めにつくことは原則としてできなくなります。引退年齢としては意外に早いですね。
この幕屋ですが,上を雲が覆っています。この雲が,さあ移動だぞとメッセージをくれる訳です。
ところで,イスラエルの民は放浪の期間中,またもや不平を言い始めます(この民のヘコミ具合が何ともいいですよね。)。「肉食いてーなー,エジプトでは魚食い放題だったのになー,あーエジプトは良かったよ」ってな感じですね。
例のごとくに神は激怒して,食わせたるわい,とうずらの大群を落とします。食いきれないなーと喜んでいたのですが,疫病を流行らして貪欲を懲らしめます。神様って,ちょっと意地悪ですね,相変わらず。
カナンへの偵察隊を送り,カナンを占領すべきかどうかを検討しますが,意見は分かれます。神が付いているのだから戦うべきだという主戦論を唱えますが,民の多くは反抗します。これも例の如く神の逆鱗に触れます。これ以外にも様々に神に対し不平が出るのですが,こういうところを見ると民衆は信仰が厚い一枚岩だったのではないということがよく分かります。
基本的に民数記で出てくるイスラエルの民は好戦的です。というか,神に命じられて攻めるというか,民族の存亡をかけた戦いが広範に繰り広げられていたのでしょうね。
ミディアン人に対する侵略や掠奪,虐殺なんかは,我々がイメージする神のイメージとはかなり姿が違います。掠奪した土地や奴隷を分配するあたりは,時代を感じますね。
さて,イスラエルの人々の国には,「逃れの町」という過失で殺人を犯した人たちが逃れ生活できる場所がありました。復讐から逃れるための町であって,場合によっては町から離れることが許されないという監獄的色彩もあったのでしょうね。
という訳で,民数記はこれ以外にも儀式の説明があったりと,どちらかというと雑然とした印象を残すものでした。

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