「妖怪ハンター 地の巻」 諸星大二郎著(集英社文庫)。漫画。
諸星ワールドにどんどんはまっています。妖怪ハンターシリーズは,考古学者の稗田礼二郎を主人公とする怪異民俗学ものとでも名付けるべきか。
妖怪ハンターという名前自体は著者が望んだものではなく,別に稗田が妖怪を退治する技を知っている訳でもない。したがって,ハンティングはしない。
本書は,「地の巻」と名付けた第一集。
「黒い探究者」は,装飾古墳をめぐる話。「赤い唇」は,大人しくて目立たない娘が突然豹変する学園物。「生命の木」は,隠れキリシタンを巡る壮大な話。
「奇談」
というタイトルで最近映画化もされているようです。
「海竜祭の夜」。島に伝わる平家伝説と海辺の祭りについて,祭りの当日に事件が起きます。
「ヒトニグサ」は,人にそっくりな植物の話。「闇の客人」は,過疎地の町興しとしてリゾート開発した町に,昔行われていた祭りを復活させようとして巻き起こる騒動を描きます。個人的には本書で一番好きです。確かに,昨今の祭りブームなんか見るとこういう形で人寄せのように使おうという考えも出て来かねないですよね(実際にも新しく作られた祭りは多い)。
そんな時に,祭りって,そんなものかよ!という諸星的異議申し立てってな感じで,パワーがありました。
「蟻地獄」も印象的な話です。一か八かのばくち。巨大な賭場という感じの「蟻地獄」はすごいですね。チャレンジャー来たれ!っていってもなー。
「死人帰り」は,諸星版ゾンビっていう感じですね。
他に「闇の中の仮面の顔」を収録しています。いずれの話もなかなかのストーリーテラーぶりを発揮します。単なるオカルト物にしないところが彼の手腕でしょう。
短編なので,落ち着いて読めます。
今日は,海竜祭の夜に出てきた,あんとく様でお別れ。

ナイス・スマイル

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